突然、男に突き飛ばされ…全治3カ月のケガも 「ぶつかり男」に泣き寝入りする女性続出「思うツボだから声を上げなくては」

宮前 晶子 宮前 晶子

「友人が、帰宅途中でぶつかり男に突き飛ばされ、右膝蓋骨骨折で全治三か月の重傷を負った。警察は自動車や自転車の事故のように、事件現場に『3月29日@時に黒い服を着た中肉中背の男が女性を突き飛ばした事件がありました。目撃者は警察まで連絡を』と立て看板だしてほしい」

人通りの多い繁華街や駅改札周辺を歩く際は、周囲の人にぶつからないように、肩や腕が触れないように、と気を遣うもの。しかし、故意にぶつかる者も実在します。通称『ぶつかり男』『体当たり男』と呼ばれています。

「肩にカバン担いだ男に、全力肘打ちされました。回りの人も大丈夫?って声かけるほどだったのに、早歩きで逃げていきました」
「時々コイツ当たり屋か!?と思う程思いっきりぶつかって来て平然と通り過ぎて行く男性が居ます」
「体当たり男、私も電車ホームで遭遇、タイミング悪ければ線路内に落ちていたかも。常習者では?」
「御堂筋線から阪急百貨店に行く地下街でぶつかりそうになったので避けたのにぶつかって来た!」
「阪急梅田駅から阪急百貨店へ向かう平面エスカレーターでも、わざわざ女性ばかり狙って後ろから脚を蹴ったり踵や脹脛を踏んでくる男がいます」
「私も地下鉄の本町駅でやられたことが。ふんばったから転ばなかったけど。 傷みは2、3日残りました」

ぶつかられるなどの被害を受けるのは女性ばかり。そんな女性たちの声がSNSで拡散されています。

自身も過去に被害を受け、つい最近も友人が「ぶつかり男」に遭遇した松永弥生さん(一般社団法人痴漢抑止活動センター代表理事@scbaction)に取材しました。

弱そうな相手を選んでぶつかってくる

「意図せずぶつかってしまうと、咄嗟に“すみません” “大丈夫ですか?”などの言葉が出ますし、足を止めます。しかし、わざと体当たりしてくる『ぶつかり男』は無言。ターゲットを定めて突進し、ぶつかった後は何も言わず、猛然と立ち去ります」と松永さん。

「先日、『ぶつかり男』からの被害を受けた友人の場合、男は正面からすごい勢いで突進してきました。その勢いで友人は転んでしまい、周囲の人や警備員が「大丈夫?」と集まってきたそうです。にも関わらず、男は立ち止まりもせず、足早に去っていったと聞いています」。後日、友人は膝の大怪我を負っていたことが判明。

その一部始終を聞いて、松永さん自身も以前『ぶつかり男』に遭遇したことを思い出しました。「10年くらい前になるのですが、年配の男性がすれ違いざまに手で私を押しのけるようにして、ぶつかったのです。“何、今の?”と大声で叫びましたが、追いかけることはしませんでした。当時は『ぶつかり男』の認識もなく、ヘンな人に絡まれたくらいに考えていました」。

「加害者は一瞬の行為だし、意図的か偶然かはわからないだろう、被害届を出されることはないだろうと高を括っているのでしょうが、被害者は一瞬で終わる話ではありません。その後、病院に通う必要も出てくるなど日常生活にも影響を及ぼします。なによりも、また被害に遭うかもとトラウマになってしまいます」と怒りをにじませます。

痴漢抑止を訴える活動を行っている松永さんは、活動のアドバイザーである斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)の「痴漢はストレス発散や支配欲の現れ」に触れ、「加害の現れ方は違えども、『ぶつかり男』も自分が社会から受けるストレスや支配欲があるのではないかと思います」。

ネット上でも、「そうゆう人って世の中とかに勝手にムシャクシャしているんだと思うけど、ジムとかボクシングとか習って自分の機嫌は自分でとってほしい..」の声がありました。

被害の声を訴え続け、社会の認識を変えていくしかない

『ぶつかり男』のターゲットにされやすいのは、スカートなど女性らしい服・道がわからずキョロキョロしている・歩きスマホなどが挙げられています。また、「男性と一緒に歩いているときは被害に遭ったことがない」「黒髪時代はよくぶつかられたが、金髪にしたらまったく被害を受けなくなった」「顔を確認するように凝視すると相手がよける」などと語る女性たちもいます。

「確実に有効な対策はまだ見つかっていないと思います。とにかく、被害に遭ったら、警察や鉄道警察、被害にあった場所を管理する公的機関に伝えていくしかありません」と松永さん。

SNSによる拡散も周知にはなりますが、被害状況を把握した公的機関による見回り、警備や注意喚起・警告のアナウンスがあることで、加害者・被害者・第三者が『ぶつかり男』に共通した認識を持つようになり、加害の抑制につながるとの見解を持っています。

警察に問い合わせたところ、被害届を出す人はいないのが現実だそうで、「通行時のトラブルは繁華街などでは日常茶飯事。情報提供や被害届の提出がない=実態を把握できないので、捜査に踏み込めません。被害に遭った場合は最寄りの警察署や交番に行って事情を話す、もしくは110番を」と呼びかけます。

また、被害を受けた人や被害に遭うのではないかと考える人と関心のない人の間には、大きな乖離があり、『ぶつかり男』に遭遇したことがない人々は「ぶつかってくるだけでしょ?」「人通りが多いところでは、ぶつかることもある」と受けとる節も。

しかし、被害に遭った人などが声を挙げ続けた結果、加害者を特定し逮捕に至ったケースもあります。現場を見かけた時に撮った写真や動画などが証拠になることもあり、第3者の協力も重要です。

被害は一瞬のできごとであり、加害者も立ち去っていると、訴えることにためらいを持つかもしれませんが、これから『ぶつかり男』の被害に遭う方を減らすためにも声を出し続ける必要があります。

■一般社団法人痴漢抑止活動センターのTwitter @scbaction
■一般社団法人痴漢抑止活動センター 公式サイト https://scbaction.org

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