「見事な技だと思うのに特に注目されたことはない」
直径わずか15ミリの印影に、歌だけでなく歌人の肖像画まで彫り込まれた「百人一首印鑑」が「X」で注目を集めています。
「ハンコに百人一首を彫るなんて見事な技だと思うのに特に注目されたことはない」という文言と共に画像を投稿したのは「永江印祥堂」(島根県松江市)公式アカウントです。「百人一首印鑑」は、天智天皇、山部赤人、猿丸太夫、小野小町、在原業平朝臣、紫式部の計6種類のバリエーションが揃っており、同社BASEショップにて発売されています。
「特に注目されたことはない」と嘆くものの、上記ポストは5000をこえる「いいね」がつき、20万件以上ものインプレッション数を獲得しました。
「凄っ!」
「これはコンプリートしたくなります、、」
「ほ、欲しい…」
精緻な文字彫りの技術に感嘆の声が届いたほか、
「今年は大河ドラマ効果がありそう」
と源氏物語の作者、紫式部を主人公にした「光る君へ」からの影響を予測する声も届いています。
永江印祥堂の担当者に詳しい話をお聞きしました。
「過去には特に反応が得られませんでしたが…」
――なぜ今、このタイミングでこのハンコを投稿したのですか?
当社の技術力をSNS上でアピールするために、これまで世にないハンコを彫刻し投稿してきました。百人一首のハンコについては社員同士アイデアを出し合って作り上げたものです。しかし、素晴らしい技が使われているにも関わらず、これまで注目されていないのはもったいないと感じ、改めて投稿しました。
過去のタイミングでは特に反応が得られませんでしたが、大河ドラマに関するコメントを通じて気づき、今度こそ注目されるチャンスがあるのではないかと期待しています(笑)。当社のハンコに込められた独自の技術についても、ぜひ皆さんにお伝えできる機会が増えることを願っています。
――「理屈上は機械で何文字でも彫れると言っても、ちゃんとした印影にできるかどうかは職人の腕次第。」と過去のインタビューでおっしゃっていました。このハンコの技術的にこだわった点、特に注目して欲しい点を教えてください。
繊細な文字や絵の細部にまで気を配り、肖像画の顔立ちや着物の模様にまで編集や彫刻・手仕上げをこだわりました。ハンコは、 一般的には個人や会社の象徴としてはもちろんですが、 表現の一環として新たな可能性を秘めています。新たな視点でハンコを捉えて、表現を形にして伝統的なイメージを超えた、ハンコの新しい魅力に注目していただきたいと思います。
「欲しい」という声が届く一方、「使い道がない」という声も
――ポストには「欲しい」という声も届いていました。
この度はたくさんのご注目をいただき、心より嬉しく思っております。しかしながら、「紫式部」のハンコを含む全てのバリエーションにおいてあまりご注文いただいておりません。皆様からの「欲しい」というお声は嬉しい限りですが、同時に「使い道がない」という意見もいただいております。
しかし、これはあくまで捺印用としての伝統的な使い方にとらわれない新しいスタイルでハンコを楽しむことができる可能性が広がっていることをご理解いただきたいです。
「アートの一環としても考えていただけたら」
――どんな用途で使ってほしい、どんな場面で使って楽しんでもらいたいと考えていますか。
ハンコは単なる捺印する道具としてではなく、観賞用やお友達へのプレゼント、記念品としても素敵に活用できます。ハンコを自由な発想で楽しんでいただけるアートの一環としても考えていただけたら幸いです。皆様がお手に取ってくださり、ハンコの新しい使い道を見つけていただけることを心より願っております。
永江印祥堂BASEショップ|http://nagaestamp.base.shop