近鉄は280以上の駅を有していますが、この中に駅ではない駅が存在します。何やら近鉄の運賃検索サイトでは駅名がかっこ付きで表示されるとか。早速、調査していきたいと思います。
ホームページで見つけた不思議な表示
近鉄にある「駅ではない駅」は橿原線にある八木西口駅です。早速、近鉄の運賃検索サイトで鶴橋駅から八木西口駅までの運賃を調べることにしました。
すると「八木西口駅」ではなく、「大和八木(八木西口)」と表示されます。大和八木駅は八木西口駅の隣駅にあたり、橿原線と大阪線が乗り入れる主要駅です。
さらに調査すると「八木西口駅を乗車または降車とする運賃は、大和八木駅を乗車または降車とする運賃と同額」という文言を見つけました。ようするに「八木西口駅は大和八木駅の一部」という解釈です。
もともとは八木西口駅が本家だった
実際のところどうなっているのか、八木西口駅まで行ってみました。大和八木~八木西口間は400mほど離れていますが、八木西口駅ホームの先端からは大和八木駅を確認することはできませんでした。
左に分かれる線路は橿原線~大阪線間の連絡線です。この連絡線を走る定期列車はなく、団体列車が走る程度です。
一方、駅名標は通常のものと何ら変わりはありません。駅のナンバリングもきちんと与えられています。
駅舎は大和八木駅と異なり、小じんまりとしています。八木西口駅には急行と普通が停車します。
もともと、1923年に畝傍線(橿原線)が開業した際、現在の八木西口駅付近に八木駅が設置されました。1925年、大阪線大和高田~八木間が開通し、大阪線も乗り入れました。先述した橿原線~大阪線間の連絡線はもともと大阪線だったのです。
しかし、大阪線が八木駅から桜井駅へ延伸する際に直線ルートを採用することに。1929年、大阪線と橿原線の交差地点に(新)八木駅が開業。1923年開業の旧八木駅は「八木西口駅」に改称され、今日に至ります。
このような歴史的経緯から、八木西口駅は大和八木駅の一部という解釈がなされているのです。
ピンチを乗り越えた八木西口駅
最近まで八木西口駅は存続の岐路に立たされていました。畝傍山の近くに奈良県立医科大学を移転させ、橿原線八木西口~畝傍御陵前間に新駅を設置する計画が持ち上がりました。そこで、近鉄は新駅開業時に八木西口駅を廃止する方針を示したのです。
これに対し、地元住民は反発。最終的に昨年11月に奈良県、橿原市、奈良県立医科大学、近鉄のトップが計画推進の協定を結び、その中で「八木西口駅の廃止を条件にしない」ことが盛り込まれました。
八木西口駅は小さな駅ですが、地元に愛されているからこそ、廃駅を免れたのです。