ペットボトルに入った薄黄色の液体は、飲み残しの清涼飲料水でもお茶でもなかった。松江市内のリサイクルステーションで、おしっこの入ったペットボトルが捨てられる事案が相次いでいる。その数は4月以降で100本を超える。誰の仕業なのか。モラルを逸した事態に、回収担当者らが頭を抱えている。
5年前から頻繁に
9月中旬、松江市内の住宅地の公園にある回収ボックス。ペットボトルを集める担当の恩田潤一さん(43)が、ボックスに入った空容器を収集車に移すと、液体の入った容器を発見。おしっこが入っているかどうかキャップを開け、臭いをかいで確認した。
業務に携わり約8年。5年前から頻繁に見かけるようになった。「あ、またか」という感情と「何回も経験するが、吐き気がする」との嫌悪感が同居する。
不適切な物は回収せず、市に報告し、市の担当者が片付ける。恩田さんは、嗅ぐまでの作業を求められていないが、自発的に確認している。冬場は臭いが分かりにくく、より鼻を近づける必要があるという。
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他市町にない便利さがマイナスに
松江市内にあるリサイクルステーションは500カ所。スーパーや公園、公民館の一角などに常設され、いつでも空き缶や瓶、ペットボトルを持ち込める。
回収を担う松江八束清掃協同組合(松江市西持田町)は各場所で出される量に応じて頻度を変え、収集車を走らせる。他市町にはあまりない便利さが皮肉にもマイナスにはたらいている。
市のまとめと組合への取材によると4月以降、少なくとも市内10カ所で計16回確認された。内訳は、容器500ミリリットルが92本、1リットル3本、1・5リットル3本、2リットル5本で、大半が満タンだ。国尾公園(浜乃木7丁目)では8月中旬、500ミリリットル容器30本が見つかり、総量は15リットルに及んだ。南田町街区公園の2リットルが5本といったケースもあった。
人目につかない場所に傾向
例えば一般的に成人男性は1日4~6回、計800~1500ミリリットルを排尿するとされており、数回に分けて同じ容器に用を足したのを捨てた推測もできる。
現場を回ると、公園のほかにスーパーなどがあった。車を近くに止めやすかったり、人目につかなかったりする傾向が見られた。
これとは別に6月には、臭いで明らかに入っていたと分かる空のペットボトルが、45リットルのごみ袋六つ分、投棄された。2、3年前には、ペットボトル内のおしっこが回収車内で飛び散り、他のペットボトルがリサイクルできなくなったケースがあった。
組合の柳楽幸子代表理事は「ペットボトルはリサイクル品であってごみではない。ルールを守り、きちんと分別してほしい」と強調する。
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法に抵触する可能性も
高速道の渋滞時に排尿を我慢できなくなり、車内で空き容器に用を足し、そのまま捨てる人がいるという。ただ、松江市内では近くにトイレがあるリサイクルステーションで発見されたケースがあり、一概に同様の行動心理と当てはめられない。
市によると、廃棄物処理法と軽犯罪法に抵触する可能性があるという。確認された箇所には張り紙で注意喚起しているが、次から次へと場所が移り、いたちごっこのようになっている。
市リサイクル都市推進課の大原康史課長は「分からずペットボトルを触れば、感染症や皮膚炎を引き起こす恐れがある。人に迷惑をかける行為で、決して公共の場に捨てないでほしい」と訴える。