「この甲斐犬くんは…香川県の飼い主様が逝去されレスキュー依頼となりました。
山梨県の甲斐犬仲間が挙手下さいました。
ところが、預かりボランティアの方が『情がうつったから…手放せない』との事となりました。里親様は空輸が可哀想だから香川県までお迎えに行って下さるとの事でしたが。
まだ狂犬病予防接種もワクチンも打ちに獣医師に診てもらった事がなく、唸る武闘派が素人さんの手に追えるのか。
大怪我負う前に手放した方が私は良いと思うのです。
でも私たちは犬が欲しい訳ではない。
助けてあげたいだけだから。
『最悪無理な時にまたご連絡下さい』とお伝えしました。
犬の福祉を最優先します。成犬の甲斐犬を迎える事の難しさをご存知ない方々には…でも深追いはしません。」
甲斐犬「日本犬の中でも一番賢い子が多い、人の心を読む」
飼い主さんが亡くなり、1匹の甲斐犬を引き取ったと、福島県いわき市内で主に甲斐犬のレスキューやしつけなどに取り組む保護団体「いわき甲斐楽園」の代表Shimoyamaさん(@shigetoshimoyama)がInstagramで報告。甲斐犬は、4歳の男の子とのこと。山梨県の甲斐犬を飼っている知人が里親になると申し出てくれたものの、預かりボランティアが「情がうつったから…手放せない」と、最終的にボランティアがおうちにお迎えすることになったとか。
とはいえ、「かみ付きなど問題行動が起きて、私どもで(ボランティアから)しつけ依頼を受けた場合は対処するつもり」とし、成犬の甲斐犬を飼うことの難しさを、Shimoyamaさんはこう訴えます。
「預かりボランティア様が飼い主となりましたが、犬のお世話に慣れているという方でも成犬となると飼うのが難しい犬種でもあります。というのも、日本犬の中でも一番賢い個体が多いのが甲斐犬。人の心を読みます。なので、人間力が弱い飼い主の場合、しつけはできません。かみ付き犬の甲斐犬は訓練士やトレーナーでも引き受けないことが多々あり、机上の空論では太刀打ちできないんです。警察犬の訓練士の場合、首吊りなど体罰を与え自分が犬より強いと教える方法を取ったり、またトレーナーはおやつありきのしつけが基本。そもそも体罰に関しては容認しがたく甲斐犬には逆効果であったり…いずれのやり方も甲斐犬には通用しないと思っています」
「甲斐犬たちは怖くない」かみ付き犬に体罰を与えることなく、しつける方法は
8年間にわたり甲斐犬レスキューを通して、野犬も含め80匹を保護してきたというShimoyamaさん。しつけの方法は、各々の犬によってそれぞれ方法は違うといいます。
「これまで、多くのかみ付き犬を引き受けましたが全員違う方法で改善しました。私は体罰を与えることは一切しません。例えば、20人近くの人にかみ付き保健所のお迎え寸前にレスキューした甲斐犬。ドッグランでフリーにして、私は背中を見せて椅子に腰掛けました。彼は私の様子を少し遠くから監視。『私は君を怖くない』と彼に言い聞かせて、じっと待ったんです。すると徐々に近寄ってきました。でも私はすぐには触れません。数日後にすり寄って来たら、ゆっくり背中をなでてみたり。ここまで約1週間ほどかかりましたが、かみ付かれることは全くなく触れ合えるようになりました。
このほか3年前には長崎の70頭多頭飼育崩壊現場から甲斐犬3匹を迎えて。当時別室で気持ちを安定させた後、先住犬をその部屋に連れて行き私に甘える姿を何度も見せることで、私たち人間との信頼関係を理解させることができました」
また、もともと狩猟犬として飼われていた甲斐犬。特に雄は飼い主以外には懐かない傾向が強いとされていますが、家庭犬として飼われることも増えてきて、Shimoyamaさんは甲斐犬の繁殖家に対して“お願い”があるとか。
「フレンドリーな甲斐犬になるようにお迎えくださる方に『飼い方』をお伝えください。一代一主なところが甲斐犬の魅力でもありますが、幼少期に多くの老若男女問わず触れていただく、同時に大中小の犬と触れ合うことで必ずフレンドリーな甲斐犬となります。こうした幼少期からいろいろな方々、犬たちと触れ合うことの大切さを知ってもらいたい。そして、うなるならそれは必ず叱ることです。飼い主にうなるのは、かむぞの予告。子犬の時は甘がみでも成犬になれば手に負えない甲斐犬となってしまいます。散歩も十分に、また室内飼いにするなどたっぷり愛情を注いであげることも重要です」
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「いわき甲斐楽園」は、寄付集めに依存しない保護犬活動に取り組んでいるとのこと。このためドッグランや個室ペットホテル、老犬ホームを運営し、愛犬家たちの利用を通じて支援を受けているそう。甲斐犬レスキューがメインの活動で、このほかかみ付き飼育放棄の犬も引き受けているといいます。