「生活が不安だから」「子供のため」「夫婦別姓のため」…離婚後も同居を選ぶ夫婦たち 気をつけたい法的ルール【弁護士が解説】

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離婚後も同居する際の注意点

離婚後も同居する際、気を付けなくてはならない点がいくつかあります。もし、知らずにいると、大きなトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。離婚後も同居することのデメリットも知ったうえで、一緒に住むかどうかを考える必要があります。

▽偽装離婚を疑われる恐れがある

離婚した後も同居を続けた場合、周囲や自治体、税務署などから「偽装離婚」ではないかと疑われる恐れがあります。偽装離婚とは、何らかのメリットを得るために、戸籍上、離婚したことにしておき、今まで通りの夫婦生活を送ることです。たとえば、財産を隠したり、税金を逃れたりするために、離婚して財産分与したことにするケースがあります。

また、生活保護やひとり親家庭に支給される児童扶養手当(母子手当・父子手当)を支給するために、偽装離婚するケースは少なくありません。保育所などの待機児童の多い自治体では、保育所に入所しやすくするために、偽装離婚するケースもあります。偽装離婚がバレると公正証書原本不実記載の罪に問われる恐れがあります。

▽相手にいつ同居を解消されるかわからない

離婚後も一定期間同居をすることで夫婦が同意しても、独身の男女が同居生活を送るのは不自然です。どちらかが「どこかおかしい」と感じ始め、同居の解消を切り出すかもしれません。夫婦であれば、互いに協力し合う義務があるので、相手を一方的に追い出したり、出て行ったりすることはできませんが、同居人同士であれば止めることは難しいでしょう。

相手から「好きな人ができたので、同居を解消する」と突然言われることも、当然覚悟しておく必要があります。

▽社会保険料の負担が増える可能性がある

実質上の婚姻関係がある内縁関係、事実婚のカップルの場合、一般的な夫婦と同じように相手の被扶養者になることができます。これは、いったん離婚していても変わりませんが、事実婚であることを証明する必要はあります。

一方、夫婦関係のない単なる同居人の場合は、被扶養者になれないので、自分で健康保険に加入し、保険料を支払う必要があります。国民年金の保険料も基本的に支払わなければなりません。また、事実婚かどうかにかかわらず、離婚すると税制上の配偶者控除が受けられず、納税額が増えることもあります。

離婚後も同居を続けるメリット

離婚後も同居を続けた場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。考えられるメリットについて解説します。

▽子供への影響を抑えられる可能性がある

子供がいる場合、離婚による子供の影響を心配する人も多いでしょう。配偶者や家族が子供に危害を加えかねない場合は、離婚してでも引き離す必要がありますが、子供が両親に懐いている場合は、離婚によってショックを受ける恐れがあります。子供が転校を強いられ仲の良い友達と離れ離れになってしまうケースも考えられます。

しかし、離婚しても同居を続けていれば、子供は両親と離れずに済み、引っ越しも必要ありません。離婚したという事実も、子供が大きくなるまで隠しておけるかもしれません。夫婦としては関係修復は困難でも、子供の親としてなら協力できるというのであれば、同居を続けるのも一つの選択でしょう。

▽生活費や育児の負担を軽減できる

一人暮らしよりも、だれかと同居生活したほうが、住居費や水道光熱費などを低く抑えられるものです。新しく同居者を探すのなら、当面の間、元配偶者と同居してもいいだろうという考え方もできるでしょう。引っ越しの費用を用意せずに済むのも、大きな金銭的なメリットです。

また、子供がいる場合は育児で協力することもできます。親権を手放したほうは「親権がないのに子育てをしなければならないなんて」と思うかもしれませんが、子育ては親の義務です。同居期間中は、子育てに協力する代わりに養育費を減額するなどの取り決めも、互いに納得すれば可能です。

▽離婚したことを周囲に知られずに済む

最近は離婚する夫婦も珍しくありませんが、離婚するとなんだか近所や親類の目が気になり、引け目を感じるものです。しかし、離婚後も同居を続けていれば、周囲に離婚したことは気づかれません。

ただ、離婚して名字を変えると、名字から離婚したことがわかってしまうかもしれません。それも、別に気にする必要はないのですが、気になる人は「夫婦別姓になるために、離婚という形をとった」と説明しておけば、最近は納得してもらえることも多いでしょう。

▽夫婦別姓にできる

実際に、自分の名字を旧姓に戻したいという理由で離婚し、その後は事実婚の夫婦として同居生活を送る人もいます。最近は働く女性も増え、結婚した後も旧姓で仕事を続けるというケースは珍しくありません。会社で活躍するほど、旧姓と結婚後の本名の使い分けが面倒になり、旧姓に戻したいという人も多いようです。

▽復縁できる可能性がある

相手から離婚を要求され、やむなく応じたものの、せめて同居だけはさせてほしいという人もいるでしょう。引っ越し先が見つからない、自立して生活する自信がないなどと訴えれば、しばらくの間、同居させてもらえるかもしれません。そうすれば、毎日顔を合わせるうちに、相手も気持ちが変わり、復縁できるかもしれません。

「離婚したい」という思いで頭が一杯になると、イライラして余裕がなくなるものです。しかし、取り敢えず離婚するという目的を達成すれば、相手も冷静になってくれるかもしれません。人は毎日顔を合わせていれば、情が湧いてくるものです。夫婦として一緒に暮らしていた期間があれば、なおさらでしょう。ダメ元で同居を願い出るのも一つの手でしょう。

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