「不倫に絡めて人格を否定」「頭が悪い、図々しい」…芸能人への誹謗中傷をしてしまう動機とは?

まいどなニュース情報部 まいどなニュース情報部

インターネット上の誹謗中傷が社会問題となるなか、芸能人や有名人に対する誹謗中傷が問題視されています。弁護士ドットコム株式会社(東京都港区)が実施した「誹謗中傷」に関する実態調査(2023年版)によると、3.5%の人が「芸能人や有名人への誹謗中傷コメントをした経験がある」と回答しました。また、誹謗中傷を投稿した動機については、「正当な批判・論評だと思ったから」が最も多くなったそうです。

調査は、同社が運営する『弁護士ドットコム」の一般会員1355人を対象として、2023年11月~12月の期間にインターネットで実施されました。

調査によると、全体の3.5%が「芸能人や有名人に誹謗中傷をしたことがある」と回答。そこで、「投稿した誹謗中傷の内容」について、4種類に分類し、芸能人や有名人に誹謗中傷をしたことがある48人に複数回答で選んでもらったところ、「容姿や性格、人格に関する悪口」(83.3%)が圧倒的に多くなったほか、「虚偽または真偽不明情報を流す」(12.5%)、「プライバシー情報の暴露」「脅迫」(いずれも10.4%)が続きました。

具体的には、「元アイドルの番組での態度や、顔の変化や体型について」(40代女性)、「女優の不倫に絡めて人格を否定するようなコメント」(30代女性)など、私生活や外見に関することについての回答が寄せられたほか、「YouTuberの生配信にて、『臭い』とコメントしてしまった。視聴者でそういったノリができていたため、しても問題ないと思った」(10代男性)、「アイドル事務所の性加害問題で、事務所擁護をした女性タレントの発言が腹立たしく過去の経歴、素性など書き込んだ」(60代女性)、「女性タレントについて頭が悪い、図々しいと書いた」(50代女性)、「違法薬物を使用して逮捕された女優の悪口」(30代その他)といった内容も見られました。

さらに、「芸能人や有名人に誹謗中傷を投稿した動機」を複数回答で答えてもらったところ、「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」(60.4%)、「その人物が事件、不祥事を起こしたから」(41.7%)などが上位を占め、投稿した当時には正当なものだと認識していた実態が浮き彫りになりました。

なお、「芸能人や有名人の誹謗中傷を投稿したソーシャルメディア」については、ダントツで「X(旧Twitter)」(52.1%)が最多に。以下、「匿名掲示板」(20.8%)、「Instagram」「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」(いずれも12.5%)などが挙げられています。

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一方、「一般人(芸能人や有名人以外)に誹謗中傷したことがある」と答えた人は全体の5.2%で、「芸能人や有名人に誹謗中傷をしたことがある」と答えた人を合算すると、誹謗中傷の経験がある人は7.2%となりました。

一般人への誹謗中傷の経験がある70人に、その内容を4種類から選んでもらったところ、こちらも「容姿や性格、人格に関する悪口」(77.1%)が最多に。ほか、「プライバシー情報の暴露」(17.1%)、「虚偽または真偽不明情報を流す」(11.4%)と続きました。

具体的には、「私も書かれたから同じことをした。書かれた人の気持ちも考えてみたらいいと思ったから」(40代女性)、「お客様の声で、匿名で中傷するようなコメントをした」(30代女性)、「職場の握りつぶされた不祥事を匿名掲示板に投稿した」(50代男性)、「知人女性のダブル不倫相手の会社の口コミにコメントした」(50代男性)、「夫が元勤めていた会社への誹謗中傷。残業代の未払いがあり過ぎて腹が立ったから」(40代女性)といったコメントが寄せられました。

さらに、「一般人への誹謗中傷を投稿した動機」については、「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」(50.0%)や「その人物の間違いを指摘しようとする正義感から」(41.4%)などが上位となり、正義感から意図せず加害者になっている人が多い実態が明らかになりました。

なお、「一般人への誹謗中傷について投稿したソーシャルメディア」については、「X(旧Twitter)」(38.6%)、「匿名掲示板」(37.1%)、「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」(10.0%)などが上位に挙げられています。

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反対に、「これまでに誹謗中傷を受けたことがある」と答えた人は34.7%。そこで、「誹謗中傷の内容」を尋ねたところ、「容姿や性格、人格に関する悪口」(56.6%)、「虚偽または真偽不明情報を流す」(53.2%)、「プライバシー情報の暴露」(35.1%)、「脅迫」(24.0%)などが挙げられたほか、「その他」(11.7%)として、「家庭環境について悪口を書き込まれた」「取引先への一斉告発メール」などが見られました。

なお、「誹謗中傷を受けたソーシャルメディア」については、「匿名掲示板」(35.1%)、「X(旧Twitter)」(32.3%)、「LINE」(15.1%)、「Facebook」(10.2%)などが上位に挙げられたほか、「その他」(28.9%)では「wechat」「teams(チャット)」「ホスラブ」などの回答が寄せられました。

また、「誹謗中傷被害対策としてさらなる厳罰化が必要だと思いますか」という質問には、全体の67.3%が「必要」と回答。一方、「不要」は9.2%、「わからない」は23.5%となりました。

最後に、誹謗中傷について自由回答で答えてもらったところ、以下のようなコメントが集まりました。

▽言論の自由が奪われかねないと危惧している(男性40代)
▽匿名での投稿はなしにすべき(男性40代)
▽誹謗中傷するなら堂々と住所氏名を公表する覚悟をしてからするべき(女性50代)
▽告発と侮辱と誹謗中傷の境目が難しい。ある程度の線引きがなされないと、内部告発がなされなくなるのではないだろうか(男性30代)
▽開示請求自体はワンクリックでできるレベルにして欲しい。実際自殺者も出ているのですから、もう少し厳罰化してもいいと思う(女性40代)
▽曖昧な部分も多いので弁護士会などが一定のガイドラインみたいなのを作ってもいいと思う(男性20代)
▽誹謗中傷、フェイクニュースの伝播、著作権侵害など、すべての原因はただの無知。具体的な法的リスクについて小学生に教えてあげるといいと思う(女性40代)

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調査結果について、インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力して活動している清水陽平弁護士は、「芸能人や有名人は論評を受ける立場にあり、一定程度の限度を超えないと『違法な中傷である』と判断されにくい傾向自体はあるといえます。もっとも、デマを拡散するような行為や、過度にプライバシーを暴くような行為、執拗に中傷するような行為などは、権利侵害となる可能性は十分あり、民事上の責任を追及されたり、場合によっては刑事責任の追及を受ける場合もあります」と説明。

その一方で、「何が違法な中傷か分からないと言う人は多く、同調査でも同趣旨の指摘がされています。『違法でなければ言いたい』という考えがあるのでしょうが、言葉の意味は流動的であり、前後の文脈や言い方(書き方)によってもその印象は大きく変わり、何が違法かという客観的で明確な線引きをすることは不可能です」と指摘するとともに、その対策として、「主観的な基準として、面と向かって、一対一でその人にその言葉を言えるか、という観点で考えるとよいのではないかと思います。言えないということであれば、それによって相手が傷つくということが分かっているということでしょう。そういった言動は権利侵害に当たる可能性があると考えておくとよいといえます」とコメントしています。

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