覚えのない通知番号から、「営業」や「アンケート」の電話がかかってくることがある。個人の携帯電話や固定電話であれば、登録番号以外からの通知は無視、もしくは着信拒否設定で対処できるが、仕事などで無視できない場合、かけてきた相手や用件を確認する必要が生じる。
このランダムにかかる電話によって、誰かの命が危険にさらされることもあると、医師が警鐘を鳴らす。
「本日21時ごろ、私の院内PHSに非通知で『世論調査の電話』をしてきた方へ」と、Twitter(現:X)に投稿したのは、産婦人科専攻医、ゆくし医さん(@NuclearFlower)。詳しく話を聞いた。
妊婦や新生児の「命」を危険にさらす「無作為な電話」
「このPHSには、緊急で診察や治療が必要な地域の妊産婦さんに関する連絡が来ます。その中には、5分電話が繋がらないだけで、お母さんや赤ちゃんの生命に直結するような状況もあります。政治家ではないただの一国民の私に、電話番号非通知で『衆議院が今解散したらどう思うか』を聞くことは、地域のお母さんや赤ちゃんの命を危険にさらしてまで行う価値のあることですか?よく考えて下さい。そしてもし万が一、少しでも良心の呵責があるならば、私や私以外の病院職員に、院内の連絡網を使って夜間に同様の行為をすることを直ちにやめてください」
そうツイートした、ゆくし医さん。その投稿には、<一般的な世論調査は、RDDと呼ばれる方式でランダムな電話番号に電話をかけているため、医療従事者を含めた労働者の携帯電話・PHSが対象になってしまうことがあります>というコミュニティーノートがつけられたが、ゆくし医さんは、「非公開であるはずの番号にも無作為に電話がかかること」自体に問題があると投稿。
実際、世論調査のバイトをしていた方からのリプライによると、消防署のホットラインなどにも「ランダムにかかる」ことがあるという。
「世論調査は大抵RDD(ランダムに電話をかける方式?)なので、私の院内PHSに繋がったのは偶然かもしれません。ただその『ランダム』で病院のホットラインが遮断され、その影響下にいた人の健康や生命が脅かされ得るというのは、いかがなものかと思います」
命に関わる連絡も入るこの番号に「2度とかけないで」
この日、当番だったゆくし医さん。その院内用のPHSに非通知電話がかかってきたのは、仮眠を取っていた午後9時頃だったそうだ。
「眠っていたところ電話が鳴り、飛び起きました。『当番の○○です!』という私の言葉に返答はなく、自動音声らしき声で話し始め、『この世論調査では衆議院の…』と聞こえた時点で、『2度とこの番号にかけないでください』と言って切りました」(ゆくし医さん)
ゆくし医さんによると、通常、院内用のPHSにかかってくるのはほとんどが内線。ただし、例外もあるのだという。
「外線の場合は病院の電話交換を通した電話になりますが、稀に外線から直接、他院のドクターから相談の電話などがかかってくることがあります」(ゆくし医さん)
ERのホットラインにも自動音声の電話が!
今回の投稿には、ゆくし医さんと同様に、ランダムにかかる電話に困惑する救急外来の医師や看護師、介護関係者などからのリプライも殺到した。
「ER看護師ですが、ホットラインに自動音声でかかってきました。もしその時、同時にかかってきていた電話が取れなかったことで、患者が致命的な状態になった場合、責任は取れるのでしょうね?と思うのですが、非通知なので文句も言えずすぐ切りました」
「うちの病院の一部の電話は番号が連番なのですが、選挙前に某候補者本人の声のメッセージが自動で流れる電話が院内の電話に次々とかかってきて、ついには救急隊からのホットラインにもかかってきて大ひんしゅくでした。こういう自動音声はやめて欲しい」
「介護施設で働いてますが、施設で使うPHS(外部の発着信不可)に突然非通知でかかってきてビックリしたことが最近あります」
「救急外来に勤めてますが、マンションの宣伝かなんかで医師をターゲットに電話をかけてくる人がいます。忙しい時だとかなり腹が立ちます。こちとら目の前に死にそうな人がいるのに」