「東海道新幹線の京都駅になめらかに英語を話し、きびきびとした動作で話題の女性駅員がいるのですが」。JR東海からそんな情報提供があった。その駅員は独学で英語を習得したという。どんな人なんだろう。1月下旬、JR東海の広報担当者とともに京都駅を訪れた。
新幹線の上りホームでマイクを手にした女性の駅員が「黄色い点字ブロックの内側へお下がりください」「Step back please」(お下がりください)と日本語と英語でアナウンスしている。さらにさらに表示灯などを指さして「出発ヨシ」「乗降ヨシ」などと大きな声で確認をしている。確かに、動作は機敏ではつらつとしている。
業務の合間を縫って話を聞いた。女性はJR東海京都駅輸送科輸送主任の林博子さん(40)=京都市。林さんが英語で案内をし始めたのは2015年から。事前の情報通り、やはり独学という。てきぱきとした動作となめらかな英語でのアナウンス。何がモチベーションになっているのか。駅の一室でインタビューした。
-英語はいつから勉強したのですか?
林さん 私は帰国子女でもないですし、留学経験もありません。大学は国際関係学部なので英語の勉強はしていましたが、自分のものになっていなかったのです。英語をしっかり力を入れてやらなあかんと思ったのは、2015年4月に新大阪駅の駅員になったころ。当時は、外国人のお客様が増え始めたころでした。
-何かきっかけがあったのですか?
新幹線のホームが変更になったとき、大きな荷物を持った外国人のお客様が右往左往されていました。この姿を見たのが英語放送をしっかりやらないといけないと思ったきっかけです。
最初は「お下がりください」など注意喚起を英語で放送しはじめました。日本語の放送文例があったので、社内の英語研修などを生かして英語で訳すようにして、新大阪駅で英語の放送文例集を作りました。例えば「列車が遅れている」や列車ホテルを実施するときの放送などです。
-今は東海道新幹線で英語の案内は充実していますね。確かに、以前は少なかった記憶があります。英語力はどうやって磨いて維持していますか?
意識して英語を使うようにしています。すごく英語が堪能な後輩がいるので、表現の仕方を相談したり、発音を教わったりしています。
-外国人の乗客とコミュニケーションする機会はありますか?
「この切符でこの列車に乗れるか」「忘れ物をしたがどうしたらいい?」などを聞かれ、時間がない中でご案内することが多いです。また案内板を眺めている海外のお客様には積極的に声をかけるようにしています。「Thank you」と言ってもらえるとうれしいですね。
-ホームで見た林さんはきびきびした動作が印象的でした。JR東海の社内コンクールで賞を取られるなどしましたか?
2020年にあった(表示などを指さしし、発声して安全を確認する)指差喚呼の社内コンクールで金賞をいただきました。
以前、車掌をしていたときに乗務員室でも指差喚呼をしていたのですが、お客様が『ずっと声が聞こえていたよ。安全をありがとう』と言ってくださったんです。しっかり安全を確認することが、お客様に安心感を与えているんだなと実感して、今日まで続けています。
-乗客に安心感を与えるのは日本人でも外国人でも同じですか?
そうですね。日本語でも英語でもゆっくり話すように心掛けています。日本語でもゆっくりの方が年配のお客様に聞きやすいですし、英語でも英語圏でない方もいらっしゃるので気をつけています。
見ていて安心感を得られるという、林さんの活躍。東海道新幹線京都駅を使うと見られるかもしれない。