風呂は週2、3回で入浴支援が頼み 避難所は閉鎖、地域もバラバラに 能登半島地震3カ月、被災地の今

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 4月1日で能登半島地震から3カ月を迎える。被災地は今どうなっているのか。1月にも取材した石川県七尾市の寺の住職に再び話しを聞いた。

 七尾市中島町の安泉寺住職の國分大慶さん(60)。安泉寺は真宗大谷派(本山・東本願寺、京都市下京区)の寺院で、能登半島がくびれた部分の山間部にあり、七尾市中心部から直線距離でも約20キロ離れた位置に所在する。

 1月1日の地震で七尾市内は震度6強や6弱を観測した。安泉寺でも客殿と呼ばれる建物が倒壊したほか、2007年の地震でも損傷し修復を終えたばかりの山門が大きく損傷するなど大きな被害が出た。

 -最近、余震はどうですか?

 國分大慶さん 余震はときどき起きています。そのたびごとに土壁がバラバラと崩れます。朝掃除したはずのところに、いろんなもの落ちていることがあります。

 ■避難所は2月25日で閉鎖

 -1月の取材時には水が止まったままでした。

 國分さん 水は2月に再び出るようになりました。当初は「飲めない」と言われていましたが、今はもう直接飲んでも問題ないようです。ですが一応、沸かして湯冷ましにして飲んでいます。

 -道路はどうですか?

 國分さん 8割か9割ほどは復旧して車で走れるようになりました。ですが、まだ段差や隆起したところが残っている場所もあり、調子に乗って走っていると痛い目にあいます。一方で前はくぼみがなかったのに、くぼみが激しい場所も見かけます。

 -以前はご家族が避難所におられましたが、今はどうされていますか?

 國分さん 2月25日で地元の避難所は閉鎖されました。家に戻るか、戻れない人はより遠くの地域の避難所に移るという選択になりました。妻と息子は避難所から寺に戻ってきました。高齢の母は富山県高岡市の妹家族のもとで暮らしています。

 ■Suicaで入浴

 -風呂はどうなんでしょうか。

 國分さん 湯沸かし器が壊れたままです。陸上自衛隊の入浴支援がありますが、10キロ以上先です。石川県と七尾市から、避難所にいる人やお風呂に入れない人にJR東日本のICカード「Suica」が配られました。サウナがあるような七尾市内の入浴施設で「ピッ」とすると無料で入れます。

 -10キロ以上先だと、なかなか大変ですね。入浴はどれくらいの頻度ですか?

 國分さん 週に2、3回です。いろんな用事があって、なかなか行きたいときにいけないです。

 ■集落の人はバラバラに

 -湯沸かし器の修理の見通しは立っているのでしょうか?

 國分さん (寺のある地域の北に位置する)河内地区の門徒さんが「もう、うちに戻れないからお寺で使えるなら」と(ヒートポンプ給湯器の)「エコキュート」を譲ってくださることになりました。いつになるかわかりませんが、そのエコキュートが取り付けられると、家で入浴できそうです。

 -河内地区は孤立集落になったと聞きます。

 國分さん 河内地区の幼なじみの家は土砂崩れの危険があるので、もう住めないと言われたそうです。地区の人はほとんどが移ってしまいました。アパートに移った人、仮設住宅の入居に当たった人もいます。

  -コミュニティーがバラバラになっているということですか? 地域の行事なども継承困難ですよね。今はお寺の行事はどうされていますか?

 國分さん (宗祖・親鸞の月命日である)毎月28日にお講があり、地震の前は4、5人から10人程度の方が集まっていました。1月以降、私一人で(法要を)勤めています。

 ■ニュースも少なく

 -震災から3カ月、能登半島地震の報道が少なくなっているように感じますか?

 國分さん 私はラジオをよく聞くのですが、能登半島地震のニュースはトップにやらなくなってきたし、地震関連のニュースが減ってきているように思います。地元紙の支援情報も少なくなってきました。

 -能登半島地震を経験して、あらためて全国の人に訴えたいことはありますか。

 國分さん 地震に対する備えをしっかりしているか確認した方がいいと思います。最近、千葉でも地震がありました。この際だから保険内容も地震特約があるのかどうかなど、見直しておいた方がいいのではないでしょうか。

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