ランドセル、店頭にあっても…「ほぼ100%持って帰れないよー!」販売員が注意喚起 入学式前日に来店した家族「受注生産知らなかった」

金井 かおる 金井 かおる

 ランドセル販売員歴10年以上の男性がこの春、売り場で体験したエピソードがSNS上で大きな話題になっています。

「来月入学式なんだけど一番安いのない?」と訪れる客も

 4月初旬、ベテラン販売員「ぱちたく」さんが勤務するランドセル売り場に家族連れが訪れました。お会計後「お届けは今年の後半の…」と伝えると、一家は「えっ?」。小学校の入学式を翌日に控えた新1年生の家族だったのです。最近のランドセルはほとんどが受注生産。入学前年に予約し、手元に届くまで数カ月かかるのが当たり前ですが、一家は「店頭に一年中置いてあるから持ち帰りできると思っていた」。店が緊急用として確保していたランドセルでことなきを得たそうですが、ぱちたくさんのこれまでの経験上でもダントツの駆け込み購入。「帰国組や私立受験などの事情を除いては、ぶっちぎりのギリギリ購入記録更新でした」と驚きます。

 勘違いしていたのはこの家族だけでなく、ネット上には「まじで知らなかった」「1年中あると思ってた」という声も。

 ランドセル売り場の現状をぱちたくさんに聞きました。

──持ち帰りできないと知った家族はどんな様子でしたか。

 「無事に入学を迎えられるのかと不安な様子でした」

──駆け込みで購入する家族は毎年いますか。

 「4月に入ってから買いに来られる方は毎年、5家族ぐらいはいます。3月までさかのぼると30〜40組単位でいると思います。『来月入学式なんだけど一番安いのない?』的な感じでふらっと来られる方もいらっしゃいます」

──全く手に入らないのでしょうか。救済方法は。

 「例えば量販店や百貨店などでは型落ち品のアウトレットや1年間展示したあとの現品処分品が残っていることもありますのでそちらをご紹介します。色やデザイン、価格に選択の余地がない上に、残数も極々少数のため、運次第ということもあります。『本当はこんな色が欲しいわけじゃないけど仕方ないから買わざるを得ない』という人も見たことがあります」

「最初の購入ピークはゴールデンウィーク」

──通常、ランドセルの予約から入手までの期間は。

 「大手メーカーでも工房系でも、受注生産で注文した分だけ作り、春までにお届けというのが標準になっています。早くても数カ月、もしくは年明け3月中にというところがほとんどです。展示会や売場に行ってお金を払ってランドセルを持ち帰るというのはほぼ不可能です」

──販売員の立場から、ランドセルの購入は何月から動き出すのが一番理想的だと思われますか。

 「何月ごろかと言われると難しいところもありますが、今期に限って言えば、2月くらいに大半の会社ではカタログが出来上がり、新作発表などがありましたので、スタートという意味では2月ごろになります。3〜4月には百貨店や量販店、展示会での予約販売が始まる形になります」

──購入のピークは。

 「余裕を持って調べているご家庭はゴールデンウィークに購入されることが多いので、GWが第1ピークと言えそうです。その後、7〜8月には新作の最終ピークになるので、それまでに決めていただければと思います。それ以降は、新作に関しては受注締切になり、市場全体がアウトレットや展示品販売の終盤戦になるところが多いです。一部、工房系と呼ばれるような会社になると、1年前の秋冬頃(幼稚園年中の10月頃)に展示会や新作発表会などの販促活動を始めるメーカーもあるので、『市場にある全てのランドセルから選びたい』となると、2〜3月には限定本数のランドセルは手に入らないこともあります。納期は各社違います。『この月には記念撮影したい』『祖父母や親戚に早く見せたい』など事情がある方は、必ず納期を確認しておいてください」

「今のランドセル市場は昔とは全く違う」

 ぱちたくさんによると、「今のランドセル市場は昔と全く違っている」のだそう。

 カタログのページ数で比較しても、15年ほど前までは大手メーカーでも10ページ未満。それが現在は50〜100ページのボリュームがあり、選択肢が増えていることがうかがえます。

 「今の最上級生くらいの時代まではランドセルの種類も少なく、あらかじめ大量生産してコスト削減し、購入と同時にお渡しできる場所が普通に存在していました。しかし今は、製造メーカーの展示会で100種超並ぶのは当たり前。量販店や百貨店では各社からセレクトしたものを150〜200種類近く並べるところもあるので、受注生産するしかないという現状があります。その結果、お渡し時期が数カ月から1年近くかかることもあります」(ぱちたくさん)

 売り場に立つたびに「ランドセル市場の環境の激変が知られていない」と葛藤していたぱちたくさんは、約2年前から自身のツイッターアカウント(@pachitaku001)でランドセル売り場の最新情報やアドバイスを発信し続けています。「少しでも役立つ情報を発信することで『選んでよかった』『買ってよかった』と思ってもらえたら」と話しています。

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