「水樹奈々の歌みたいなルビふりやがって」と、Twitterに投稿したのは、sin8さん(@itashikayushi8)。川沿いの立て看板をふと見ると、独特なルビが振られているのを発見しました。投稿は7万近くのいいねが付く話題となりました。
立て看板があったのは、瀬田川沿いにある「立木観音(立木山安養寺)」の入り口の前。瀬田川は、日本一大きな湖といわれる滋賀県の琵琶湖から流れている川です。
「この貯水池の水位は、発電のため、変動があって、危険ですから十分御注意下さい」と注意喚起がされています。
ですが、ところどころに振ってあるルビを見ると、“変動(あがりさがり)”、“危険(あぶない)”、“十分御注意(よくきをつけて)”と、本来とは違う読み方で書かれています。
また、水樹奈々さんといえば、声優業の傍らその卓越した歌唱力も注目され、紅白歌合戦の出場歴もあるなど、誰もが認めるアニソン界のトップシンガーの一人。「黒天(まよなか)の蒼に溶けて」、「遠くで煌めく希望(あさ)に怯えずに」、「情熱よりアツイ体温(ねつ)」など、独特な詞の紡ぎ方で世界観を表現することでも有名です。
確かに、この立て看板のルビの読ませ方、水樹奈々さんの歌詞にも似ていますね。
河川の注意書きについて、アニソンという意外な方向から喩えたsin8さん。ツイートのリプ欄でも、たくさんの反響がありました。
「水樹奈々さんの文字変換は独特ですね」
「注意看板のかがみ」
「なんか少しエモい訳だなぁ…」
「先月、喜撰山ダムのダム湖で同じ看板に引っかかっりました」
「奈良公園の看板には(鹿の)発情期 と書いて、『きのあらくなるとき』とルビが振ってありました。30年以上前の話です」
水樹奈々さんについての感想、別の場所で同じ看板を見たという声、似たような表現をしている看板を見たことがあるという人など、さまざまなコメントが寄せられています。
さらに、「子供が読めるように配慮してるんですね!」「外国からの労働者にもありがたいと思います」など、このような表現がなされている理由について言及する方もいました。
sin8さんに聞きました。
――看板を見つけた時の感想は?
sin8さん:深い事は考えずに「面白いなぁこれ!」、ただそれだけでした。
――水樹奈々さんに喩えられたのは?ファンですか?
sin8さん:特別ファンというわけではないですが、好きな曲はあります。あと、知名度が高く、歌詞の中で独特な表現をされることも知っていましたので、ツイートで引用した次第です。
――リプ欄には「子供や外国の方への配慮なのでは」という意見もありましたね。
sin8さん:注意書きを見た当初は「おもしろい!」としか考えていなかったのですが、そのような指摘を受けて、より多くの人に大切なことを伝えるための本当に素晴らしい取り組みなのだと知ることができ、良い機会になりました。
――他にもこのようなルビがふられた掲示物などを見たことは?
sin8さん:コンビニトイレの自動照明の説明で、ルビが「ついたりきえたりします」ってのがあったなぁ、と。
ルビ振りについての具体的な意図やルールは? 関西電力に聞いた
ユニークなルビの振り方。リプ欄のコメントにもあった通り、それには「子どもなど漢字の苦手な方にも分かりやすいように」という配慮があるのかもしれません。
実際、どのような意図をもって、あのようなルビは振られているのでしょうか?また、注意書きを作成する際のルールなどはあるのでしょうか?
看板の管理をされている関西電力に聞きました。
――看板に本来の読み方とは異なるルビをふるのには、どのような理由があるのでしょうか?
担当者:放流による危害を防止するために掲示する立札には、川遊びする小学生など、河川を利用する方に分かりやすい立札とする必要があることから、本来の読み方とは異なるルビを使用することがあります。ルビの振り方について取り決めはありませんが、『ダム管理例規集(R3年度)』という書籍で、国土交通省による「わかりやすいダム放流警報立札『参考事例集』」が掲載されています。
――行政の方針のもと、事例なども参考にされながら文言を作成されているのですね。他にも、御社が立てられた看板で、このようなルビが振られているものはありますか?
担当者:放流警報立札で「上流(かみのほう)」とルビが振られているものがあります。
――また、今回Twitterで話題となった立て看板ですが、複数の目撃例が報告されています。付近にはどのくらい立てられているのでしょう?
担当者:瀬田川沿いなど、一般の方でもわかる範囲で同様の看板が33枚設置されています。
◇ ◇
担当者によると、今回の注意書きの看板は、瀬田川沿いや喜撰山ダム・天ケ瀬ダムの近辺など、さまざまな場所に設置されているとのこと。
ルビの面白さが話題にはなりましたが、その本質には多くの人に公平に適切な情報が伝わるように――という配慮がありました。その点について、ツイ主であるsin8さんは、「やさしい日本語、広く多くの人を意識した表現の大切さが広まるとうれしいです」とコメントをされています。
また、後日sin8さんは天ケ瀬ダムにも感謝の訪問。「無茶苦茶カッコよかったよ!」と感動のツイートをされました。
■sin8さんのTwitterはこちら
→https://twitter.com/itashikayushi8
■関西電力のホームページはこちら
→https://www.kepco.co.jp/