アニメ「ドラゴンボールZ」 フリーザの声で印象残した中尾隆聖 「あしたのジョー2」カーロス・リベラも

磯部 正和 磯部 正和

 3歳のころから児童劇団で“演じること”をスタートした俳優・声優の中尾隆聖。37歳のときには、「アンパンマン」で、ばいきんまんの声を担当し、その後35年間、ヒールでありつつも、子供たちから愛される個性的なキャラクターを作り上げてきた。「とても大きな出会いでした」とばいきんまんについて語った中尾の、約70年にわたる声のお芝居について聞いた。

人形劇『にこにこぷん』のぽろり役が大きなターニングポイントに

 「アンパンマン」の生みの親である故・やなせたかし氏から、オーディションの際、「君がいなかったらばいきんまんは僕がやるつもりだった」と言われたという中尾。さらに、やなせ氏から「世の中は喜ばせゲームだから、人を喜ばせてなんぼだよ」と言われた言葉が心に残っていたといい、「とにかく視聴者に楽しんでもらおう」という思いで作品に取り組む日々だったという。

  中尾にとっては、30年以上という歳月に渡って続けてきたばいきんまんは「とても大切な出会いでした」と語るが、ばいきんまんと同じぐらいターニングポイントになった作品はたくさんあったという。

  「なんといってもNHKの『おかあさんといっしょ』という子供向け番組のなかの人形劇『にこにこぷん』でぽろりというネズミの役をやらせていただいたのが大きかった。まずそこが一つの分岐点だったと思います。それも10年以上やらせていただきましたが、次の『ドレミファ・どーなっつ!』にも出演させてもらいました。そのキャラクターと被らないようにということから、ばいきんまんの声が生まれたという意味では、とても大きな分岐点になる出会いだったと思います」

悪役・中尾隆聖を印象付けたフリーザ役

 さらに、ばいきんまんと同時期に、アニメ「ドラゴンボール」でタンバリンを演じていたが、その約2年後には「ドラゴンボールZ」でフリーザ役を担当する。中尾は「フリーザという役も、最初はあんなに長くやる役だとは思っていなかったんです」と笑うと「あの頃は、原作に追いつきながらアニメもオンエアされていったので、あんなに何度も変身するとは思っていなかったんです。『声、どうしたらいいんだ!』なんて言いながら、監督さんと作っていったことを覚えていますね」と懐かしそうに語る。

  フリーザと言えば、“宇宙の帝王”と恐れられるヴィラン(悪者キャラクター)だ。「ばいきんまんはちょっと違うかもしれませんが、結構私のなかで、悪役をやることが多く、しかも人間じゃないようなキャラクターも多かった。フリーザは、そんなイメージを強くつけていただくきっかけになったのかなと思います。ある意味で、“売り”であるわけで、とてもありがたいことですね。悪役だからこそできる表現というのは、やっていて楽しいものなんです(笑)」

「あしたのジョー」カーロス・リベラは大好き!

 ばいきんまんを演じる8年前に「あしたのジョー2」で演じたカーロス・リベラも、哀愁ある人間味あふれるキャラクターだった。中尾は「好きと言ってくださるのはありがたいですね。私にとっても、まさか自分がカーロス・リベラをやらせてもらえるとは思っていなかったんです(1では広川太一郎さんが演じている)。私のなかでも大好きな作品の一つで、『昔は人間もやっていたんですよ』という証になる作品ですね」と笑う。

  またもう一つ、中尾にとって思い出に残っているキャラクターが、あだち充の漫画をアニメ化した「タッチ」だ。「あの作品で、西村勇という主人公のライバルとなる投手を演じたのですが、その十何年後という設定の『MIX』というアニメに同じ役で出演させてもらったんです。アニメというのは基本的に年を取らないという前提があるなか、年を重ねたキャラクターをまたやらせていただけるというのが、びっくりしましたし、とても嬉しかったですね」

  長年やってきたからこそ「タッチ」と「MIX」のつながりに感激したという中尾。声優という仕事も時代にと共に大きく変化してきていると感じているようだ。

  「私たちの先輩が作ってきてくれた道ですが、いまの声優さんは歌ったりステージをやったりというのが当たり前になっていますよね。まあ私たちの時代も、歌ったり踊ったりというのはありましたが、役者が役者として歌えば良かったので、そこまでちゃんとできなくても許される時代でした。でもいまは本当にすごいことを求められるから(笑)。ドラマにも出る方も増えて、今後はさらに声優、俳優という垣根はなくなっていくと思います」

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