12人を噛んだ犬の事故でわかった「狂犬病予防接種」の重要性 咬傷事故後に接種する「暴露後ワクチン」とは?

はやかわ かな はやかわ かな

群馬県で小学生を含む12人を噛んだ犬の咬傷事故が大きく報道された。加害犬の犬種に対し、「ペットにするような犬じゃない」といった声も多くあがった。

しかし今回の事故の最大の問題は、犬種ではなく、事故を起こした犬の飼い主が当該犬に、「狂犬病予防法」で定められている年に1度の「狂犬病予防接種」を行なっていなかったことだ。その危険性について、医療系の施設で研究業務に携わる、渡瀬ゆず(@kamo_kamos)さんがX(旧Twitter)に投稿した一連のポストが大きな話題になった。

「12人噛んだ犬、狂犬病予防接種してなかったのか。今の日本で狂犬病である可能性は低いだろうけど、噛まれた本人たちは暴露後接種も視野に入るだろうし大変だろうな。短期間でバンバン注射打たなきゃ行けなくて、専門の病院も少ないから、めちゃくちゃ通院大変なのよ」(渡瀬ゆずさん のXの投稿より)

「狂犬病」に感染した人は発症後、異常行動や痙攣などを経てほぼ100%死に至る。現在も世界で年間59000人が「狂犬病」で死亡(厚生労働省のHPより)しており、獣医師によると、死亡者の大半が「犬」に咬まれて感染していることから、人間への感染率が最も高い「犬」に優先的に予防接種をして蔓延を防いでいるという。

日本は現在、約50年以上「狂犬病」が発生していない数少ない「狂犬病清浄国」のひとつである。だが、狂犬病を予防するワクチン未接種の犬による咬傷事故が起きた場合、厚生労働省が定める通常の「動物由来感染症対策」に加え、被害者は「狂犬病」の発症を防ぐための「暴露後ワクチン」を、最大6回に渡り接種する可能性が生じる。

日本にも「狂犬病」が潜伏する可能性はゼロじゃない

<以下、渡瀬ゆずさんのXの投稿より>

「(狂犬病の)発症と咬みつき事故を分けて考えないと混乱しますが、発症は症状が出ている状態。生還はまず不可能。一方、咬みつき事故にあっても、適切な医療が受けられれば発症を抑えられる可能性が高いです」

「今の日本で狂犬病はいないことになってるけど、それは飼育されてる動物の場合。野生のコウモリなどに潜んでる可能性はゼロではないので、飼い犬の予防接種を行うことはとても大切。飼い犬を守ることにも繋がるはず」

「今回の犬の場合は、まず10日間保健所で(犬を)観察するんでしょう」「同時に噛まれた人に最悪の場合を考えた治療が取られるかと」

被害者12名分の暴露後ワクチン代は108万円

渡瀬さんの一連の投稿に対し、1回約15000円(治療費を含む)と高額な「暴露後ワクチン」×6回分×被害者12人分=「108万円」を算出した投稿も見受けられた。それに対して、仮に被害者に暴露後ワクチンが行われた場合として、加害犬の飼い主に課せられる負担についてもXで言及していた、渡瀬さん。

「飼い犬がヒトを噛んだ場合は原則として保険が使えないんですよ。交通事故と同じ。被害者には健保が7割分を立て替えてくれるけど、加害行為なので健保から飼い主に請求が来る。つまり飼い主は10割負担することになる」

「(動物を飼ってる人は)ペット保険とか、個人賠償責任保険とか、傷害保険でカバーできる場合があります。ペット飼ってる人は万が一の時の保険も考えてみてください。実際には医療費だけでなく、慰謝料もかかります」

(※ただし、海外で野犬などに噛まれて帰国したケースなど、第三者に責任がない場合はワクチンも含めて保険適用で治療が受けられるという)

加害犬の飼い主が支払うべき被害者12人分の医療費や慰謝料と比較して、「飼い犬に毎年打つワクチンは3750円くらい」と、Xで言及していた渡瀬さん。狂犬病の発症を防ぐ「暴露後ワクチン」や、「狂犬病予防接種」の重要性について話を聞いた。

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