2011年3月11日に発生した東日本大震災が起きてから、今も月1回東京から赴いて福島県の原発事故が起きた周辺で猫のTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと)活動に取り組む、動物愛護ボランティアの高沢守さん。昨年4月夜、福島県広野町でTNR活動をしていたところ、突如目の前に1匹の子猫が現れました。
「午後10時ごろ、ちょうど捕獲器を仕掛けていたときのことです。自分の足元に丸くて黒いものがうごめいているのに気付きました。ライトを上から照らしてみると何かの生き物だと分かり、さらに横から照らしてみると、ひょっこり猫のような顔が見えて。ぶるぶると足を震わせながら歩く子猫でした。まだ歩くのもやっとで、生後1カ月くらいの子。突然のことだったので、かなり動揺していました」
ボランティアがTNR活動中に現れた子猫 手のひらに乗るくらいの大きさだったが…
当時動揺しながらも「このまま朝まで放っておいたらカラスなどの餌になってしまう」と思った高沢さん。手のひらに収まるほどの小さな子猫を急いで保護し、近くに止めていた車に連れて行きました。また子猫の兄弟などがいないかと周辺を探しましたが、どこにもおらず。ひとまず、子猫を緊急保護したことをSNSに投稿。すると、地元福島のボランティアが「一時保護します」と名乗り出てくれたといいます。
「どうするか迷っているところに福島のボランティアさんからリアクションがあり、一時預かってくれることに。病院で子猫を診てもらったところ、けがもなく健康にも問題もなく。2カ月近く、ボランティアさんが子猫のお世話をしてくれました」
こうして無事に保護された子猫。高沢さんのボランティア仲間の妹さん家族が里親に名乗り出て、家族に迎え入れてくれました。
◇ ◇
子猫は東京の里親のもとへ 今では体重が6キロに…先住猫の倍近く!?
里親さんとなったのは、都内に住む田中さん。保護してから2カ月後の昨年6月、田中さんのところに子猫はやって来ました。当時は生後2カ月ほどの男の子。福寿くんと名付けられ、500グラムにも満たないとっても小さい子だったといいます。しかし…1年半ほど経った今、福寿くんに大きな変化がありました。どんな変化があったのでしょう? お迎えした当時のことや現在の様子などをまじえて、田中さんにお話を聞きました。
――福寿くんをおうちにお迎えしようと思ったのは?
「子猫を育ててみたいと思ったのと、先住猫コロンも相棒がほしいかなと思いお迎えしました」
――来たばかりの頃の福寿くんはどんな猫ちゃんでしたか。
「とってもやんちゃさん。1カ月のトライアルで小さい体で私の太ももにかみついてきたり。また自分よりも体の大きかったコロンに飛び掛かったりしていました」
――変化があったそうですが。
「はい。体重が10倍以上増えて今は6キロに。とっても体が大きくなったんです。体長は60~70センチほど。抱っこするとずっしり重い。まるでヤマネコのような獣が家にいる感じですね。こんなに大きくなるとは思いませんでした!」
――当時500グラムもなかったとのことですから…もしかすると、大きくなる長毛のノルウェージャンフォレストキャットの血が混ざっているかもしれませんね。
「そうですね。ライオンのたてがみのように長毛で。また来た日からご飯をモリモリ食べていましたし…今も朝昼晩と3食しっかり食べています」
――いつ頃から大きくなってきた?
「来てから半年近く経った昨年冬頃ですね。ぼんぼりのようなしっぽがみるみる大きくなってきて…その時、大きくなりそうと思いました」
――大きくなった福寿くんはコロンちゃんの倍近くの大きさになっているようですが、ふたりの仲はいかがでしょうか。
「元地域猫のコロンは10歳以上のシニア猫。福寿からちょっかいを出して一時はもみくちゃになるくらいの取っ組み合いもありましたが、今では背中合わせでお尻とお尻がくっつくくらいの距離感で寝ていることも。ただコロンは穏やかで一匹オオカミ的な子なので、やんちゃな福寿に戸惑っているかもしれません。私たち家族は、いつになったらふたりは添い寝したりスリスリし合ったりするのかな…と、見守っている最中です」
――福寿くんをお迎えしてお子さんたちは?
「子どもは、中1の長女、小6の長男、小3の二女3人がいます。みんなかわいがっていますが、特に長男が弟ができてうれしいと言っていました! 私も猫がいることが一番の癒しですね」
福島で保護された時は手のひらに収まるほどの小さな猫ちゃんだったという福寿くん。現在1歳半くらいですが、先住猫のコロンちゃんを追い抜いて大型猫に変身しました。田中さんによると、「これからも大きくなりそう」とのことです。