図書館で映画の上映会…なぜ? 担当者が語る納得の理由 こだわりのテーマ設定やバリアフリー上映で人、映画、図書館を繋ぐ取り組みを取材

宮本 裕也 宮本 裕也

今や映画は場所を問わず、どこでも観ることができる。映画館、自宅やスマホ、美術館など様々である。

図書館でも映画上映が行われていることはご存知だろうだろうか。図書館といえば、読書を楽しんだり、自習などに打ち込める市民憩いの場。そんな図書館の中には、映画の上映会が定期的に開催されている所もあるのだ。

図書館によっては、映画のLD、VHS、 DVDなどを扱っているため、視聴した利用者も多いだろう。図書館と映画の距離は、案外近いのである。

そんな図書館でかかる映画は、どんな経緯で選ばれるのか。担当者に話を聞くことができた。

神戸市立灘図書館は、上映作品を上映権付所蔵DVDリストから、テーマを設定して上映しているという。例えば11月だと勤労感謝の日にちなんで「働く人々」をテーマに、『おくりびと』の上映を行ったそう。

また、上映作品の制作国に偏りがないように来場者のニーズを気にかけつつ、色んな映像資料に触れてもらえるように配慮した作品選定を行ってもいるという。さらに、10月27日から開催されていた「読書週間」では、通常の映画会では上映しないシリーズものを2日かけて連続上映していたという。

図書館の運営を手助けする株式会社図書館流通センターは、図書館での出張上映やバリアフリー上映などを行っているという。バリアフリー上映は株式会社住友商事と共同で運営を行い、公式HPには「視覚障がい者向けの『音声ガイド』や聴覚障がい者向けの『日本語字幕』を付けた作品を製作する」とある。2022年度には全国で150回の上映会を行ったそうだ。『武士の家計簿』(監督:森田芳光/2010年)のバリアフリー上映では、時代劇の「時代背景」の難しさをバリアフリー音声の手助けにより、障害のある方だけでなく、歴史好きやそうでない人にも理解できる作品になったという。

図書館は映画と利用者をつなぐ場所

これだけの回数を行うには、やはり需要があるということか。公共施設での上映は基本的に無料だ。それでも上映するのはなぜか。図書館で上映する意義を聞くと納得の意見が返ってきた。

「普段、本を読まない人の来館のきっかけになっています」(灘図書館)。1人よりも2人で来場する人が多く、映画の関連図書を設置することで、本を手に取ってもらえるという。映画が映画を、人、本を繋いでいる。上映作品は時代劇やNHK関連作品の人気が高いそうだ。地元神戸を舞台にした作品も積極的に取り入れ、『ふたりの旅路』(監督:マーリス・マルティンソーンス/2016年)は特に評判も良かったという。

「映画館へのアクセスが悪いお客様でも映画に触れることができるのが図書館。『映画を観る』という機会を提供できているのは大きな意義があると考えています」(図書館流通センター)。シネマコンプレックスやミニシアターは全国にあるが、アクセスが悪いと交通費など含めて遠い存在になってしまう。その利用者のためにも、図書館は映画と人を繋ぐ重要な場所になっているということだろうか。

お住まいの近くの図書館でも上映会が開催されているかもしれない。映画に興味がない方でも気になる方はぜひ図書館へ行ってみてほしい。

灘図書館 公式サイト https://www.city.kobe.lg.jp/a09222/kosodate/lifelong/toshokan/facilities/nada_lib.html

株式会社図書館流通センター 公式サイト https://www.trc.co.jp/

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