徳川家康の洛中邸宅跡を示す石碑と説明板が、京都市上京区の佐々木酒造の敷地内に登場した。同社は、家康とは浅からぬ因縁のあった豊臣秀吉の居城にちなむ銘柄の日本酒「聚楽第」を醸し、ドラマで秀吉を演じたことがある俳優・佐々木蔵之介さんの実家でもある。なぜここに家康の石碑が? 石碑には蔵之介さんも驚いた奇縁が刻まれている。
石碑は、歴史の研究者や愛好者でつくるNPO法人「京都歴史地理同考会」(中京区)が設置した。2008年から京都市内などの旧跡に建てており、19本目。高さ1・1メートルで、「聚楽城武家地 徳川家康邸跡」などと正面に刻む。
6月下旬に除幕式があり、同考会理事長の中村武生・京都女子大非常勤講師(55)があいさつ。秀吉に従っていた頃の家康は「聚楽第南側のこの辺りに巨大な屋敷を構えていた」と解説した。
立ち会った佐々木酒造社長の佐々木晃さん(53)は「『秀吉の聚楽第』の印象が強くて、家康邸跡とは思いもしなかった。兄(蔵之介さん)に話すと、『ほおー』と驚いていましたよ」という。
石碑の右と左の側面には、江戸時代に京都所司代の千本屋敷となり、幕末は北隣に幕府若年寄・永井尚志の邸宅があったとの史実も記す。中村さんは「永井邸には新選組局長の近藤勇が撃剣の指導に来たほか、坂本龍馬が殺害される4日前に訪問している」と逸話も語った。