京都産の酒米「山田錦」を救え、クラファンに注目 実施の佐々木酒造は人気俳優の実家としても有名

浅井 佳穂 浅井 佳穂

「京都の酒米農家や日本酒文化を守りたい」。京都市中心部にほど近い酒蔵が、京都産の酒米「山田錦」の生産を守るため、クラウドファンディング(クラファン)を実施しています。クラファンは開始4日目で当初目標の150万円に到達するなど、インターネット上で注目されています。

 酒蔵は、1893(明治26)年創業の佐々木酒造(京都市上京区)です。「古都」や「聚楽第」などの銘柄の日本酒を醸造しているほか、俳優・佐々木蔵之介さんの実家が営む酒蔵としても知られています。

 佐々木酒造が手掛ける銘柄の中でも、高級酒の「聚楽第 純米大吟醸」は、京都府亀岡市の契約農家が育てた「酒米の王様」山田錦を使ったこだわりの逸品です。佐々木晃社長(51)は「鑑評会(コンテスト)で金賞を取ろうと思うなら、山田錦は外せません」と語ります。

 しかし、そんな老舗の酒蔵も、昨年以降の新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けました。飲食店向けを中心に日本酒の販売量が減少。今年も苦戦は続いているといいます。

 悩ましいのは、日本酒の販売量が減っているからといって、契約農家に酒米の作付け面積を減らすよう頼むわけにいかないことです。佐々木社長は「もし、『今年は酒米は要らない』と言うと、農家は酒米の作付けをやめて、食用米の生産に切り替えてしまうかもしれません。そうすると来年以降は京都府産の山田錦を入手できなくなります」と話します。

 そこで佐々木社長が思いついたのが、山田錦を使った特別な純米酒を醸造し、その魅力を知ってもらうことで酒米農家を支えるというアイデアでした。元手になる資金は、同社にとって初めてとなるクラウドファンディングで募ることに決めました。

 特別に造るのは純米酒の「古都 福実鳥(ふくみどり)」。山田錦が栽培されている田んぼには、国の特別天然記念物コウノトリや福を運ぶとされる鳥タゲリなどが飛来するといいます。銘柄は、こうした鳥にあやかって名付けられました。

 コースは4000円、5000円、1万円があり、それぞれリターンとして「古都 福実鳥」が2~4本贈られます。中には高級酒「聚楽第 純米大吟醸」などが付いてくるコースもあります。酒瓶には、寄付者の名前が記された特製ラベルが貼られます。

 7月29日の募集開始以降、佐々木酒造のクラウドファンディングはツイッター上で話題となり、すぐに最高級の2万円のコースが受け付け終了となりました。同社によると、「お酒は飲めないけど、支援をしたい」という声もあり、今後はノンアルコールの商品をリターンにしたコースも設ける考えです。

 佐々木社長は「楽しみながら日本酒文化を守るためにクラウドファンディングに協力していただければ」と話しています。

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