不登校で悩む親子に「家で勉強したら?」とアドバイス ところが親の反応は…? 不登校問題の指摘に反響

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「最近本当によくあるパターンなんですが...」

X(旧Twitter)など、ネット上で精神医療に関する情報を公開されているAMAPSYMEDさん(@AMApsymed)。この度、不登校の子どもに関して持論を展開し、多くの方々からの反響がありました。

・現在中3。小5から不登校。
・学校が怖い、緊張する。
・家ではゲーム。勉強はしない。
・これでは高校に行けない困る。

これに対して

『家で勉強したら?』

と問うと、母子揃って鳩が豆鉄砲を食ったような顔するのですが、私そんな変な事言いました??

AMAPSYMEDさんによると、上記の内容は精神科の外来でよく見かけるモデルケースとして示したもので、実在の親子について書いたものではないとのこと。

しかし、これと似た状況は、実際の現場でもよく起こり得るといいます。

不登校や引きこもりは、近年の大きな社会問題。その背景には、発達障害や精神疾患などが存在する可能性も高く、そのため本人やその家族が精神科を訪れることも珍しくありません。

ですが、そのような家族にアドバイスをしても、「考えたこともなかった」という反応をされたり、「なんで病院は助けてくれないの?」という顔をされたりすることがよくあるのだといいます。

そもそも、不登校の子どもに対して、「家で勉強すること」を提案するのは、ごく自然なことのように思います。しかし、AMAPSYMEDさんは、「それで『じゃあ家庭学習しよう』となるケースはごく稀」だといいます。

一体、どうしてなのでしょう?ポストの内容を軸に、AMAPSYMEDさん本人におうかがいしました。

子供が家で何をしているのか、親が把握できていない

「(不登校の子どもの診察中、その親に対して)『お子さんは何をして過ごしているんですか?』と尋ねると、親御さんは「何してるの?」って、その場で子どもに尋ねるんですよ」(AMAPSYMEDさん)

まず、家で子どもが何をしているのか知らない親が多いことが、問題の一つであるとAMAPSYMEDさんは指摘します。

近年は、核家族・夫婦共働き・シングルマザー(シングルファザー)といった家庭が増えました。そのため、親御さんが働きに出ており、子どもが日中何をしているのか把握していないケースが多々あるといいます。

「(不登校の子どもを抱える)親のなかには、子どもが家で何をしてるのか知らないし、大して関心をもっていない方も多くいるようです。親にとって重要なのは『学校に行く/行かない』という事実だけ。そもそも学校が何の役に立っているとか、その学校に行かない分なにを補ったらいいかとか、そういう発想を持っていないようにすら見えます」(AMAPSYMEDさん)

不登校の子どもに対して、生活習慣の改善を促したり、自宅等で学習の支援を行ったりすることはとても重要です。しかし、なかにはその理解にいたらず、そのような助言に対して「子どもが学校に行かないのを相談しているのに、なんで家での過ごし方の話になるの?」という反応をする方も多いといいます。

精神科が逃げ道に

さらにAMAPSYMEDさんは、不登校の子どもの対応を精神科に任せきりにしてしまう風潮にも問題があると考えています。

先述の通り、不登校や引きこもりの原因に、発達障害や精神疾患が潜んでいる場合も大いにあります。その意味で精神科の受診を検討することは、とても重要です。しかし、AMAPSYMEDさんは「医療が役立つケースは不登校の一部にすぎない」という見解を示します。

「そもそも不登校の原因は一つではありません。育て方を含めた家族関係、学校での人間関係、本人の体調...他にも、授業についていけない、家が経済的に苦しいなど含め、様々な要因が不登校の一因となる可能性があります」(AMAPSYMEDさん)

しかしながら、徐々に精神科受診への敷居が下がり、子どもの発達障害が広く世間で注目されるようになった昨今、「不登校はメンタルの病気」という考えが広まりました。学校側も、欠席しがちな生徒に対してまずは精神科の受診を勧めるようになり、対応を医療機関に丸投げするような状況も起こりがちになってしまったといいます。

「本来なら、(不登校の子どもに対しては)ご家族、学校、児童相談所を含む行政機関、医療機関、フリースクールを含む民間事業者などが、さまざまな面から多角的にサポートするべきなのですが、現状ではお互いが責任を擦り付け合っているようにも見えます。医療側の目線でみると、『精神科を受診させたからもう安心だ!』とお考えのご家族・教育・行政関係者が多すぎると感じます。学校によっては『すでに精神科通院中だから』という理由で、本人や親とまったく連絡をとらない先生などもおられると聞きます」(AMAPSYMEDさん)

本来、高校進学や勉強といった“進路”に関する相談は、学校などの教育機関が行うべきことです。しかしながら、医療機関もそのような相談を受けざるを得ないのが実情なのだそうです。

家庭の問題、学校の問題など、不登校には多くの問題が存在します。医療機関だけでなく、各機関の関係者がそれぞれの立場・責任のなかで、継続的に支援について考え続けることが必要です。

勉強はすべてではない、目標をもつことが大切

不登校の子どもやその家族の問題点について指摘したAMAPSYMEDさんのポスト。

リプ欄には、多くのコメントが寄せられています。

「どんな理由でも一般知識の勉強はしておいた方がいい」
「勉強しないと、仮に高校には行けても高2にはなれないよ」
「確かに学校に馴染めず可愛そうだからと言って怠けてていいわけではない。結局は自分を将来苦しめるだけ」

