江戸の遊廓、元売れっ子遊女が迷い込んだのは「冥土の花街」 “異界の社”で描かれる物語に「涙が止まらない」【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

江戸時代には遊女を集めた「遊廓」という花街が存在しました。東京の「吉原」も、かつて遊廓があった地ということで知られています。

漫画家・安達智さんが手がける『あおのたつき』は、現在マンガボックスにて好評連載中。同作は、江戸最大の遊廓「新吉原」を舞台に、浮世と冥土のはざまに迷い込んだ元売れっ子遊女が、花街の人々が抱える「わだかまり」を解消していく物語です。安達さんのX(旧Twitter)に第1話がポストされると、多くの人から注目を集めて2.6万もの「いいね」が寄せられています。

遊女たちの間では「強く霊験のご利益を求める者だけが迷い込む、浮世と冥土の境に近いところがある」という噂がまことしやかに囁かれていました。

そして、花魁姿の童女「あお」は噂の場所である浮世と冥土のはざまに迷い込み、「おかしい」「ここはどこかえ」とさまよっていたところ一匹の狐に遭遇します。

さらに、ひとりの男がやってきて「私はここの宮司の『楽丸』と申します」「あなたが三浦屋の濃紫さんと冥土の番所から聞いています」と話し、さらに「ここは冥土の吉原遊廓を管轄とする鎮守の社」と続けます。

ピンときていないあおでしたが、楽丸が「ここから見下ろした下界は冥土の花街です」と言うので、覗いてみると、そこには様々な姿の住人たちが…。

そんな花街にある鎮守の社に住む楽丸は、やってきた遊女の魂を守り、導くことを生業としているとあおに告げるのでした。楽丸の説明に特に反応をすることもなく、あおは自分を現世に戻すように楽丸に訴えかけます。その最中、あおに次ぐもうひとりの来客として、仮面のようなおしろいが塗られた大きな顔だけの遊女が現われるのでした。

まるで化け物のような遊女が登場したことにより、楽丸とあおは彼女の話を一緒に聞くことになります。果たして楽丸とあおは憎しみに憑りつかれた遊女の魂を浄化することは出来るのでしょうか。

最後まで同作を読み終えた読者からは「めちゃくちゃいい話で泣いた」「涙が止まらない」「花街や妖の描き方が丁寧で引き込まれた」など好評の声が続出。そこで作者である安達さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。

―『あおのたつき』を描き始めたきっかけを教えてください。

稲本楼の小紫花魁に一目惚れし、調べ始めたのがきっかけです。後に小紫の名は襲名するもので同じ名前の花魁が何人もいることを知りましたが、最初に辿り着いた比翼塚の「権八・小紫」の名前にちなんだ江戸後期が舞台の物語『あおのたつき』を創作することになりました。

―Xに投稿された第1話で特に注目してほしいポイントがあれば、ぜひ教えてください。

2019年の連載開始から現在まで、私自身の創作に対するスタンスも変わってきてはいるのですが、作品タイトルにある「たつき(生計)」という言葉にも込めた様々な立場の「サバイブ」にフォーカスした物語を描きたいという想いは当初から変わりません。タイトルの「たつき(生計)」という言葉にも込めたその想いを感じ取っていただけると嬉しいなと思います。

―『あおのたつき』は商業連載にあたって大幅に修正を加えたとの投稿を拝見しましたが、具体的にどのように修正したのでしょうか?

当初は、あお一人が冥土の廓から脱出する話にしようと思っていました。しかし、あの世へ行ってもなお苦しみのままでは描いていても辛いばかりなので、途中参加させる予定だった楽丸を最初から登場させ、廓の氏子たちを救うバディものに軌道修正しました。

―読者にメッセージをお願いいたします。

連載を続けていくにあたって、人の心を救うことの難しさをより痛感しています。江戸風俗のことも、人の心のことも、読者さんと一緒に連載を通して考え続けられることが幸せです。心の回復にはゴールはなくて「改善し続けていくこと」と、何かのメンタルヘルス系の書籍で読みました。それぞれの答えを読者さんと併走しながら探り続けるような物語にしたいです。

<安達智さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/Sato_adachi
▽『あおのたつき』をマンガボックスで読む
https://www.mangabox.me/reader/106002/episodes/
▽『あおのたつき』(Amazon)
https://amzn.asia/d/bbZVB9X

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