進むべき方向を明示する、青地に白で示される道路標識の矢印。その先にある地形、道路に伴って描かれてますが、場所によってはかなり複雑な道路もあり、ときにはその矢印もとんでもなく複雑になり、かえって混乱を招くものもあるようです。
変わった矢印標識ばかりを集めた一冊が刊行されました。「ヘンな矢印標識」(山﨑賀功・著、自由国民社)で180以上の「ヘンな矢印標識」が掲載されています。
著者の山﨑賀功さんが全国各地で撮り集めた4000以上の変わった矢印標識から厳選。見れば見るほど頭の中が混乱するものもあれば、矢印なのに何故かちょっとかわいらしくも映るものもあり実に多彩です。
好きなだけ回っちゃえ!(神奈川県横浜市)
駅周辺のロータリー式道路の手前に設置された矢印標識を見てみましょう。植物のようにも映る図案ですが、本書によれば、これもその場所にある道路に準じてわかりやすく表現されているとのこと。
〈きれいな弧(こ)を描くぐるぐるとした矢印です。この標識は駅のロータリーに設置されていて、ロータリーを時計回りに回ることさえ守れば、どの道に進んでもOKのようです。目は回さないように……。〉(本書より)
まるでロゴマーク(島根県出雲市)
シンメトリックに描かれた矢印標識。アイコンやロゴマークにも見える、どことなく誇り高い矢印にも映りますが、著者も本書の中で「かっこいい!」と表現しています。
〈直進の矢印へ斜めに刺さる2本の矢印がかっこいい! 5叉路と複雑な交差点ですが、それでいて左右対称。標識とは思えない美しさも兼ね備えています。まるで何かのロゴマークのようです。〉(本書より)
僕の声が聞こえますか……(広島県広島市)
そして、矢印と矢印の間に、小さく矢印が描かれた標識を見てみましょう。かわいらしくも見えるものですが、縁がなく離婚することになり、別々の道を歩むことになった元夫婦の間にいる小さな子ども……といった妄想が膨らむタイプも。
〈「左下に何かついているな……って、君もれっきとした矢印か! かなり控えめなチビ矢印です。もっと自信をもって!〉(本書より)
「どの矢印にも愛着がある」と著者
本書にはさらに様々な矢印標識が紹介されています。
前例のないタイプのこの本、年々厳しさを増す出版不況の中では相当な思いで刊行したのでは、と担当編集者、著者に聞いてみました。
「著者のツイッター(現・X)とブログを拝見し、青字に白の矢印が思い思いの方向に自由に伸びているビジュアルがとても爽やかで美しく、独特の旅情も感じました。また標識に寄せられた著者の当意即妙なコメントが楽しく、日常風景に対する清新な視点に感動しました。この世界を広く伝え、共鳴していただける方々の人生を楽しくするきっかけになってほしいと思い、刊行を考えました」(担当編集者)
「今まで集めた矢印標識が4000余りあるので、その中から本当に紹介したいものだけを選ぶ作業はかなり苦労しました。
選出は北から順に行ったのですが、終盤の九州の標識を選ぶときに似たりよったりなものを紹介しないようにかなり気をつかいました(全部似た同じ標識にしか見えない! というツッコミはナシで)。
ただ、どの矢印も本当に愛着があるので、どんな風に魅力を伝えるかを考えるのは自分自身とても楽しかったです」(著者)
本書の一番の見どころは言うに及ばず二つと同じものがない「矢印の形」です。一般的にはよく見慣れた日常の1コマにしか感じられないところに、その細かい違いや個性を見出す著者の視線が、面白く、そして優しいように感じました。
「小学生の頃から約15年間にわたり道路標識を追いかけ続け、その魅力をあらゆる手段を使って伝え続けていたら、執筆のお声が掛かり今回の出版に至りました。思いは必ず伝わるものだと改めて実感しています。
作った本人が言うのも変ですが『ヘンな矢印標識』、ただパラパラと眺めているだけでもその世界に引きずり込まれるようで意外と楽しいです。道路標識が織りなす不思議な世界観に、一度浸ってみませんか?」(著者)
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