「日傘小学生」は当たり前? 教育委員会が推奨、メーカー在庫切れも ネットでは「時代は変わった」の声

金井 かおる 金井 かおる

 6月はじめの晴れた日の午後、兵庫県明石市内で下校中の小学生グループに出くわしました。男女問わず多くの児童が日傘を差しています。昭和世代の筆者が子どもの頃にはなかった光景。小学生の子を持つ知人に尋ねると「今どきの小学生は必須アイテムだよ」。傘メーカーは「この2年ほどで累計販売数は約7000本になります」。日傘小学生の現状を調べました。

SNS「親子で日傘」「時代は変わった」

 ツイッター上での反応を調べると、日傘小学生の目撃情報が投稿され始めたのは2010年ごろから。「えっ、小学生なのに日傘!?」「親子で日傘差してる人いた」「ついに日傘の小学生が」など。2023年に入ってからも驚く人は多く「日傘差して登校してる!時代は変わった」「日傘差した男子小学生とすれ違った」「ランドセルに日傘、すごいなあ」などの声が並びます。

 小学生の日傘使用が加速したのは2020年。背景には、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がありました。

 同年5月、愛知県豊田市にある小学校で日傘を差して登下校を始めたというニュースが注目されました。傘を差すとソーシャルディスタンスが保てると同時に、真夏の登校時の熱中症対策にもなるという画期的なアイデアは、さまざまなメディアでも取り上げられました。

 兵庫県明石市でも同年、市内の学校に向けて、日傘の使用は義務付けていないが、夏場の登下校における熱中症対策として使用を認めるよう通知。

 同市教育委員会によると、今年5月に市内の学校長にあてた通知の中にも「登下校において日傘(雨傘の代用も含む)の使用は熱中症対策として、有効と考えられます。安全に留意しつつ、使用を推奨してください。また、涼しい服装での登下校、首を冷やすタオルの使用等、適宜、学校で指導を行ってください」とあり、引き続き推奨しているといいます。

 埼玉県熊谷市立の小学校では2020年から、熱中症とコロナ対策の両立を目的として、雨傘を活用した「傘差し登下校」を実施。2022年には市オリジナルの晴雨兼用傘を作成し、市内在住の児童に配布しました。「児童の熱中症予防や感染予防に効果を発揮するとともに、児童が日常的に傘を活用することで、市民の日傘利用促進への効果が期待されます」(熊谷市教育委員会)

 中にはこんな例もあります。

 西日本にある小学校では日傘の導入を見送ってきました。理由は日傘の露先が傘を差していない児童の顔に当たる危険があるから。しかし2022年からは一転して使用を許可。保護者には「周囲の安全に気をつけながら使用するよう注意してほしい」と呼びかけています。

2500本→3500本、年々増加する販売数

 「小学生が日傘を持ってもいいんだ」。レイングッズブランド「Wpc.」などを展開するワールドパーティー(本社、大阪市住吉区)の担当者は、前出の豊田市の小学校の取り組みを知り、子ども向けサイズの日傘を即商品化しました。ニュースを聞いた約2カ月後の2020年7月に発売した「日傘 長傘 Wpc. KIDS 遮光切り継ぎキッズ日傘」(全4色、各税込み2860円)。

 子どもが扱いやすい長傘タイプで、透明窓をつけて視界を確保し、露先は丸くするなど安全面にも配慮。子ども向けの仕様ながら、同社が販売する大人用日傘と同じ生地を使用し、「生地裏面に黒色のポリウレタンコーティング加工を施すことで遮熱効果があり、UVカット率、遮光率は全色100%。大人の日傘に劣らない機能性です」(同社広報担当者)。

 通常、大人向けの日傘の販売ピークは4月と6月。同社では子ども用日傘も同じ動きをしているといい、初年度はピーク後の発売ということでわずかだった販売数も、2021年は2500本、2022年は3500本と好調に推移。今年も順調に売れ始め、これまでの累計販売数は7000本に上ります。タイミングによってはオンラインストアの在庫が売り切れになる色も。

 「学校単位のまとめ買いではなく、全て個人の注文です。購入した保護者の方からは『子ども用の日傘はありがたい』といった声が届いています。コロナ禍でのマスク着用による熱中症リスクの高まりという観点からよく売れた印象です」(同社広報担当者)

 担当者は「日傘を差している間は日陰にいることになります。直射日光を受けるより明らかに涼しく快適です。熱中症予防のための水分補給などはかなり浸透してきましたが、子ども用日傘も熱中症対策の一つとして、もっと知ってもらえたら」と子どもたちの熱中症対策の強化に期待を込めました。

     ◇

 ここ数年は、日傘男子なる言葉とともに、日傘を差す男性を多く見かけるようになりました。老若男女関係なく、熱中症予防のアイテムとして広がりを見せる日傘。「日傘小学生」は定着するのか。今後に注目です。

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