実際のところは? 金沢市に聞いてみた
北陸地方の意外な看板事情について紹介したタイムマシンさん。ツイートのリプ欄にも、多くの意見や指摘があがっています。
そのような多くの声がありましたが、実際のところはどうなのでしょうか?金沢市 都市整備局 景観政策課にお話をおうかがいしました。
前提として、屋外広告物に関する条例は、『良好な景観の形成及び風致の維持』『公衆に対する危害の防止』の目的から、全国の自治体で制定されています。しかし、それぞれの条例で定める基準や内容については、各自治体の考え方や住民ニーズにより異なり、一様ではありません。
そのうえで、金沢市ではどのような考えのもと、どのように取り決めを行っているのでしょうか。
まず、スーパー等でこのような看板の設置方法が取られている理由について。実際に、景観条例の対策のために行われていることなのでしょうか?お聞きしてみたところ、このような回答でした。
「企業それぞれのお考えは分かりかねます」(担当者)
また、「豪雪対策や北陸新幹線の景観を意識しているのでは」という指摘については、「(金沢市は)豪雪地域というわけでもなく、(ツイートの写真に写っているお店は)新幹線の路線からも離れた店舗のため、関係性は薄いのでは…」とのことでした。
「ただし、金沢市も2015年の北陸新幹線金沢開業時には、新幹線沿線に野立て看板が乱立しないようにするための区域変更を行いました。また来春の金沢~敦賀駅間の開業に向けては、石川県が同様の区域指定に加え、建築物を対象に白山眺望景観を保全する区域変更も行ったところです」(担当者)
やはり、北陸新幹線と地域の景観保全の取り組みには、相関関係がないわけではないようです。
『景観は一日にして成らず。』
さらに担当者は、金沢市の景観保全についての考えや方針についても、お話してくださいました。
金沢市は、400年以上にわたり加賀藩由来の城下町のまちの形が残り、1968年に全国初の景観条例(金沢市伝統環境保存条例)を制定した街でもあります。
特色としては、行政が一方的に条例をつくるのではなく、市民と地域が一丸となりながら、景観まちづくりを進めていることが挙げられるそうです。広告物などの制限についても一様ではなく、歴史的まちなみ地区、住宅街、繁華街など地域特性に応じてきめ細かいエリア設定を行っているといいます。
さらに、条例については、そのときどきの状況に応じ、常に見直しや変更が行われているとのこと。これまでの見直しのなかには、今回のツイートで紹介されたような、窓ガラス越しに屋外の人々に向けられた広告に関するものもありました。
「(このような広告物は)以前から郊外部にはあったものの、近年ではまちなか区域(=旧城下町区域)にも散見されるようになり、市民や経済団体から対策をとの声が寄せられました。そこで、屋内も屋外も共通ルールで一体的に景観誘導しましょう、という条例改正を2022年に行いました」(担当者)
改正後5年間は経過措置があり、看板の設置事業者や設置を検討している事業者から相談が寄せられたり、該当する看板の撤去支援の補助金制度なども設けられているとのこと。また、本改正はまちなか区域を対象としてのものであり、ツイートで紹介されているような郊外部には該当しません。
「金沢市では、観光地として注目されるよりずっと前から、景観保全に取り組んできました。『景観は一日にして成らず。』とよく言われるところで、景観は、本市の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等とが調和することにより形成される“市民共通の財産”と考えています。景観政策は“観光”のためでなく“まちづくり”です」
担当者は、まちの景観保全について、このような思いを語られました。
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私たちが普段から何気に見ている街の風景。しかし、そこにはその地の伝統や地域柄の事情、住民の方々のニーズ、政策を担う自治体の考えや思いなど、さまざまな背景が存在していました。
そのようなポイントに注目しながら、街の昔ながらの風景を眺めてみるのも面白いかもしれませんね。
タイムマシンさんは、今回の北陸の風景も含め、そんな全国各地の“昭和”の風景を多数公開されています。その理由や魅力に思う点について、このように語られました。
「昭和の時代には今よりも個人商店やローカルチェーンなどが賑やかで、街中の風景に個性があったと思います。その痕跡を探す視点で日々街を観察しています。全国どこへ行っても同じように見えるチェーン展開の店舗でも、実は創業初期からある歴史ある店舗だったり、今回のように地域の特性に合わせてアレンジされていたりと、実は個性があるところに魅力を感じています」(タイムマシンさん)
■タイムマシンさんの(Twitter改め)「X」はこちら
→https://twitter.com/timemachine1983
■金沢市の「金沢市屋外広告物ガイドライン」はこちら
→https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/71/sign_guidelinesR5.pdf