「そのランドセル、本当に君が好きな色?」ドキュメンタリーCMに反響「泣いた」「考えさせられる」 企画したメーカーに聞いた狙い

小森 有喜 小森 有喜

ランドセル、子供は本当に欲しい色を選べていますかー。「天使のはね」などで知られるメーカー、セイバン(兵庫県)がYouTubeで公開したCMが、SNSなどで「泣ける」「考えさせられる」と話題になっています。CMは約5分で、台本のないドキュメンタリー映像。「子供たち自身が好きな色やデザインを選んでほしい」という思いがこもっています。企画の背景や反響について同社に取材しました。

セイバンの公式チャンネルにアップされたCM「ランドセル選びドキュメンタリー篇」には、7組の親子が出演しています。「これ好き」「かわいい!」。冒頭、ランドセルがずらりと並ぶ店舗を子供だけで歩き回る様子が映ります。色とりどりのランドセルに目を輝かせるほほえましい姿。別室のモニターに映像が流れ、保護者が我が子の様子を見守ります。

選ぶ色について保護者は「汚れが目立たなさそうなベージュ」「みなさんと同じような黒かな、という思いもあったりしますけど…」「ピンクが好きやから、多分ピンクを選ぶと思います」といったコメントをします。

「決まった」「これ!」と指さす子供たち。保護者たちはおおむね予想していた通りの色が選ばれ「やっぱりね」と一様に安堵の表情を浮かべます。が、ここであることが知らされます。実は子供たちが選んでいたのは自分が使いたいランドセルではなく「保護者が選んでほしそうだと思うランドセル」だったのです。

黒色を選んだ男の子は「お父ちゃん、黒が好きなんかなと思ってたの」。別の女の子は「ママはね、ピンクが可愛いっていつも言うし。そう思ってね、それのランドセルにした」。保護者たちは自分の好みを知ってくれているうれしさの反面、複雑な表情を浮かべます。

「次は本当に自分が使いたいランドセルを選んでもらいます」。アナウンスの後、一目散に目当ての色に向かう子どもたち。先ほどピンクを選んだ女の子は「青にした!」、黒を選んでいた男の子は白を選び、また別の男の子は「これがいい」とピンクを選びます。保護者達は「えっ!」「あ、ピンク!?」などと驚きの表情を浮かべつつも「すごいうれしそう…」「気に入ったのをつけてもらうのがいいですね」。その後親子が対面し、ピンクを選んだ男の子のお父さんも「すごいすごい、似合ってるよ」とほほえみます。

「自分で選ぶこと。それは、6年間大切に使うための最初の一歩」「キミが好きなの、キミが選ぼう。」そんなメッセージでCMは締めくくられます。

完全に子供の好みで選んでいる家庭は「23%」

動画は2月1日にYouTubeに公開され、11万回以上再生される大反響。「めちゃめちゃいいCM」「子供は親が望むものをよく見ていると思う」「知らず知らず親に配慮しているのかなと思うと涙があふれた」といったコメントが寄せられました。動画の企画に携わったセイバン広報担当の久保明広さん、舩越瑞枝さんにお話を聞きました。

現在のランドセルの購入時期のピークは入学前年の5~8月。一昔前と比べてかなり早くなり「ラン活」も加熱しています。ランドセル選びが、親が片付けなければいけない「仕事」「課題」のように一部で捉えられているのではないか―。そんな危機感を持ったそうです。

同社は、23年春の入学に向けランドセルを購入した保護者にアンケートを実施。ブランド、色、デザインなどを決める際、純粋に子供の意見だけで選んだ家庭は約23%でした。購入前の保護者へのアンケート結果では「子供の意見や意思を尊重したい」という声が最も多いにもかかわらず、実際に購入するとなるとそれだけでは決められないというのが現実のようです。「親御さんも良かれと思って口を出しているわけなので、気持ちはすごく分かるのですが…」と久保さん。それでも、子供が気を遣って歩み寄っている部分があるのではないか、もっとランドセル選びを子供にとって楽しいものにしたい―。そんな思いからCMの企画が立ち上がったそうです。

収録は昨年12月に大阪のセイバン直営店で行われました。もちろん事前に保護者にCMの趣旨は伝えず、ドキュメンタリー映像として収録したとのこと。参加した親子全員の映像を使っており、決して意に沿う部分だけを取り上げているわけではないそうです。

公開後、これだけの反響があったことについて舩越さんは「完成した映像を初めて見たときにとても感動してしまって…。どうにかして広めたいと思ったからうれしい」と笑顔。久保さんは「ランドセル選びについて大人が議論するきっかけになっているのが何よりです」と話します。

ランドセルは「学校に行くときにいつも見守ってくれる相棒のような存在でありたい」と舩越さん。久保さんは「このCMが、お子さんに少し寄り添うきっかけ、親子でコミュニケ―ションを取るきっかけになればうれしいです」とします。ぜひ、動画全編をご覧ください。

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