7月6日に傘寿(80歳)を迎えた吉本新喜劇のレジェンド的存在、池乃めだかさんが9月19日から1週間、なんばグランド花月にて史上最年長座長公演「吉本新喜劇/池乃めだか傘寿記念公演」を行うことに。公演について話を聞いた。
――80歳を迎えられて、いかがですか?
池乃:実は今年の2月に脳梗塞になってね、正直、この夏はしんどかったですわ。特に歩くのが大変でね。
――脳梗塞ですか!
池乃:なった時にわかりました。あ、これ脳かもって。布団に入って寝ようかなと思ったんですけど、なかなか寝付けなくて、ちょっと体を動かして疲れさせたら眠れるかなと、腕立て伏せを20回くらいやったんです。それでいい具合に体も温まってきたし、そこに焼酎の水割りでも少し飲んでみよかと枕元に置いてあった焼酎を取ろうと肘を支点にして寝返りを打とうかなと思ったら、左手がジーンって痺れ出してね、“なんやこれ!右手はなんともないし……これは脳と違うかな”っておもたんですが、そのまま寝たんです。
ーー……朝目覚めたときは
池乃:それで朝普通に起きて、舞台の出番があったので、この出番終わりで病院に行ってMRIを撮ってもらおうとしてたんですけど、予約が取れずで3日目にやっと予約が取れたので病院に行って、しばらく待ってたらお医者さんから「脳梗塞です」と。やっぱりそうかと思いつつ、これから舞台あるんですけどって言うたら、「何を言うてるんですか!このまま入院していただきます」って言われて、そのまま2週間入院しました。
ーー診断の結果は
池乃:運よく症状が出たところが言語を司る部分から2~3ミリずれてて、おかげで言葉に障害が残るってことはなくて今に至るですわ。とはいえね、入院してるから筋力が落ちてる、だからリハビリは必要ということで色々とやってるんですけど、どうも怠けてしまいがちで……。
10年ほど前は、万歩計持ってね、それこそ1万歩を目指して歩いてました。けどある時「実は1万歩も歩かんでええらしいよ。歩き過ぎても良くないらしいから、8000歩くらいがいいねんて」って嫁さんから言われて、8000歩にしたんです。でね、またそっから2~3年してから、嫁さんが「ほんまは6000歩くらいでええらしいわ」って(笑)。それで、脳梗塞になるまで、毎日6000歩を目標に歩いてたんですけど、今はその歩数までは難しいですけど、時間をかけて、一歩一歩踏みしめて歩けるとこまで歩いてます。
――新喜劇に入って今年で47年だそうですが。
池乃:海原かける・めぐるで漫才を8年くらいやって、解散。で、33歳で吉本新喜劇に入団しましたけど、最初は背が小さいからオッサンやのに子役ばっかりでね、辞めることばっかり考えてましたわ。それが(間)寛平ちゃんと絡み出したりして、そこからだんだん役が大きくなってきました。
そういえば、BSよしもとで昔の吉本新喜劇が放送されたのを見た時、こんなに舞台で動いてたんか!?ってびっくりしてね。ましてや寛平ちゃんとのやりとりなんて毎回どんな風に絡んでくるかわからんから、真剣勝負でしたもんね。おかげでしょっちゅう青アザができてましたわ。
――そんな経験を経て、新喜劇から学んだことはなんでしょうか?
池乃:やっぱりね、客席に座ってるお客さんからの空気ですね。毎日、毎回反応が違いますから。その空気を感じ取りながら自分が笑いに変えられるか。海原やすよともこちゃんらのおばあさんでもある、漫才師の海原小浜師匠についていた時に「下ネタはあかん、それから楽屋でおもろい奴は、舞台ではおもろない」って言われた事が、ずっと頭にあって、それは新喜劇に入っても意識はしてましたね。寛平ちゃんとのサルとネコの絡みの時は別として(笑)。下ネタって基本受けて当たり前じゃないですか、でも芝居の中で安易にそれをやって、受けへんのを過去何遍も見てきました。まぁそれが一番カッコ悪い。だから自分はやらない。あと、芝居の中でお客さんをいじること。これは簡単そうに見えるけど、その場で受けても、次、芝居に戻すのは大変ですから。やっぱり僕は芝居の中から生み出される笑いというのが凄いし、かっこいいと思います。
――めだかさんもたくさんの芝居の中から生まれたギャグがありますからね、寛平さんとのサルとネコはもちろん、セリフが途中から外国映画の吹き替えになるのも。
池乃:寛平ちゃんとのサルとネコが出会って、じゃれたりケンカしたりするのも芝居の中で偶然生まれて、何度もやっていくうちに膨らんでいったって笑いですね。とはいえ、もう今は寛平ちゃんにはやらへんって言うんですけどね、向こうはまだまだ元気やから(笑)。
外国人の吹き替えの笑いも、昔の洋画を見てたら二枚目の吹き替えって、キザで独特の節回しで好きやったんですよ。そういうかっこいいのを僕がやったらギャップがあって面白いんちゃうかなって思いついて、芝居の中でやってみたらこれが受けてね、それが回を重ねるごとに膨らんでいったという感じで、それが今もこうやって舞台でできて受けるとやっぱりうれしいですわ。
――そんなめだかさんが、いよいよなんばグランド花月で座長公演をされますが意気込みはいかがですか?
池乃:引き受けたからには、最後の舞台やという気持ちで、しっかり努めさせてもらいますし、来ていただくお客さんにはしっかり笑っていただきたいなと思ってます。今回は座長の酒井藍ちゃんが台本を書いてくれることになりまして。僕は、親代わりに孫の藍ちゃんを育ててるおじいちゃんの役。そんな僕が第2の人生というか老いらくの恋を意識するのを藍ちゃんが応援してくれる中で色々と騒動が起きるって話で、彼女は人情もんが好きやから、最後はほっこりさせてくれるもんにしてくれるでしょう。
それとね、今回のためになんとかキーホルダー(しばし資料を読む)あ、アクリルキーホルダーとか、クッションストラップでしょ、クリアファイルとシールのセットとかを販売もしてくれるみたいで。80にもなって恥ずかしいんやけど(笑)。
とはいえ、あと3年したら新喜劇生活も50年を迎えますから、ま、最後の舞台やという気持ちでって言いましたけど、やっぱり先の目標を持って今回の公演に挑みたいなと思いますんでぜひ劇場に来たってください。
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「吉本新喜劇/池乃めだか傘寿記念公演」
9月19日(火)~9月25日(月)
出演/池乃めだか、酒井藍、内場勝則、諸見里大介、末成映薫、浅香あき恵、吉田ヒロ、烏川耕一、千葉公平ほか
https://shinkigeki.yoshimoto.co.jp/stage/detail/181
※通常のなんばグランド花月公演の中の吉本新喜劇に組み込まれています。