捨てられたゴールデンレトリバー 毛玉を除去、シャンプーした体は「骨と皮」だった 人馴れトレーニングを積んで優しい飼い主さんとめぐり会った

松田 義人 松田 義人

2021年2月、福岡県の動物愛護センターに推定年齢5歳ほどのメスのゴールデンレトリバーが収容されました。街中を彷徨っているところを発見され収容されたそうです。

飼い犬であることは想像できますが、動物愛護センターには飼い主からの名乗りはなく、おそらくは意図的に捨てられたようです。動物愛護センターでは収容期間に制限があります。この一定期間内に引き取り手がいなければ、最悪殺処分になる可能性もあります。

動物愛護センターの職員にとっても、それだけはなんとか避けたいと思っており、そこで相談したのが地元・九州を拠点に、犬猫の保護活動を行うボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)でした。

体中の毛玉と汚れをまずは綺麗に

はぴねすのスタッフは、迷わずこのゴールデンレトリーバーを引き出すことにしました。

人懐っこい性格のワンコのようで、初めて対面するスタッフにも自ら寄ってきて尻尾を振りながら挨拶してくれましたが、他方で体中が毛玉と汚れまみれでところどころに糞も絡みついている状態。かなりの異臭を放っていました。スタッフは「大丈夫だよ。もう安心していいからね。綺麗になろうね」と声をかけ、レアと名付けました。

引き出した後、ドックサロンへ。いつも保護犬たちのトリミングをしてくれる優しいオーナーが、今回も快く引き受けてくれました。トリミングの前に「のどが乾いているだろうから」と、水を与えたところ、何杯も何杯も飲み続けました。はぴねすのスタッフやドッグサロンのオーナーに対して、「この人たちは悪い人じゃない」と察し、リラックスできたことで水をいっぱい飲んだのかもしれません。

ドッグサロンのオーナーは石のように硬くなった毛玉を取り除く作業を始めましたが、想像以上に毛玉と汚れが硬くバリカンが役に立ちませんでした。ハサミを使って地道に余分な毛を切り落とし、2時間かけて全ての毛玉を取り除き、シャンプーしました。

気持ち良さそうな表情を浮かべるレアでしたが、体の様子もあらわになりました。レアの体は「骨と皮」状態。飼い主に捨てられ、長い間満足な食事も得られず生き抜いてきたレアの心情を思うと、胸が苦しくなるスタッフでした。

術後はすぐに元気を取り戻す

レアは後日、動物病院での検査を受けました。膀胱炎の疑いがあり、やせすぎているせいか貧血気味だという診断が下りました。ただし、これは治療によって完治も期待できます。命に関わる病気がなかったことを知り、スタッフは安心しました。

そして、以降ははぴねすに参加する預かりスタッフさんの家へ。治療の経過を見つつ避妊手術、マイクロチップ挿入、歯石除去などを実施することにしました。術後は元気のない様子を見せることもあったレアですが、しばらくすると、持ち前の明るさを取り戻し、笑顔を浮かべてくれるようにもなりました。

遊びが好きすぎて、ときにやらかすことも

人懐っこく穏やかな性格のレア。元気を取り戻すとともに「本当の性格」も見せ始めるように。とにかく無邪気で遊ぶことが大好きで、毎日のようにペットシーツをビリビリに破り、ぬいぐるみをくわえてブンブン振り回し、結果的にぬいぐるみが破壊され中の綿を出てしまうなど、なかなかのヤンチャぶりを発揮します。

預かりボランティアさんの家にいる先住犬にも「遊ぼうよ」とたびたびちょっかいをかけます。先住犬は迷惑そうな様子で相手にしませんでしたが、それでもレアの「遊ぼう」アピールが度を過ぎると、「ワン!」と怒ることも。さらに、散歩の時間もハイテンション。全力で走り出し、預かりスタッフさんのリードをぐんぐん引っ張ります。

それでも、預かりスタッフさんは「元気になってくれて本当にうれしいです。ただし、レアは元気すぎます(笑)。他の人や小さなワンコがけがをするといけないので、里親募集に出すまでに、きちんとしつけないといけません」と苦笑い。その横でレアは「何のお話?」と無邪気な表情を浮かべ、遊ぼうアピールをしてくるのでした。

ピッタリの家族と縁が結ばれた

一定の人馴れトレーニングを経て、レアの里親募集をかけることにしました。問題点は「元気すぎる」くらいであとはいたって性格良好。多くの里親希望者さんが「ぜひうちに」と申し出てくれました。

預かりスタッフさんは、元気いっぱい、人もワンコも大好きなレアには、いつも対等に遊べる存在が必要だと考え、「レアと同じ体格の先住犬がいる家庭が理想」と考えていました。

そして、その理想にぴったりの里親希望者さんが現れました。その方は、長年ゴールデンレトリバーを飼育した経験があり、現在も同種の先住犬を飼っているとのこと。また、その方はいつも家にいるため、レアが留守番する必要がほとんどありません。自宅庭はドッグランのように広大で、柵で囲まれているため脱走する心配もなさそうです。

レアにとってこの上なく理想的な環境で、この家庭で新たな第二の犬生の一歩を踏み出すことになりました。

先住犬との相性も抜群で、2匹ともお互いを「相棒」として思っている様子です。最高の環境へ巣立っていったレアの好例を、スタッフはおおいに喜び、そして今後も1匹でも多くの身寄りのないワンコを幸せへと繋いでいきたいと、あらためて思いました。

わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/

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