インボイス中止・延期を求める緊急会見に大手メディアずらり これまでの“無関心”から一転…「ようやく実感が」「もっと報道を」

黒川 裕生 黒川 裕生

インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称「STOP!インボイス」)が、10月の制度開始まで1カ月を切った9月4日、インボイス制度導入の中止・延期を求める緊急提言を発表しました。「弱い立場」にある免税事業者だけでなく、「この国で生きるすべての人」に大きな影響が及ぶ「悪法」である、などとするこの提言には36万筆以上のオンライン署名のほか、120人の著名人や識者、51の各種団体からも賛同が寄せられるなど、大きな話題を集めています。

1年以上前から粘り強く反対の声を上げ続けてきた同会メンバーらは同日、財務省など国の担当者に署名と提言を提出した後、衆議院第一議員会館で記者会見を実施。これまで大手メディアからはほとんど“スルー”されていたという同会の活動ですが、この日の会場にはNHKや民放テレビ各社のカメラもずらりと並びました。

会見では、STOP!インボイス発起人でライター・編集者の小泉なつみさんが「私たちの強みであるオリジナリティの芽を摘み、煩雑で生産性のない作業で現場のモチベーションを落とす」「仕事と生活を守ってくれる安心感も、経済的成長を後押ししてくれる仕組みも、個人情報が守られる安全性も、免税事業者への尊厳も欠けている」などインボイス制度を批判。「呼び掛けに応えてくれた人たちの思いと共に緊急提言を発表したい」と力を込めました。

年間の課税売上高が1000万円以下で、納税義務が免除されている免税事業者がインボイス制度に反対の意見を表明すると、「益税」「着服」といった心ない中傷を受けることが少なくありません。会見ではこうした言葉について、安倍内閣の内閣官房参与を務めた京都大学大学院の藤井聡教授が「そもそも制度がきちんと理解されていないことから生まれる勘違いだ」と断じた上で、「インボイス制度は増税であり、経済状況が極めて苦しい今のタイミングで導入すべきではない」などと話しました。

このほか、企業の経理業務担当者の88%が「インボイス制度は導入すべきではない」「延期すべき」と答えた意識調査の結果も紹介されました。自由回答では「不安しかない」「制度が複雑怪奇すぎる」「システム改修が追いつかない」「助けて」など、強い不安感や危機感をにじませる声が多数。会場では物流や農業、建築業など多様な業界の当事者が、インボイス制度への懸念を表明し、農民運動全国連合会会長の長谷川敏郎さんは「農家の9割は売上1000万円以下。インボイス制度は小さな農家潰しで、農家いじめだ。絶対にやめてほしい」などと訴えました。

今回の会見で注目度が急激に高まったことについて、STOP!インボイスのメンバーらは「(制度の)開始直前になって『インボイス』のお知らせが届いたり、会社で勉強会が開かれたりするなど、現場で働く皆さんにも実感が伴ってきたこと。そうして制度を知って危機感を抱いた方が実際に署名を広げてくださったことで、36万筆超の声が集まったと思います」とコメント。その「数」の力もあって、反響はかつてない大きさになり、手応えも感じているそうです。

一方で報道量は「まだ足りない」として、「特に今回のように長めの説明や解説が必要な複雑な問題を扱う枠がない。日本の報道の劣化を激しく感じます」と指摘。「インボイス制度はすべての人に影響がある『消費税の増税』です。ぜひもっと取り上げてほしいと思います」と要望しました。

・STOP!インボイスのXアカウント→ @STOPINVOICE

・署名サイトは こちら

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