はじめて動物を飼うあなたへ…もっと肩の力を抜いて、向き合って「毎日お互いに楽しく暮らせることが大事」

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

私が以前に勤務していたペットショップ併設の動物病院には、「はじめて犬猫を飼う人」たちも多く来院されていました。お隣のペットショップで犬猫を購入すると、一緒に「犬(猫)の飼い方」という分厚いバインダーをプレゼントされましたが、これがクセモノでした。

ある日、「相談」ということで来られた犬の新米飼い主さん、そのバインダーを持ち、思い悩むような顔をして診察室に入って来られました。そして開口一番、「こんなにいろいろしなきゃいけないのですか?私には無理です…」と。少し涙ぐんでいるようでした。そのバインダーを見せていただくと、中はしっかり読み込まれていて、大切と思われたところには蛍光ペンでラインがひかれていました。目のお手入れ、耳のお手入れ、爪切りの仕方、歯みがきは1日1回、肛門腺絞りは月に1回、シャンプーは月に1~2回程度、ブラッシングは…などなどたくさんのやらなきゃいけないこと(!?)が書いてありました。

これでは私も無理です。こんなの覚えられないし、こんなに毎日いろいろしなくちゃいけないのであれば、家族の癒しのために飼ったペットなのにペットのことで24時間振り回されてしまいますね…マニュアル本としては質問があれば答えなきゃということでいろいろ書いてありますが、それをすべてきっちりする必要はありません。

一番大切なのは、毎日お互いに楽しく暮らすこと

一番大切なことは、毎日お互いに楽しく暮らせていますか?ということではないでしょうか?そして、毎日その子の全体の印象(=健康状態)を観察していれば、その子と目をみてお話しをしていれば、だんだん毛艶が悪くなってきなとか、最近イライラしているなとか、わかるようになります。そうすれば、病院へ連れて行くタイミングもわかるようになるでしょう。

食事は1日何回にするべきか?もネットの情報を「みる」のではなく、その子を「みる」ようにしてはいかがでしょうか?それから、ペットたちもある程度は飼い主さんの生活スタイルに少し合わせてもらわなくてはなりません。飼い主さんとその子とで相談して1日に1~3回に分けてあげてください(犬の場合)。決まりはないです。人間でも、1日1回のヒトもいればオヤツを含めると10回以上の方もおられますよね。そして、その決めた食事回数は時間とともに変化する…例えば夏の暑い日だったら昼間は食欲が無くなるので冬は2回だったのを1回にするでも問題ないです。ただ、急に2回を1回にするのではなく、例えば朝の1回の食事量をだんだん減らしていって最後は無しにするといった具合です。猫の場合は、ドライフードであれば1日置きっぱなしが推奨されています。

ペットは大切な家族の一員…なのですが、大切にしなきゃ、でも言葉が通じないからわからない!とネットやハウツー本を検索して、そのご自身がご覧になった情報に振り回されている方が少なくないことを危惧しています。

特にネットでは、無意識に自分にとって都合のいい情報ばかり集めてしまい、反証する情報が見えにくくなる「確証バイアス」があるといわれています。たとえば、猫チャンが派手に嘔吐をした場合。人間でも食べたものがなんだか合わなかったらしくて吐いてしまい、でもその後は胃がスッキリ…というご経験がありませんか?猫ちゃんも1〜2回吐いて、スッキリすることはあります。しかしその時どうしたらいい?と咄嗟にネットで検索してみると、「早めにかかりつけの動物病院で診てもらいましょう」「胃がんかも知れません」などの文章を見つけて、その文章の前にある「1日に数回吐いて食欲もないようであれば」とか「数週間吐くのが続き、体重が減少しているようであれば」などの文章は頭からすっ飛んでしまって、あわてて動物病院に診察に来られる方もおられます。ですが、1回吐いただけで元気も食欲もあり下痢もしていない場合は、お薬などは使わずに身体を冷やさないようにして安静にし、しばらく様子をみていただきたいと思います。先ほど述べたように、1回吐いてスッキリ中かもしれないからです。

このように、ネットの情報は検索していくうちにバイアスがかかり、話があらぬ方向に向かっていくことも少なくありません。ネットで調べものをするときは基礎知識をもったうえで(この場合、嘔吐は胃の中に何も入れないでくれ!のサインなので、なぜ吐いたのか?その後どうなるのか?は現時点ではわからないということです)。確かな情報が掲載されているサイトをみることが、迷宮に入らないコツです。あとは、あくまでもその子をよく見て、その子に訊いて、ご自身で最終的な判断をされることです。

はじめて動物を飼う方は、いろいろどうしたら?と悩むと思いますが、もっと肩の力を抜いて、その子と向き合っていただきたいなと思っています。飼い主さんが少々のことは気にせず何より楽しく飼っていると、飼っている子も健康で楽しく毎日を過ごせるようになります。

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