兵庫県を拠点に活動する写真家、渡邊圭祐さん(44)の作品がネット上で大きな話題になっています。
作品名は「卒業」。高校の集合写真を題材にしており、担任の先生から生徒まで総勢25人を渡邉さん一人で扮した意欲作。撮影期間は4カ月。役作りのために8kg減量し、髪型も幾度となく変更。作品を見たユーザーからは「衝撃」「これを超える自撮りはない」「面白くてかっこいい」「マジで好き」「何回見ても傑作」など、絶賛する声が寄せられています。注目を集める渡邉さんに姫路市内で話を聞きました。
美容室へ3回通って髪型チェンジ「全部地毛です」
渡邉さんが写真を始めたのは2014年。Facebookを中心に、ちょっと笑える自撮り写真を投稿し続けたところ、見ず知らずの人たちから「笑いました」「元気が出た」とコメントが寄せられるようになりました。「自分が撮った写真が誰かを元気づけることもあるんだ」。そんな中、ふとひらめいたのが、「架空の高校のクラス写真を一人で演じたら面白いのでは」。
巨漢から痩せ型まで25人を演じ分けるために、撮影をしながら体重を8kg絞り、かつらは使用せずに美容室へ3回通って髪型をチェンジ。「全部地毛です」。衣装や小道具の調達などもこなし、夜中でも思い立ったら自室で自撮りする生活を送りました。
校庭風に見える背景は、大きな公園で撮影。人出がまだ少ない早朝の時間帯を選び、レンタル業者に借りた椅子を12脚並べ、カメラの三脚を立て、タイマーで自撮り。「一番無難な生徒役を選んで野外で撮影しましたが、散歩中だったおじいさんに不思議そうな顔で見られました」
集合写真には続きがあった!
全員分の顔写真の撮影が終了すると、今度は本物そっくりの「卒業アルバム」を作成するほどの熱の入れようでした。
高校名は「兵庫県立渡邉工業高等学校」。校歌も作詞し、自身の扮装写真を見ながら、一人一人の氏名や思い出話などを創作しました。
自撮り集合写真「卒業」は2016年に完成。作品展などに出展の際は、同時に作った卒業アルバムも一緒に展示。来場者らを驚かせています。
「ばかばかしいことも全力で。使命感にかられてやりました(笑)。今思うと、1枚の写真を4カ月かけて撮ることはそうそうない。全てが楽しくて、しんどくはなかったです。いい経験になりました。発表から時間が経ってた今でも、たくさんの人に笑ってもらえることに幸せを感じています」
「ユーモアフォト」もっと広めたい
ここ3、4年は、自撮りからスナップ写真に軸足を移し活動する渡邉さん。一貫するのは「ちょっとでも笑ってもらいたい」という思いです。時間があればカメラ片手に街をぶらりとし、思わずニヤリとする決定的な瞬間を収め続けています。
今後の活動については「ユーモアのあるスナップ写真『ユーモアフォト』をもっと広めたいです」とし、「写真を見てみんなが楽しんでくれたら僕もうれしいです」と熱を込めて語りました。
▽わたなべ けいすけ…1978年11月、山口県生まれ。兵庫県育ち。漫画家のアシスタントなどを経て、2014年から趣味として写真を始める。2022年には、国内最大級の写真投稿サイト「東京カメラ部」に投稿された約5255万件の中から、閲覧者からの反応がよかった人気上位10人「10選」に選ばれる。今年の秋ごろ開催の合同個展「東京カメラ部2023写真展」にも作品が展示される予定。