妻の不妊を理由に離婚を決断する前に
妻が不妊だとわかり、離婚を考える夫もいるようですが、子どもを産み育てることだけが、夫婦の幸せだとは限りません。妻と離婚したものの、妻との生活が忘れられず後悔する人もいます。離婚することが本当に正しい選択なのか、離婚を決断する前に、考えておきたいポイントを紹介します。
▽養子縁組を検討する
自分と血がつながった子どもが生まれなくても、養子を受け入れて子どもを育てる方法があります。養親と養子の間に法律上の親子関係を作る制度を養子縁組といいます。養子縁組には、生みの親との親子関係を終了させない普通養子縁組と、生みの親との親子関係を終了させ、戸籍上も実子記載される特別養子縁組があります。
普通養子縁組の場合は、戸籍に「養子(養女)」と記載され、実の親の名前も記載されます。養親と養子の合意があれば、実の親との復縁も可能です。特別養子縁組は、事情があって親が育てられない子どもを引き取る制度で、実の親子として扱われます。このように血のつながりにこだわらなければ、養子縁組で子どもを育てることができます。
▽里親制度を検討する
子どもを育てるのであれば、里親制度を利用するのも一つの方法です。里親とは、親の元で生活できない子どもを一時的に預かって育てる制度で、事情や目的によっていくつか種類が分かれています。一般的に里親と言った場合、「養育里親」を指しますが、里親の期間が長くなると養子縁組をするケースもあります。養子縁組を前提とした「養子縁組里親」もあります。
里親になると、里親手当や養育費などが自治体から支給されます。ただし、だれでも里親になれるわけではありません。児童相談所等で研修を受けたうえで、児童相談所の家庭訪問・調査を受け、里親として登録する必要があります。
▽2人きりの結婚生活を考えてみる
子どもが生まれなくても、幸せに暮らしている夫婦は数多くいます。2人で幸せに暮らす道はないか、一度考えてみましょう。確かに、子どもが生まれたら、にぎやかで楽しい生活が待っているかもしれません。しかし、病気の心配や教育についての悩みもあり、楽しいことばかりとは限りません。子どものために何かを我慢しなければならないこともあるでしょう。
子どものために費やすはずだった時間とお金を、自分たちの幸せに使うという考え方もできます。ほかの子どもたちの幸せのために、何かをしてみてもいいでしょう。養子縁組をしたり、里親になったりするのもその一つです。不妊という2人の問題を、どう解決していくか、離婚以外の選択はないのか、よく話し合ってみましょう。
妻の不妊で離婚を考えたときは、専門家に相談を
自分と血のつながった子どもの誕生を心待ちにしていたのに、妻の不妊がわかりショックを受ける夫もいるでしょう。不妊治療に非協力的な妻に「ひどい裏切りだ」と感じる人もいるかもしれません。しかし、不妊は妻の責任ではありませんし、不妊治療は体への負担も大きく、治療を受けるかどうかは本人の自由です。
子どもが生まれることは、夫婦にとって大きな喜びですが、夫婦の幸せはそれだけではありません。夫婦でこれからの生活や、将来についてよく話し合ってみましょう。もし、落ち着いて話ができないときは、夫婦関係について詳しいカウンセラーに夫婦で相談してみてもいいでしょう。きっと、2人の将来について考えるための良いアドバイスが得られるはずです。
◆稻川 静(いながわ・しずか) 弁護士・法律事務所UNSEEN(第二東京弁護士会所属)/リコ活専門家
「目に見えないものを大切にする」という理念を掲げる法律事務所UNSEENにパートナー弁護士として参画。コーチングスクールCTIでコーチングを学び認定資格CPCCを取得しており、傾聴を大事にし、離婚という場面でクライアントが本当の願いから自分の人生を選択できるよう、弁護士としてだけでなく持てるリソースを全て使って伴走する。女性探偵と男女関係にまつわるコラボセミナーを継続開催中。
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