雪の結晶の研究にハマったお殿様がSNS上で大きな注目を集めている。
きっかけになったのは「江戸時代、雪の結晶にハマったお殿様がいました」と編集者、イラストレーターの笹井さゆりさん(@chiyochiyo_syr)が投稿した「江戸時代のちいさな話」シリーズ。
投稿で笹井さんが取り上げたのは江戸時代の下総古河藩主(現在の茨城県古河市)で老中首座に上り詰めた土井利位(どい・としつら)。蘭学者の鷹見泉石(たかみせんせき)の協力のもと20年にわたり雪の結晶を観察し、数々の図解まで出版。当時の庶民の間に雪の文様ブームを巻き起こしたという変わり種のお殿様だ。
笹井さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「降ってくる雪を布にとらえて、顕微鏡で見た結晶の形を書き残してくれていた『雪のお殿様』。そのおかげで『結晶柄』が流行るなんて粋ですよね!」
「雪の結晶印籠は先日静嘉堂文庫美術館で拝見しましたが、とても精緻で美しいお品でした」
「よくぞ地元の殿様を取り上げてくださいました!」
「海洋生物図鑑や植物図鑑を作らせたお殿様もおられましたし、この時代、身分に関係なく、文化の華が咲き乱れたのですね。」
など数々のコメントが寄せられている。
江戸時代、20年かけ雪の結晶を研究した「雪のお殿様」
笹井さんに話を聞いた。
ーーこの殿様のエピソードをお知りになった際のご感想をお聞かせください。
笹井:はじめに「雪華図説」に出会いました。そこに描かれた、繊細な雪の結晶の数々に驚きました。誰が書いたのだろう?と思ったら、古河藩のお殿様ということで、ますます驚きまして。
ーー風流な藩主だったのでしょうか。
笹井:調べてみると、この土井利位というお殿様、「雪華図説」を出版した以外にも、雪の結晶の文様を便箋に用いたり、雪の結晶の文様を印籠にデザインして家臣の鷹見泉石に贈ったりと、雪の結晶のエピソードに事欠きません。どの逸話を見ても情熱が溢れ出ていて、その様相は今でいう「強火のオタク」…そんな、好きなものに一心に突き進む姿に感銘を受けて、解説イラストを作成しました。
余談ですが、先述した家臣の鷹見泉石は蘭学者としても名高い人です。土井利位やその研究に大きな影響を与えており、「雪華図説」の執筆を指導したと言われています。藩主と家臣、2人の関係性を思いながら「雪華図説」を見ると、また違った感慨がありますね。
ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。
笹井:いただいた感想はどれもありがたく拝見しています。古河市にお住まいの方には、「古河市には街のあちこちに雪の結晶の文様があしらわれています」と教えていただきました。古河市に行けば雪のお殿様の面影を感じ取ることができると思うと嬉しいです。当時の武士には、本業とは別に、好きが高じて研究者や創作者の顔を持つ事例が多くありました。今後は雪のお殿様を入り口に、そんな武士の「もうひとつの顔」をさらに調べてみたいとも思っています。
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笹井さんは今回の話題のような江戸時代の暮らしの調査報告として「江戸時代のちいさな話」シリーズをTwitterにて連載中。いずれも時代を超えた気付きを得られる素敵なテーマばかりなので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。
笹井さゆりさん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/chiyochiyo_syr