「つまようじの溝なくします」→きっかけは小さなクレーム 大事にしてきた伝統…でも、実はナイス判断だった?

谷町 邦子 谷町 邦子

溝がうまくつかない原因は、機械以外にも

材料の白樺の原木を北海道にある協力工場が仕入れ、丸軸まで加工していますが、「材料は木なので湿気を吸って膨張したり乾燥して縮みます。つまようじは細いからそれだけで太さや重さが大幅に変わります。0.0何ミリ単位の膨張で砥石への当たりが強くなる、弱くなることも。その都度機械の調整はするんですが、それでも溝が薄くなることもあるんです」。

こればかりは自然素材の性質によるものなので、機械のように調整することもできません。溝がついてないつまようじの数はロットによっては数本どころではなく、ほぼ捨ててしまわないといけないこともあったそうです。

さらに、白樺は単独ではなく、周りに生えている建材の松や檜と一緒に伐採されることが多いことから収穫に大きなばらつきが。そのため、新築住宅の建築が減ったコロナ禍では切られる頻度が減って、木材の競り市などにほとんど出回らなくなる時期があったのです。

「自然のものであること、また世界情勢から、いつ材料が手に入りにくくなるかなんてわかりません。コロナで材料が入ってこなくなるとは想像さえもできませんでした。材料がないのに、溝がないだけで捨てるなんて…」と、末延さんは納得できない気持ちを抱え、なくしてもいいのではと考えが年々強まっていたなかでの、お客側からの指摘だったのです。

お客さん側からの反応は?

個人用の「純国産つまようじ」のみ溝がないバージョンとなりましたが、購入したお客さんからは「スタイリッシュ」だという声も。もともと直売の「袋入り きくすい 日本製 純国産しらかば楊枝」には溝がなく、取引先にも「溝があるタイプ」「溝がないタイプ」の両方を卸していて、「こちらのほうがカッコいい」と溝がない方を好まれることもあったそうです。

もちろん、製造する立場としても手ごたえが。「日々商品作って検品してるんですけど、明らかに廃棄分は減りました。検品は引き続きおこなっておりますが、確認箇所が減ることで負担が減っています」。

今回、個人用のみ溝を失くし、異なる箱に入れた卸用は続ける理由については、「やっぱり溝は地場産業の歴史で、昔の人が考えて生み出した技術だから残していかないといけないなと思っています。ただ従業員の負担が増え、利益が全然出ない商品になってしまうと地場産業自体が続かなくなってしまう。省けるところは省いてくことで、続けられることもあると思います」。

溝を残すために、一部商品の溝をなくす。厳しい状況が続く地場産業を守るための決断だったと言えるはずです。

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