全国で熊の目撃情報や人的被害が相次ぐ中、新潟県がまとめている「クマ出没マップ」の尋常ではない“出没”ぶりが大変なことになっている。県内の目撃・痕跡情報を地図上に丸印で落とし込んでいるのだが、2023年度の丸が多すぎて、一見すると「よくわからないがとにかく多い」ことしか伝わってこないのだ。目撃・痕跡の件数は実に1157件。このうち人身被害件数は8件(9人)に上るという(いずれも11月13日現在)。県の担当者に聞いた。
山や海に囲まれた自然豊かな新潟県には、様々な野生の動物が生息。中でもツキノワグマは新潟県の自然の豊かさの象徴ともされている。
本来はおとなしく、人間と距離を取って生活しているツキノワグマだが、近年は登山、山菜やキノコ採取などで入山者が増え、人身被害が発生しやすい状況に。また今年の秋はブナが凶作で、その他の堅果類は不作~並作。冬眠前のツキノワグマがエサを求めて人里に出没する可能性が高まっているという。
「本年度は確かに多いですが、実は、ここ十数年で最も大量に出没した2020年度ほどではありません」と話すのは、新潟県環境対策課の担当者。20年度の目撃・痕跡確認数は1957件で、人身被害は17件(21人)だったという。「とはいえ多い傾向にあるのは間違いなく、引き続き注意喚起をしていきます」
今月13日には、新潟を含む北海道・東北地方知事会の代表が環境省などを訪れ、熊を「指定管理獣」に指定するよう要望書を提出。同省も検討を始めている。
要望の中で注目を集めたのが、熊の駆除に対して自治体に寄せられる苦情の電話だ。「殺処分するな」「熊がかわいそう」といったものだけではなく、新潟県のある市には「武器を使うのは卑怯」「素手で対応しろ」などの理不尽なクレームも届いているといい、SNSなどでは「いちいち対応しなくてもいいのでは」「まともに聞く必要はない」という意見が噴出した。
熊による人的被害が相次いでいる秋田県の佐竹敬久知事が先日、記者会見で「抗議の電話はすぐ切ります。ガチャン」「これに付き合っていると業務に支障が出る」という姿勢を示したことが話題になった。しかし新潟県の担当者は「実際に電話を受ける現場の職員としては、話も聞かずに一方的に切るということはなかなかできません」と苦情対応の難しさを明かす。
【にいがたクマ出没マップ】https://ngt-webgis.jp/kuma/