結成30年…第一線を走り続けるロックバンド、サニーデイ・サービス 熱狂、突然の解散、再結成、メンバーとの死別 そして「今日もどこかのステージに」

黒川 裕生 黒川 裕生

1995年発売の1stアルバム「若者たち」、続く96年の2ndアルバム「東京」で当時の音楽ファンを熱狂させた3人組ロックバンド「サニーデイ・サービス」。結成から30年を経た今も、ロックやフォーク、ヒップホップなど多彩なジャンルを軽やかに横断しながらシーンの最前線に立ち、全国のライブハウスやフェス会場などで瑞々しい音を鳴らし続けている。突然の解散、ソロ活動、自主レーベルの設立、再結成、メンバーとの死別、新メンバー加入…と決して平坦ではなかったバンドの歩みと現在地を描く映画「ドキュメント サニーデイ・サービス」が7月、劇場公開された。神戸の元町映画館では、公開初日の7月22日、ボーカル/ギターの曽我部恵一さんと、監督のカンパニー松尾さんが舞台挨拶に立ち、制作の経緯などについて語った。

サニーデイ・サービスの「現在地」

サニーデイ・サービスは1992年結成。95年から曽我部さん、田中貴さん(ベース)、丸山晴茂さん(ドラム)の3人体制となった。2000年に一度解散したが、08年に再結成。しかし以前から体調を崩していた丸山さんが18年に急逝してしまう。2020年に新ドラマーとして大工原幹雄さんを迎え、23年現在も怒涛の勢いで楽曲制作、ライブ活動を展開している。

映画はコロナ禍を経たバンドの「今」を軸に、メンバーや関係者のインタビュー、実際のライブ映像などを織り交ぜながら、バンド結成前夜からの歴史を辿る構成。「常に今が最高潮」と言わんばかりのエネルギッシュな演奏シーンやデビュー前の貴重な映像、親しい関係者の証言などもふんだんに盛り込まれ、90年代の“直撃世代”にはたまらない145分間となっている。ナレーションは小泉今日子さん。

元町映画館での舞台挨拶ではまず、曽我部さんが映画制作のきっかけについて語った。

「ドラマーの丸山くんが亡くなったことを受けて、渋谷と恵比寿で追悼ライブを2本やったんです。渋谷は僕と田中の2人で、真ん中にドラムセットを置いて、『残された2人でこれからどういう音楽ができるか』ということをテーマに演奏しました。恵比寿ではこれまでサポートしてくれたミュージシャンを招いて8人編成の大所帯で。その様子を映像に撮って、何となく2本のライブ映像にまとめてみたんです。それを関係者に見せたら『発展させてドキュメンタリー映画にしよう』『監督はカンパニー松尾さんにしよう』という話になり、企画が始動しました」

「カンパニー松尾さんとは1年くらい前に川本真琴さんのMVで一緒にお仕事をしたことがありました。そのときの仕事ぶりを見て、すごく素晴らしい熱意と丁寧さと才能の方だと感じていたので、『カンパニー松尾さんでサニーデイのドキュメント』って仕上がりが想像できないけど、絶対面白いものになりそうだということで進めることになったんです」

ちなみにこの「追悼ライブ」の模様は映画本編でも使われており、最も胸を打たれるシーンのひとつになっている。

カンパニー松尾監督「サニーデイのファンだった」

一方カンパニー松尾さん自身、もともとサニーデイ・サービスのファンだったという。

「お話をいただいて、率直に嬉しかったですね。普段から興味のあることだけを仕事にしてきたので、他のバンドを撮ってくれという話だったら動かなかったかもしれません」

「映画のアプローチはいろいろあると思いますが、僕は『今のサニーデイを見せたい』という思いが強かった。まずは最新のツアーをじっくり見て、足りないものがあれば補足していこうと。バンドの歴史を深掘りすることは当初、全く考えていませんでした」

曽我部さんに「90年代に熱心に聴いてくださっていたのなら、そこにフォーカスする選択肢もあったはずなのに、バンドの今と、この先を予感させる作品になっていますね」と水を向けられたカンパニー松尾さんは「実は長い歴史の深掘りをしようとすると、映像的には大変なんです。過去の素材も豊富にあるので、端的に言うと手数が多すぎるというか(笑)」とぶっちゃけ。曽我部さんからさらに、「でも今のサニーデイがどんな状態かわからないと、何も担保されていないということですよね」と突っ込まれ、「確かに“保険”はないけど、僕はそういう仕事が得意。ゼロからの仕事をずっとやってきましたので」と笑顔で応じた。

2人のトークは次第に「ドキュメンタリー」の方法論の核心に迫る流れに。

曽我部「じゃあ保険はないけど、今のこの人たちを撮ると何か面白いものがあるだろうという予感があったということですか?」

松尾「ドキュメンタリーのせこい法則があって。楽なのは、被写体が勝手に走ること。自分が何もしなくたって、被写体が走る姿さえしっかりあれば大丈夫なんです。被写体が走らないなら逆に自分が走るという手法もあります。例えば、曽我部さんがどういう人なのか、ああでもないこうでもないと、こちら側が考えながら動けばいい。でも今回は『バンド』という被写体がしっかりあるので、全く問題ありませんでした。バンドが現在進行形で走っているならば、撮る側としてはそれに並走していればよかったんです」

「満開の桜の下、曽我部さんがボートに乗るシーンも、サニーデイといえばアルバムのジャケットや曲名で桜のイメージがあるじゃないですか。あんまり言いたくないけど、撮っておけば絶対にどこかで使えるという計算がありました。まあ、卑怯ですよね(笑)」

曽我部さんが言ったように、映画はバンドの「これから」を予感させる映像で締めくくられる。後続の若いバンドにも多大な影響を与えつつ、圧倒的な現役感で決して「レジェンド」枠に収まらないサニーデイ・サービス。曽我部さんは「この先も、バンドは今日もどこかでライブをやっているだろうという映画にしてくださった。本当にその通りで、僕たちはまた曲を作って、いろんなところで歌って生きていくと思います。またどこかでお会いできたら嬉しいです」と会場のファンに呼びかけた。

◇  ◇

「ドキュメント サニーデイ・サービス」は全国の映画館で公開中。

https://films.spaceshower.jp/sunnyday/

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