当初予定されていた当初の1250億円から、いつの間にか8390億円(今年12月19日政府発表)に膨れ上がった大阪・関西万博の会場に直接関係する費用。関連するインフラ整備費全体では9.7兆円もの巨額な数字になる。
そんな中、SNS上では「万博リングに350億円つかうよりも、僕に1億円くれたらすんごい作品作れるのに!」と嘆く畳職人の投稿が大きな注目を集めている。
話題の畳職人とはアーティスティックな意匠をこらした作風で知られる山田憲司さん(@japanese_floor)。投稿に添付されているのは庭園に面した和風建築の写真だが、鶴が両翼を広げる姿が畳で見事に表現されており、山田さんの技が世界に通用するものであることがよくわかる。たしかに現状のまま万博関連に何千億、何兆円の血税を注ぐくらいなら、山田さんに1億円預けたほうが、はるかに良い形で日本文化を世界にPRすることができそうだ。
今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは
「こういう日本らしい場所を国中あちこちに作ったほうが海外から人もくるし日本人も見に行くと思う。同時に『大阪府はブラジルとコラボするぜ』みたいな感じで同時に展示するとか。場所や金銭で余裕がある都道府県はいくつかの国とコラボするもよしで。」
「絶対外国人もこっちのほうが嬉しい 350億円で350箇所茶室作ればいいのに」
「本当に素晴らしい こんな美しいものを世界にご紹介していただきたい こっちにお金出して欲しいわ」
といった共感の声が多数。
またごく少数ではあるが、
「畳は凄いけどそれは失礼だと思います。万博の350億もすごい畳と同じようにすごい万博を完成させるためのもの。」
といった万博擁護派による批判もあった。
畳職人に聞いた
山田さんに話を聞いた。
ーー写真の畳について
山田:場所は京都の東福寺光明院です。庭園がある場所で畳の個展をしたい思っていたところ、インターネットでこのお庭を知りました。光明院さんに飛び込みでお願いして会場を1カ月間貸して頂きました。制作費や設営費は実費で支払い、1年かけて畳の作品を完成させました。
ーーこういった畳作品を手がけるようになったのは
山田:34歳の時、無職になりニート生活を送っていました。実家が畳店なこともあり時間潰しに変な形の畳を作り始めたことが現在の活動のきっかけです。畳は全て同じ色のもの。畳そのものを着色するのではなく、畳の角度と、光の反射で色が変化する特性を利用して、デザインを施しています。
ーー大阪・関西万博について
山田:「1億円くれたら」と書きましたが、実際は万博のように注目度の高いイベントには無償でも参加させてもらいたいと思っています。実際、万博関係者にお願いしたり、メールや電話をして参加を試みたりもしましたが、まったく相手にしてもらえませんでした。
ーー万博リングは350億円かかるそうです
山田:万博リングを作ることは異論がありませんし、もともと建築が好きなので大きなチャレンジは楽しみにしています。ですが、有名な作家に大金をお支払いするのもいいですが、せっかくの国際的な舞台なので、どうか無名の作家にも目を向けてほしいです。費用がなくてもすばらしい提案が可能ですし、すばらしい作品を生み出すことができる作家がたくさんいます。税金をたくさん使わなくてもすばらしい展示ができることを証明させてほしいです。
ーー投稿が反響を呼びました
山田:肯定的な意見も、批判的な意見もありました。万博リングの作家には失礼な意見なので批判は仕方ないですが、万博で僕の作品を見てみたいという意見もたくさんありました。万博側から話があれば、最高の提案をしたいと思っていますし、準備をして待っています。万博関係者の方々、よろしくお願いいたします。
◇ ◇
今回の山田さんの声が万博関係者に届きますように。
なお山田さんは来年7月に名古屋・しゅもく館で展覧会を予定している。伝統を踏まえた上で、現代にも通じる魅力を提供してくれる山田さんの技をぜひ多くの人にご覧いただきたい。
山田憲司さん関連情報
Xアカウント:https://twitter.com/japanese_floor