日本を代表する出版社のひとつで、国語辞典などで知られる三省堂のLINEスタンプが「説明がウザい」「こんなのが欲しかった」と反響を呼んでいる。「おはようございます」「好き」などの言葉と、その短い語釈や用例をスタンプにしたという辞書出版社ならではの試み。特にマナー講習などで槍玉に挙げられがちな「お疲れ様」や「了解」「御苦労」に、「目上の人に使ってもOK」と解説が添えられていることに対して快哉を叫ぶ人が多いようだ。さらには「ほぼほぼ」「草」「主語が大きい」「それな」なども取り揃え、ラインナップは充実の計40種。担当者は「身近なスタンプを通して辞書に親しんでもらえたら」と話す。
引きやすく、わかりやすく、現代的であることを掲げ、国語辞典の世界に新風を吹き込んだ同社の「明解国語辞典」誕生80周年を記念した企画。明解国語辞典の精神は、現在の三省堂国語辞典と新明解国語辞典に脈々と受け継がれているという。
40種のスタンプの語釈は、実際に「三省堂国語辞典 第八版」と「新明解国語辞典 第八版」に記載されているものを使用。注目度が高い「お疲れ様」「了解」「御苦労」には、それぞれ豆知識として「二十世紀末から、目上の人にも使うふつうのあいさつとされるようになった」「目上に失礼な語と言う人がいるが、以前から『了解いたしました』など、丁重表現として使われる」「本来、『ご苦労さまで(ございま)す』の形で目上にも使える」と明記されている。これで、目上の人とのLINEにも気兼ねなく!堂々と!使うことができる!…かもしれない!
かと思えば、「はいはい」(←返事)には「場合によって、積極的とも、なげやりで失礼とも受け取られる」、「よろしくお願いします」には「具体的にたのむことがなくても使っていい」、「頑張れ」には「心のこもったことばだが、言われると負担になると言う人もいる」など、実践的なような、ただただウザいだけのような、辞書らしく絶妙にドライな解説が加えられているところも見事である。
このほか、新語、新語義にいち早く反応する三省堂国語辞典からは「それな」「無理」などのかなり使い勝手の良いスタンプが、そして実感あふれるユニークな語釈で知られる新明解国語辞典からは、以前ネットで話題になった「動物園」(捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として一般に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設)や、「凡人」(自らを高める努力を怠ったり功名心を持ち合わせなかったりして、他に対する影響力が皆無のまま一生を終える人)など、LINEでの使いどころは未知数だが、身も蓋もない説明がたまらないスタンプが多数用意されている。
2月1日に販売をスタートしたところ、国語辞典編纂者をはじめ、言葉を愛する人たちが「ダウンロードしました」「こういうの大好き」と反応するなど、SNSを中心に数日で大変な盛り上がりに。三省堂の担当者も「驚いています」と声を弾ませる。120円。
三省堂はこの「三省堂辞書スタンプ」以外にも、明解国語辞典80周年の記念キャンペーンを開催中。詳しくは特設サイトなどで。
【特設サイト】https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/meikok80/