【地震被災者が語る】修復したばかりの山門損壊、風呂には1週間以上入れず 被災住職が語る現状

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 元日に最大震度7を観測した能登半島地震から1週間余りが経過した。石川県七尾市で地震に遭い、現在も損傷した寺に暮らし続ける住職の男性に1月9日夜、オンラインで話を聞いた。男性は修復が完了したばかりの山門の損傷や1週間以上風呂に入ることができていない現状を語った。

 七尾市中島町古江の安泉寺住職の國分大慶さん(60)。安泉寺は真宗大谷派(本山・東本願寺、京都市下京区)の寺で約350年の歴史を有するという。

 -お寺のある地域はどんなところでしょうか?地図で見ていると能登半島の中部といえるでしょうか?

 國分大慶さん 寺があるのは、ちょうど能登半島の一番細くくびれたところです。山間部にあり、七尾市街地から約25キロ、志賀原発から約12キロの距離があります。以前は中島町という自治体でしたが、市町村合併で現在は「七尾市中島町」になっています。

 -地震発生時はどのような感じでしたか?

 國分さん 1発目の地震があって揺れは大したことないと思っていましたが、落ち着いていたら2発目の地震がドンと来ました。

 -そのとき、お寺にはどなたがおられましたか?

 國分さん 参拝者の方はいませんでした。帰省していた息子たちを入れて家族計7人がいましたが、けがはありませんでした。

 -本堂など建物に被害は?

 國分さん 本堂は棟が曲がってしまいました。築200年くらいの客殿は倒壊。鐘楼堂は柱が4本とも石からはずれてしまいました。2007年の能登半島地震で損傷し、2023年11月に修復が完了したばかりの山門に大きな被害がありました。山門の下の参道は隆起。参道にあった(「安泉寺」と書かれた)寺標は倒れてしまいました。

 -ご家族がいる庫裏の方は?

 國分さん 庫裏は少し斜めに傾いています。浮いているところもあります。ふすまが動かず、外せない場所があります。

 -たびたび余震が来ていますが、被害は大きくなっていませんか?

 國分さん 最初のころより、傾きが大きくなったり、倒れるものが増えたりしています。一方で「これくらい大丈夫か」と、だんだん地震に慣れっこになってきました。ですが、それはちょっと怖い状態だと思っています。

 -ライフラインはどうですか?

 國分さん 電気・水道が駄目でした。携帯電話は地震発生直後2日ほどは通じていましたが、その後通じなくなりました。

 -現在は復旧しましたか?

 國分さん 電気とケーブルテレビによる通信は1月5日に、携帯電話は最初にauが、9日からNTTドコモが通じるようになりました。

娘のAMラジオで

 -情報は入っていますか?

 國分さん 新聞は「配達が遅れたり、届けられなかったりする」というお断りが書かれていますが、北國新聞も北陸中日新聞も届いています。テレビも映ります。私はラジオをよく聞くので、娘が中学生のときに学校の授業で作ったAMラジオを使って聞いています。

 -当初、避難されたんですね。

 國分さん 最初近くの中島地区コミュニティセンター釶打(なたうち)分館という施設に避難しました。しかし体育館の天井パネルが余震で落下する恐れがあるとして、さらに釶打高齢者センターに再び移動しました。

 -ご家族はどうされていますか?

 國分さん 帰省していた息子たちは自分たちの家に戻ったので現在は家族4人です。80代の母や妻ら家族3人は避難所で暮らしています。避難所にはさらに山深い集落から10人ほどの方が移ってくることになったので1月8日に私は寺に戻りました。

入浴支援は6キロ先

 -水の復旧はまだですか?

 國分さん 息子が七尾市役所に行った際に2リットル入りの水のペットボトルをもらってきてくれましたので飲料水はあります。ですが、生活用水がありません。避難所でも寺でも、雨どいの水をたらいにためて使っています。寺にはくみ取り式のトイレがあるのでそれで用を足しています。

 中島小学校で自衛隊が入浴支援を開始したそうですが、ここから約6キロあります。車がないといけません。私はまだ行けておらず、1週間以上、風呂に入ることができていません。地域のお年寄りも入ることができていない人が多いと思います。

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