宮古島周辺で陸自ヘリ墜落 緊張高まる国際情勢 偶発的な日中衝突はどこまで避けられるか

治安 太郎 治安 太郎

4月6日、陸将など10人が搭乗した陸上自衛隊ヘリコプターが宮古島周辺で消息を絶ち、行方が分からなくなっている。自衛隊は、潜水艦救難艦や300人規模での陸上での捜索なども行っているが、まだ10人の発見には至っていない(4月10日現在)。防衛省はこれまでのところ、発見された機材から総合的に判断し、航空事故との見方を強めている。

一方、防衛省による事故との判断に対して懐疑的な見方も聞かれる。墜落当時は昼間で見通しも良く、天候は全く荒れておらず、最近の点検でも全く異常がなかったことから、事故ではないのではとの指摘もある。そして、当時墜落した現場海域と遠くない場所で、中国海軍の軍艦が航行しており、中国軍の工作員がレーザーやサイバー攻撃を仕掛けたのではないかと疑う声も聞かれる。しかし、これについて浜田防衛大臣は、今回の事故と中国との関係はないと否定的な見方を既に示している。我々はこの問題をどう考えるべきだろうか。

まず、これまでの事実関係を総合的に評価すれば、今回の墜落と中国との関連性はないと捉えるべきだろう。それらを疑って中国に説明を求めれば、それだけで不穏な空気が漂う日中関係のさらなる混乱を誘発する恐れがある。

尖閣諸島では中国海警局による領海侵犯が続いているが、(中国にとって)日本側の根拠のない要請を機に、中国海警局が攻撃的な対応を先鋭化させ、尖閣諸島への上陸・支配という行動に出てくる恐れがある。

また、日本が今月先端半導体の製造装置など23品目で対中規制を発表したことについて中国は強く反発し、高性能レアアース(希土類)磁石の加工技術などの禁輸や輸出制限の強化を検討し始めたが、今後は経済面で圧力を強化してくる恐れも考えられる。中国には依然として10万人を超える日本人が滞在し、日本にとって最大の貿易相手国であり、対中関係では過剰な行動は最大限慎み、常に慎重な行動が求められる。

しかし、今回の出来事をそれだけで片付けるべきではない。今回の墜落が事故だったとしても、中国との軍事衝突の可能性は時間の経過とともに高まっているのだ。当然だが、それを回避するため日中防衛当局の間でホットラインを設置し、危機を回避する努力が必要だが、それは日本周辺で高まる軍事的緊張によって一掃される可能性がある。

4月に入り、中米訪問の帰りにカリフォルニアに立ち寄った台湾の蔡英文総統はマッカーシー米下院議長と会談したが、中国はそれに対して強い対抗措置を見せた。中国海軍の航空母艦山東が台湾南方のバシー海峡を通過し、台湾南東沖を航行し、西太平洋での航行演習を初めて実施した。また、中国軍は10日まで3日間の日程で台湾周辺海域において軍事演習を行い、中国軍機の中台中間線超えなどが相次いだ。これは、昨年8月、当時のペロシ米下院議長が訪台し、蔡英文総統と会談した時と極めて似ており、この際も中国軍は台湾を包囲するように軍事演習を実施し、大陸側からは複数のミサイルが台湾周辺海域に打ち込まれた。

しかし、今回の会談場所はカリフォルニアであり、その背後には中国を必要以上に刺激したくないという台湾と米国の思惑があった。それにも関わらず、中国は昨年8月同様、もしくはそれ以上の軍事的動きを見せたのだ。我々は、台湾統一を掲げる習政権の意思は決してハッタリではなく、いつかは起こるものとして確信する時に来ている。そうなれば、自衛隊と中国軍の衝突は回避できず、今回のような墜落劇がドミノ現象のように生じるシナリオを十分に頭の中に入れておく必要がある。

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