精神科医で作家の樺沢紫苑(かばさわ・しおん)さん。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(45万人)、メルマガ(12万人)など累計90万フォロワーに向けて情報発信をしています。これまでの著書の累計発行部数は230万部に上ります。
そんな樺沢さんが「これからの生き方として、賢く健全に過ごすためには何をすべきか」を紹介した一冊を刊行しました。『精神科医がすすめる これからの生き方図鑑』樺沢紫苑・著(光文社刊)という本です。
これまでの生活で疲弊し、先行き不安な人にこそ読んでほしい一冊で、精神科医としての知見や経験から導き出された法則をもとに「これからの生き方のススメ」が47の項目にわたって紹介されています。「図鑑」というタイトルですが、これは「これからの生き方のススメ」をより伝わりやすくなるようイラストで紹介しているためで、体裁はやはりあくまでも「これからの生き方に、どうあるべきか」を説いた一冊です。
項目すべてのタイトルにある「これからは、」
本書は「幸せ」「成長」「自分も人も伸ばす」「メンタル」「健康」といったテーマによる5章立てで構成されており、それらに準じた「生き方のススメ」「考え方」の項目全てに「これからは、」というタイトルがつけられています。それらを一部羅列してみます。
■これからは、悪口を言わない
■これからは、職場の人間関係を深めない
■これからは、『タイパ』よりも『脳パ』を重視する
■これからは、気が利く人になる
■これからは、脳疲労に気をつける
このうち、特に気になった「これからは、悪口を言わない」と「これからは、職場の人間関係を深めない」を次に抜粋して紹介します。
批判傾向が高いほど、認知症リスクが高まる
■これからは、悪口を言わない
人に対する悪口はストレス発散にはならず、逆にストレスホルモンが分泌されます。
<中略>
東フィンランド大学の研究によると、世間や他人に対する皮肉・批判度の高い人はそうでない人に比べて認知症になるリスクが3倍も高い結果となりました。批判的な傾向が高ければ高いほど、認知症のリスクが高まる傾向があるのです。
そう言われてもピンと来ないかもしれませんが、1日に41本以上のタバコを吸うヘビースモーカーの場合、認知症発症のリスクは約2.1倍にまで高まります。つまり、悪口はタバコの害以上に脳にダメージを与えることになるのです。
悪口を言い続けると、コルチゾールが脳内で過剰に分泌され、記憶の保存に関わる海馬の神経や前頭前皮質のシナプスのつながりを40%も破壊するといいます。(本書より)
「読めば必ず人生が良い方向に変わります」
古来から伝わる「人の法則」を、現代のシーンにアレンジし、さらに樺沢さん自身が持つ知見、経験と合わせて紹介している本書。ある意味ではメソッド集として読むべき本なのだと思いますが、その全てが樺沢さんの丁寧かつ細やかに綴られていることから、読んでいると気持ちがスーッと楽になるような癒しの効果があるようにも思いました。
本書の担当編集者に聞きました。
「精神科医の観点で、心や体の健康についての情報を毎日積極的に発信している樺沢さんに、週刊誌『FLASH』(光文社)での連載をお願いしました。本書は、その連載記事を加筆修正してまとめたものです。連載は2年4か月にわたりましたが、週刊誌なので、取り上げるネタはなるべくタイムリーなものをお願いしました。ただ、それをそのまま単行本に載せると、読む人に古い印象持たれかねないので、それを念頭に加筆修正には時間をかけてもらいました」(担当編集者)
人が生き、生活をしている以上、避けられないストレスや障壁。そういった際のつまずき、悩み、不安などを前提に、「これからはどういう思考にし、どうやって生きていくべきか」を丁寧かつわかりやすく解説した本書。将来、仕事、健康などにおいて、なんらかの悩みを抱える全ての人に読んでほしい一冊です。