命の尊厳を掲げる大阪・関西万博 ガザへの攻撃続けるイスラエルが参加へ 問われる日本の姿勢

治安 太郎 治安 太郎

来年の大阪・関西万博にイスラエルが参加する意向を正式に表明したことを受け、自見万博担当大臣は参加するかしないかは各国が独自で決めることであり、イスラエルとロシアを同例に扱うべきではないとの意見を示した。その上で、ウクライナ侵攻を続けるロシアの参加は命の大切さなどをテーマにした今回の万博の趣旨にそぐわず、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの行動はハマスなどによる攻撃を直接のきっかけとするもので、両国を同じように扱うべきではないと主張した。

確かに、ウクライナ戦争はロシアが一方的に軍事侵攻したことがきっかけだが、昨年10月7日のハマスなどによる攻撃がなければ、イスラエルは今回のような行動を取っていなかっただろう。そこを無視して両国を同一視してはならない。

しかし、命の大切さなどをテーマにした大阪・関西万博ならば、もっと考えるべきことがあろう。昨年10月7日以降、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃がエスカレートし、既に犠牲者数は3万人を超えている。この発端を作ったのはハマス側だが、双方の軍事力の差は歴然としており、パレスチナ側にはそもそも勝ち目はない。イスラエルは自衛の権利を主張しているが、これまでの行動は明らかに自衛の権利を逸脱し、自衛権の乱用のなにものでもない。

イスラエルが攻撃を行うガザ地区は、南北50キロ、東西5キロから8キロという狭い領域に200万人ものパレスチナ人が住み、“天井のない牢獄”とも言われる。ハマスを殲滅させるためとはいえ、そこに空爆や地上侵攻すれば罪のない多くのパレスチナ人が犠牲になることなど十分に予想がつく。

イスラエルによる攻撃から間もなく半年だが、イスラエルへの批判はアラブ諸国だけでなく、中国やロシアなど国際社会全体に広がっており、これまでイスラエル支持に撤してきた米国のバイデン政権も苛立ちを募らせており、イスラエルは孤立しているとも言えよう。イスラエル支持に撤することで、今日では米国への不信感も世界で広がっている。

しかし、イスラエルは攻撃を停止しない。4月1日には、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部の建物にイスラエルが発射したミサイルが着弾し、イラン革命防衛隊の司令官や軍事顧問ら13人が死亡した。これまでもイスラエルはシリアにあるイランの関連施設を幾度もミサイルで攻撃しているが、外交施設を狙ったことでイスラエルとイランの緊張悪化は避けられない。

こういった状況で、日本はイスラエルの万博参加を何もなしに受け入れていいものだろうか。命を重視する大阪・関西万博に、パレスチナ人の命を重視しない国家の参加には大きな疑問が残る。攻撃を停止することを条件に参加を認めるなど、日本としてはもっと強い態度でイスラエルに対して臨んでいくべきだろう。 

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