勉強はすべき、という手厳しい指摘。「自宅学習が難しいのであれば個別塾を利用する方法もある」という旨の主張もあり、多くの方が勉強が大切であると考えていることがうかがえます。一方で、このような意見も。

「勉強しないで就職するなら高校に行かず、専門学校やそのまま就職という手もあります」
「それならゲームを極めてプロになるという手もあると思います」
「息子が不登校時代は好きな事はできましたので、ドローン講習会や3DCAD習いに行ってました。(中略)不登校だからこそ、たくさん色々な経験するチャンスだと思います」

学校の勉強や自宅学習に固執しなくても、塾を利用したり専門学校に行ったりなど、別の方法もありますよ、という声も多くありました。

近年では、不登校の子どもを受け入れる学校が開設されたり、オンラインゲーム上で競い合うeスポーツのプロを育成する学校がつくられたりなど進路の選択肢は増え、YouTuberやイラストレーターなど、職業選択の幅も広がっています。俳優や声優・タレントのなかにも、昔不登校でしたが現在は精力的に活動されている方もたくさんおられます。

AMAPSYMEDさんも、「それこそ道は無限にあると思います」と話します。ただし、それ以前の根本的な問題として、本人が「そもそも目標を持っていない」「非現実的な目標を立ててしまう」という現実が横たわっているといいます。

確かに、現時点で立ち止まってしまっている子どもにとって、夢や目標をもったり、自分で状況を打破する解決策を見出すことが容易ではないというのは、想像に難くありません。

「学校は通ってさえいればひとまず数年で卒業という実績が残りますが、不登校にはそれがありません。何もしなければ一生そのままです。なので私個人としては『やりたいことが無いなら、とりあえず学校に通っておくと時間稼ぎ出来る上に将来の選択肢が広がるよ』と助言しています」(AMAPSYMEDさん)

子どもが自らしたいこと・将来の目標を見つけ、それに向かって進んでいけるのであれば、それに越したことはありません。しかし、進むべき道が分からず立ち止まってしまっているようであれば、可能な範囲で学校に行けるよう頑張ってみたり、学校の先生やスクールカウンセラーなどの力を借りたりしながら、少しずつでも前に進めるよう取り組んでいくことが必要でしょう。

ネットを通じて正しい精神医療の情報を発信

今回、精神医療の観点から、不登校の子どもの現状や問題点について語ったAMAPSYMEDさん。これまでにも電子掲示板「2ちゃんねる」(現「5ちゃんねる」)で『精神科医だけど質問ある?』というスレッドを立てたりなど、ネットを通じて精神医療についての情報を積極的に発信されてきました。

なぜ、そのような活動を行ってきたのでしょうか?AMAPSYMEDさんは話します。

「ネットでの医療情報発信を意識し始めたのは(西暦)2000年頃、いわゆるインターネット黎明期のことです」

今でこそ、厚生労働省や医療機関などが病気や治療に関する正しい情報を発信していますが、当時のネット上の医療情報は今より質が悪く、病気の名前で検索しても出てくるのは個人の闘病記を書いたブログくらいだったそうです。メンタルの病気ともなれば、見つかるのはいわゆる“自殺サイト”などの有害情報ばかりで、いま以上にネットの医療情報は信じてはいけない時代だったといいます。

そんな状況のなか、AMAPSYMEDさんはネットを通じて、ある方を救うことができました。

「『Yahoo!知恵袋』をぼーっと眺めていた時、たまたま生活カテゴリで『最近父の物忘れが進んで歩けなくなってしまった・先日も転んで検査入院した』という相談を見かけまして。咄嗟に“慢性硬膜下血腫”かなと気づいて、その旨を回答したんですね。それで相談者さんはすぐに病院に駆け込んだらしいのですが、結果的に私の予想は当たってて、お父様はすぐに手術を受けられ、その後歩けるまで回復されたそうです」(AMAPSYMEDさん)

父親が回復したことを喜び、感謝してくれたという相談者の方。そのような経験から、AMAPSYMEDさんは、ネット上での正しい医療情報の発信を志します。当時、無法地帯と言われていた2ちゃんねるの「VIP」にて、メンタルについての質問に真剣に答えるスレッドを立てました。

しかし当時は、ネット上で自らを医者と名乗り、真面目に医療情報を流すことが考えにくかった時代。偽医者と思われたり、煽り叩きや精神医療に対する恨みつらみのコメントが多数寄せられたりすることも頻繁にあったそうです。

「今では医師を名乗るXアカウントも多く、実名で医療情報発信している方までいると考えると、大変な時代の変化を感じます」(AMAPSYMEDさん)

無法地帯だったネット黎明期において、状況をより良くしたいという人たちの活動があったからこそ、現在の整備されたネット環境があることは間違いないでしょう。

AMAPSYMEDさんは、その後活動場所をXと質問箱サービスに移して、いまでも一般の方々の質問に答えているといいます。さらに、最近ではVRChatなどメタバースを活用した情報発信にも興味があるとのことで、今なお精力的に活動を続けています。

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■AMAPSYMEDさんのX(旧Twitter)はこちら
 →https://twitter.com/AMApsymed

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