目の前をスタスタ歩く軽装のおじいちゃん、どこかヘン 思い切って話しかけると警察案件だった

竹内 章 竹内 章

そのおじいちゃんはTwitterユーザーの風琴(@Organ_yz)さんの前をもう3キロ以上歩いていました。半袖のポロシャツにハーフパンツ、ハイソックスにスニーカー。足取りはしっかりしていましたが、どこか違和感はぬぐえません。認知症に関わる行方不明者は17636人(2022年)。意を決した風琴さんはー。

私の前におじいちゃんがずっとあるいてるんだけど…もう3キロ以上は一緒なの。
軽装で持ち物はマスクのみ。
私はもうすぐ曲がるんだけど…なんとなく心配だから声かけてみようか悩む

前を歩く男性が気になってこんなツイートをした風琴さん。その後、リプ欄で「警察案件でした」「もう少し早くに判断できてたら…と思ったけど、私自身も勉強になりました」「交番までの距離、おじいちゃんとお話しながら歩けて私も楽しかったので、無事でよかったと思っています」と報告し、成り行きを見守っていたユーザーをほっとさせました。同じような経験をした人でしょうか、「家族がとても遠くまで歩いていってしまったことがあり、気が気じゃなかったです。ご家族、すごく感謝しているはず」というコメントも寄せられました。

風琴さんによると、おじいちゃんは一見ウオーキング中のようでした。小さな路地を赤信号でスタスタ渡り、やがて大きな交差点に。赤信号で隣に並んだタイミングで様子をうかがうと、おじいちゃんは「これ曲がったら橋が見えてくるな?」と独り言のような口調で話しかけてきました。 「少しひんやりしてきましたね。お散歩ですか?」と応じる風琴さんに、おじいちゃんは目指す地名を教えてくれましたが、それは全く方向違い場所でした。

 懸念が確信に変わった風琴さんは話を聞きながら、近くにある交番の位置を検索し、その方向に向かいます。驚かせないよう、「私、大阪に引っ越してきたばかりで道が分からないので、交番でお巡りさんに聞いてみましょう」とウソをつきます。すると、おじいちゃんは昔の大阪の様子を得意げに教えてくれました。到着すると、即座に事情を察した警察官がおじいちゃんを“保護”。おじいちゃんは名前は答えられましたが、住所だけは昔住んでいた場所を説明したそうです。風琴さんにはその後、家族が探していたこと、交番に迎えに来たという知らせがありました。

この出来事を「あのままおじいちゃんと話せずにいたら、きっともっと遠くまで歩いてしまっていたんだなと思うと、あの交差点が赤信号だったことが奇跡だったし、本当に良かったと思いました」「少しでも違和感を覚えたら、挨拶だけでもいいから声かけてみてください。 私も今回の事は、自分自身の中ですごく学びになりました」と振り返った風琴さんに聞きました。

ー話しかけることは勇気がいります

「私自身、人見知りな性格で自分から話しかけるのはとてもハードルが高くて…。今回も話しかけるまでにものすごく悩み、躊躇しました。ただ、約20年前に関東から関西へ嫁ぎ、誰も知らない街で暮らし子育てをし、保護者会などでさまざまな経験をしてきたことが今回の役立ったのかなと思っています」

ー風琴さんのおじいちゃんは

「今はもう祖母が1人ですが、今回のおじいちゃんは、生前の祖父と同じくらいの年代に感じました。おじいちゃんの後ろ姿に祖父のことをふと思い出していました。ただ、身近に認知症の家族はいないため、こんな時はどうするのが正解なのかも分からず…手探りで声をかけました」

ー交番に行くのは機転が利いたせりふですね

「今回の声かけは、もし拒まれたら、怒られたらどうしようとびびった挙句の完全な思いつきです」

振り絞った勇気が大事になるのを未然に防いだ風琴さん。「こんなに話題になるとは思っておらず、アカウントがばれたら恥ずかしいので」と家族に今回の善行は内緒にしているそうです。

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