自転車屋で「空気入れ無料」…善意のサービスに、とんでも行為 利己的すぎた客に非難「読解力が低い」「こういうの辛い」

谷町 邦子 谷町 邦子

「ありえへん事件が起きました」。空気入れポンプの無料貸し出しを行っていた自転車店で、販売商品の空気入れの封を開け勝手に使われてしまったという事態が発生。お店の担当者に詳細をたずねました。

X(旧Twitter)に状況を投稿したのは愛知県名古屋市の昭和区(川名店)と緑区(緑店)で展開する自転車販売店「ちいさな自転車家」のアカウント(@c_jitensyaya)。スタッフが忙しくて対応しきれないこともあるため、お客さんが自由に使えるよう空気入れポンプを店の外(入り口付近)に設置していました。

しかし、投稿した日(9月25日)、なんと売り場に並んでいる空気入れを持ち出し、パッケージを開封して勝手に使う人がいたのです。

当日、店内での自転車の修理が忙しかったため、その新品の空気入れポンプが「貸し出し用」が入ったペール缶に入れられた状態で発見され、気づいたのだそう。

そんな状況に、「うわ、考えられない。怖いですね・・・」「何故そうなるか聞きたい!」「パッケージされてたら、売り物って思うよなぁ。勝手に開けるとか、信じらんない」と驚きの声や、「パッケージ壊す人いますよね。商品破壊と何で思わないのか不思議ですね」「それは窃盗なのでは?」など何かの罪に当たるのではという声が多数寄せられました。

また、「読解力が低いのではないかと。『空気入れ無料でもらえるんか!』と思った可能性」「おそらくその人は空気入れを使おうとしたら、他の人が使ってて、待ちきれず店内の商品を開封し使用し、ペール缶に返却したのかなと。その人は『空気注ぎは無料だってそっちが言ってるし、商品返してるからいいだろ』なんかな。こわいこわい」と、そのような行為の理由を推測する人もいました。

様々な反響があった今回の件について、空気入れポンプが店頭に設置されるようになった経緯や今後の対策について聞きました。

できることならお客様を信じたい……

商品が使用されたのは、昭和区にある川名店。もともと両店舗で店内のコンプレッサーを使って無料のサービスを行っていましたが、川名店では店内が忙しい時などのために店外にフロアポンプ(空気入れ)を設置していたとのこと。

――川名店での設置前はどのような状況でしたか。

「『空気入れ無料』のサービスは、本来、お客様とのコミュニケーション手段として行っておりました。2018年のオープン当時、気軽に来店しやすいようにと始めたサービスでしたが、お客様と気軽に交流でき、お客様も世間話をして下さるので非常に好評でした。

ただコロナ禍あたりから利己的で他のお客様へ配慮をしていただけない方が増えてきました。どれだけお店が混んでいても(急いでいるから)空気を入れて欲しいという方が目立つようになって、対応しきれないとスタッフ共々判断しました」

――今回のできごとの他に、困られたことは?

「設置場所が店の入り口前なんですが、空気を入れる方の多くが出入り口を防いで空気入れを行っていました。また、忙しくて店内のコンプレッサーで入れられないことを伝えると、出入り口を塞いだ状態で、その無料の空気入れを使って店内で入れる方もそれなりにみえますね。

それから、設置した空気入れの故障頻度が非常に増えました。3カ月に1度は新品に変えないと使えない状態になります。一般的な自転車とスポーツタイプの自転車では空気を入れる口の形状が違うのですが、知らない方が多いのか、無理やりはめ込んで使われる方がみえます。その度に壊れてしまうので、メーカーの空気入れの動画をQRコードで読み込めるようにして、分からない方のためにポスターを設置いたしました。

――今後、どのような対策をとられますか。

「『売り場に出さない、聞かれたら出す』が多分良いのかと思います。ただこれは万引き対策と同じですからね……。商品を陳列している限り付きまとう問題かなと。

基本的に店内に入られたお客様には声を掛けるようにはしていますが、修理に追われてしまうとどうしても疎かになってしまいます。できる事ならばお客様を信じて今のままでいければと思ってはいますが……」

――今回の辛いできごとを踏まえて、改めてお伝えしたいことは。

「そうですね、『モノを大事に扱って欲しい』という気持ちが一番です。あとは『他人を思い遣る心』をもっと持って欲しいかなと。自分でも綺麗事を言ってるなって思いますが、事ある度にこの2つは痛感させられています」

◇ ◇

「お客さんに気軽に来店してほしい」という気持ちが裏切られる形となった今回のできごと。一度パッケージが開けられ、使用されると、空気入れポンプの商品としての価値は損なわれてしまいます。

他にもお店の出入り口を塞いだ状態での空気入れや、乱暴に扱うことによる故障など、業務を妨害したり損害を与えたりする行為があり、お店の人は「空気入れ無料サービス」の終了を考えてしまうほど。サービスのあり方については、現在、より良い形を検討しているとのことです。

もちろん、刑法のどの罪に当たるか、という視点も大切ですが、その手前の「モノを大事に扱う」「他人を思い遣る心」を忘れずにいないと、厚意や信頼からのサービスは失われ、禁止事項だらけの窮屈で寒々しい空間が増えていくことになるのではないでしょうか。

「ちいさな自転車家」は名古屋市内の2店舗で、クロスバイクやファットバイク、マウンテンバイク、ロードバイク、小径車(ミニベロ)、折りたたみ自転車、幼児・子ども向け自転車、電動アシスト付自転車など多彩な自転車を販売。街の自転車さんとして、修理やメンテナンス、出張修理(主に昭和区・千種区・緑区・南区・天白区対応、その他の地域は応相談)も行っています。

■ちいさな自転車家 川名店(販売は小径車中心)
住所 愛知県名古屋市昭和区川原通7-7-4 ヴィラ川原
営業時間 平日11:00~21:00、土日祝11:00~20:00
定休日 毎週木曜、毎月第1土曜(GW,お盆、年末年始、その他不定休あり)
電話 052-734-6050

■ちいさな自転車家 緑店
住所 愛知県名古屋市緑区浦里3丁目161
営業時間 11:00~20:00
定休日 毎週木曜、毎月第1土曜(GW,お盆、年末年始、その他不定休あり)
電話 052-892-7507

■「ちいさな自転車家」(@c_jitensyaya)のXアカウント https://twitter.com/c_jitensyaya
■「ちいさな自転車家」の公式ホームページ https://chi-cycle.jp/

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