日本産海産物の禁輸で、中国の水産業者も「脱中国」!? 度重なる“経済的威圧”に翻弄…加速する東南アジアシフト

治安 太郎 治安 太郎

最近は中東情勢に世界の目が向いているが、日中の経済、貿易関係は冷え込んでいる。米中の間で半導体覇権競争が激化する中、日本は7月下旬、先端半導体の製造装置に関連する23品目で中国への輸出規制を開始したが、中国はそれへの報復として半導体の材料となる希少金属ガリウム、ゲルマニウムの輸出規制を8月から開始した。日本はガリウムとゲルマニウムの多くを中国に依存している。また、中国は福島第一原発の処理水放出に対し、日本産水産物の全面輸入停止という措置に打って出た。こういった中国による経済的威圧に対し、企業によって事情は大きく異なるだろうが、脱中国、東南アジアシフトが加速化している。

たとえば、大手自動車メーカーの三菱自動車が10月、世界最大の自動車市場である中国から撤退する方針で明らかとなった。三菱自動車は2012年から中国の自動車メーカーと合弁で自動車の生産を続けてきたが、中国国内での急速なEV(電気自動車)人気に押され、3月から生産を停止していた。今後は中国自動車メーカーとの合弁を解消し、在庫の販売が終了次第中国市場から撤退するという。

今後、三菱自動車は東南アジアへの強化を目指す方針だ。しかし、今年1月から8月までの中国での販売台数が前年同期比で、マツダが37.8%、ホンダが24%、日産が26.3%など大きく落ち込んでおり、今後は他の自動車メーカーでも同様の動きがみられるかも知れない。

また、中国が日本産水産物を全面的に輸入停止にする中、北海道など日本産ホタテを加工してきた中国の水産業者が、タイやベトナムなど東南アジアに加工拠点を移転させる計画が明らかになった。早ければ年内にも東南アジアでの加工が開始されるとみられる。

中国では河北省や山東省などの水産業者が日本からホタテを輸入し、現地で加工した後に米国などに輸出してきたが、今回の輸入停止を受けて水産業者たちからは悲鳴の声が上がっている。昨年、日本から中国に輸出されたホタテは総額で467億円に上っており、今回の輸入停止による被害規模は計り知れない。

中国へホタテを輸出してきた日本の水産業者らも同様の対応策を検討している。特に、売り上げの半数以上を中国に依存してきた水産業者は、今回の中国による経済的威圧に強い懸念を抱き、タイやベトナム、インドネシアへのホタテ輸出などを検討しており、製造業だけでなく非製造業の間でも同じような動きが今日みられる。

これまで日本は中国による経済的威圧に幾度も直面してきたが、経済大国になった中国による威圧は今後さらに日本の急所を狙ってくる恐れがある。日本産水産物の全面輸入停止もかなりインパクトがある対抗措置だ。それを回避するためにも、日本企業の脱中国、東南アジアシフトという動きはよりいっそう広がってくるだろう。

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