企業の与信管理にかかわるサービスを提供するリスクモンスター株式会社(東京都中央区)は、このほど決算短信記載の有利子負債に基づいて集計した「第3回 借金王ランキング」を発表しました。同ランキングによると、世界最大の自動車メーカーの1つである「トヨタ自動車」(有利子負債:29兆3803億円)が1位となりました。また、上位20社のうち12社が年商以上の有利子負債を有することも分かったそうです。
調査は、2023年7月1日時点で開示されていた2022年4月期決算以降の最新連結決算に基づき、金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く決算短信提出企業3192社を対象として実施されました。
決算短信記載の有利子負債に基づいて集計したところ、「借金王ランキング」の1位は「トヨタ自動車」(有利子負債:29兆3803億円)でした。同社は調査開始以来、有利子負債額が増加し続けながらも、3期連続で「EBITDA(税引き前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)」が1位となっていることから、借り入れた資金を積極的に事業に投下(リスクテイク)し、収益(リターン)を得ている模範的な事例を提供しているといいます。
以下、2位「ソフトバンクグループ」(同:19兆4782億円)、3位「日本電信電話」(同:8兆2305億円)、4位「本田技研工業」(同:7兆6652億円)、5位「三菱HCキャピタル」(同:7兆6318億円)、6位「日産自動車」(同:6兆9029億円)、7位「ソフトバンク」(同:6兆1345億円)と続きました。
なお、上位20社の業種としては、「自動車製造業」「物品賃貸業」「通信業」「電気小売業」が3社ずつランクインしていました。特に「自動車製造業」と「通信業」においては上位7社までに3社ずつランクインしており、事業の特性から多額の資金調達が必要になる業種であることがうかがえます。
また、上位20社において売上規模と有利子負債を比較したところ、12社が年商以上の有利子負債を有する結果となっており、特に「物品賃貸業」「不動産賃貸業・管理業」においては、上位20社にランクインした5社すべてで有利子負債が年商を上回っており、借入れがかさみやすい業種であることが分かりました。
次に、有利子負債上位20社の安全性を調査するために「現預金回転期間」「借入依存度」「自己資本比率」を分析したところ、「現預金回転期間(現預金÷月商)」では、「楽天グループ」(29.2カ月)、「ソフトバンクグループ」(12.6カ月)、「オリックス」(5.5カ月)が上位となりました。一方、調査を実施した同社の倒産確率分析(以下、倒産確率分析)において高リスクとなる「1カ月未満」の企業は20社中2社のみだったそうです。
また、「借入依存度(総借入÷総資産×100)」では、業種特性として借入金がかさみやすい物品賃貸業と不動産業を除くと、倒産確率分析において高リスクとなる「50%超」の企業は「関西電力」(51.2%)、「九州電力」(63.5%)の2社のみとなり、ランキング上位企業の大半は資本のバランスを取りながら、計画的な借入を実行していることがうかがえます。
他方、「自己資本比率」においては、倒産確率分析においてリスクが上昇する「30%未満」の企業は20社中12社に及んでいることについて調査を実施した同社は「これらの企業については、運用資産の規模増大による収益拡大を図るために財務レバレッジ(総資産÷自己資本)を高めているものと考えられます」と説明しています。
また、上場企業の収益力を計る指標として「EBITDA」「営業キャッシュフロー」を集計し、ランキング化したところ、「EBITDA」では借金王ランキング上位20社のうち8社、「営業キャッシュフロー」では10社がランクインしており、借入調達した資金を事業に投下しリスクテイクすることで、より多くのリターンを獲得している様子がうかがえる結果となりました。
最後に、上場企業における「有利子負債増加企業」を集計したところ、借金王ランキング上位20社のうち、「トヨタ自動車」「日本電信電話」「オリックス」など8社がランクイン。一方、「有利子負債減少企業」には、「ソフトバンクグループ」「三菱商事」「本田技研工業」など6社がランクインしました。
なお、「有利子負債増加企業」(1854社/58.0%)は、「有利子負債減少企業」(1246社)を上回り、前回調査時の51.5%から6.5ptの増加となりました。この結果について同社は、「増加企業は、アフターコロナにおける投資の増加や、円安による仕入コスト高騰に対して資金調達が必要となり、有利子負債が増加したものと考えられます」とコメントしています。
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調査を実施した同社は、「本来、借入は企業が成長するために必要な要素の一つであり、企業の安全性を高める要素ともなり得ます」と説明。
その一方で、「借入はそのタイミングや金額などを見誤ることで、深刻な倒産リスクを招きかねないため、資金調達は綿密に練られた事業計画に基づいて行われることが重要です。アフターコロナにおいて、ビジネスチャンスの拡大により資金調達機会の増加が見込まれる中、事業を成長させるための適切な資金調達の方法・金額・タイミングを見極めることはきわめて重要な経営判断と言えるでしょう」とも述べています。