赤色の橋脚に「塗装材料」など細筆で一文字ずつ丁寧に書かれていく文字。Twitterに投稿されたこの作業動画に「手書きだったのか!!凄い!!」と驚きの声が多数寄せられました。
手書きの方が耐久性がすごい?!
「昨日ガクガク震えて書けなくなったので今日仕上げて来ました。今朝も寒かったのですが、現場の人がバズーカのようなストーブを私めがけて当ててくれました。優しい現場たぜ」と投稿したのは、大阪府南部の泉州地域で看板屋を経営しているサインズシュウ(56)さん(@signsshu)です。
「本当に驚きました。まさか、人の手で書かれているとは想像もしませんでした。感動しました‼️」「初めて知りましたがこれ筆で直接なんですか!しかもあんなに綺麗で……」
「ひたすら尊敬」
「こういう『現代書道』は素晴らしいですね」
「印刷したかのような美しい文字」
文字を見た人から、匠の職人技への称賛が続々と寄せられています。
「手書きが出来る看板屋の最後の世代の職人です」というサインズシュウ(56)さんは、20歳からこの仕事を始め、もうすぐ37年目になるそう。失われつつある日本特有のレタリング技術を発信すべく、毎朝Twitterに文字を書く動画を投稿しています。
――動画の「塗装記録表」とは、どんな目的で書かれるものですか?
橋脚や高架橋などの塗装記録は、次の塗装(30~40年後)の時に、前回の塗装材料はどの様な物であったかを示すためのものです。20年くらい前からカッティングシートの切文字貼りになってしまったのですが、たぶん次まで「もたない」事例が発覚してきたのでしょう。最近は再び「書き指定」が出ているようです。
――なるほど。手書き文字の方がもつのですね!こちらの作業時間は?
初日は「川沿い・鉄冷え・寒波・じっとしてる」という悪条件が重なって身体が冷え切ってしまい、ガタガタ震え出して字を書くのに支障が出たので、途中で帰りました。翌日に再開し、全体で2時間半くらいでしょうか。
――動画ではうっすら枠のようなものだけが見え、下書きなしで書かれていますよね?書き直しもできるのですか?
下書きは横線と文字割りの点々だけです。文字書き用の塗料を使って書きます。もう作っていない塗料ですが、私はまだ持っています。今回のような場合は、下地の塗装が完全に硬化していますので、もし間違えても消す事は可能ですよ。
――現在の看板の多くが切文字ステッカーとの事ですが、手書きならではの最大のメリットとは?
やはり「抜群の耐久性」ですね。シート切文字は10年経過以降著しく劣化し、次の塗り替え時に判読不可能になりますが、手書きの場合は読める程度には残ります。
――改めてすごい技術ですね。これまでどんなものを書いてきたのですか?
地元の商店街のシャッターの文字など、さりげない場所に点在しているだけですので、これと言って代表作の様なものはないです。
――近年は若い世代で昭和レトロなどが流行っていますが、敢えてレトロさを出すなど、ここ最近のお仕事の傾向に変化はありますか?
大阪市の「千鳥温泉」という銭湯の浴場内にある鏡広告を書かせてもらっています。レトロ中のレトロな仕事ですね。
――動画投稿へのコメントなど、うれしかった反響はありますか?
ただただ反応してくれる事がありがたいと感じています。15年程前には世間から完全に忘れられていたどころか、職業としても排除されてしまっていた、いわばロストテクノロジーの一種です。
ひょんな事から始めたSNS投稿に皆さんが反応してくれた事で少しずつ認知されるようになっています。ただ見ておもしろがってくれたり、「まだこんな事やってるんだー」と気軽に楽しんでいただければ、それだけで嬉しく思っています。
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Twitterでは「毎日ここへ書く語句を考えるのにも、なかなか労力が必要なものです。Twitterのトレンドなどには大変お世話になっております」と、時事ネタにちなんだ文字書きを披露しているサインズシュウさん。さらに、YouTube(shu kanba)では「南海電車 運行標識板 再生プロジェクト」や今回の橋脚作業の全行程を編集した動画なども見られ、手書きの魅力を実感できます。
■サインズシュウ(56)さんTwitter https://twitter.com/signsshu
■shu kanba YouTube http://youtube.com/c/shukanba