脱ハンコだと?ええい、これでも食らえ! 直径1.2cmに87文字を刻んだ印鑑会社の技術と矜持

黒川 裕生 黒川 裕生

「すごいの彫れた」とTwitterに驚愕のハンコ写真を投稿したのは、島根県松江市の印鑑会社「永江印祥堂」。1円玉よりも小さい直径1.2cmの印影に、虫眼鏡がないと読めないほどの細かい字がびっしり刻み込まれています。その文字数、なんと87!ばえー!!

米粒写経と見紛うハンコに彫られた全文字は次の通り。

「こんにちは。島根県にある小さなハンコ屋が1.2センチの印鑑の中で限界の文字数に挑戦しています。今回は87文字に挑戦。しっかり読めていますね!これが職人の技術なんです!すごいでしょ。」

「これに社運を賭けています!」とアピールする永江印祥堂の担当者に取材しました。

—どうやって作ったんですか?

「機械です」

—どうして作ったんですか?

「最近は社名の長い会社もありますからね」

—いや、そういうことじゃなくて…。

「真面目な話をすると、理屈上は機械で何文字でも彫れると言っても、ちゃんとした印影にできるかどうかは職人の腕次第。87文字も彫るのは時間も相当かかりますし、肉眼で見るのもスマホで撮るのもギリギリというサイズです」

—「社運を賭けている」というのは。

「規制改革担当大臣だった河野太郎氏がコロナ禍に押し進めた『脱ハンコ』の影響で、私たちのハンコ業界は大変な逆風に見舞われました。ただ、それで全ての印鑑が撤廃されたわけではなく、これからも印章文化は残ります。ハンコの魅力、長年にわたり培われてきた技術の高さをあらためて知っていただければと思い、今回の投稿に至りました」

—反響がすごいですね。

「びっくりです。ちょっとあたふたしています(笑)」

—他にもユニークな取り組みをしていらっしゃるんですね。

「地元島根県産の『神楽ひのき』や鳥取県産の『智頭杉』などの端材、未利用材を圧密加工した『グリーン印鑑』は、昨今のSDGs仕様とも言える製品です。土埋木(どまいぼく)など特別に許可を得た屋久杉を使った製品もあります。1970年の創業以来、最高級の素材、素材に合わせた彫刻方法、唯一無二の文字を追求して参りました。これからも皆さまの人生の大切な場面でお役に立ちたいと考えております」

永江印祥堂:https://www.nagae-hanko.com/

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