睡眠時無呼吸症候群(SAS)を侮ってはいけません。場合によっては高血圧、虚血性心疾患、脳卒中などの発生リスクを高める危険性があります。原因の9割は口や鼻から肺にいたる空気の通り道が物理的に細くなるため。調べてもらうなら耳鼻咽喉科ですが、矯正歯科も役に立つようです。歯科医芸人の”パンヂー陳”こと陳明裕さんが解説してくれました。(聞き手・山本 智行)
−−最近、いびきがうるさいって言われます。
陳明裕(以下陳):小太りで、いびきをかいて、なおかつ昼間もボーっとしていることが多いってことは、もしかしてSASかも知れませんね。
−−SAS…ですか?
陳:言っときますが、サザンオールスターズの方とは違いますよ。睡眠時無呼吸症候群、すなわちSleep Apnea Syndromeです。睡眠中によく目が覚めるとか、朝起きた時、体のだるさや頭痛を感じたりしませんか。あるいは日中、仕事のやる気が起きないとか、集中力が保てなかったとか、眠気を感じたりとかは?
−−確かに、そういわれると思い当たる節だらけです。何が原因ですか?
陳:要は、寝てる時に十分に空気が肺に送られなくなる疾患です。これには3つあり、口や鼻から肺にいたる空気の通り道が物理的に細くなることで発生する閉塞型と、呼吸を司る脳の働きが低下して起こる中枢型。そして、その両方が合わさった混合型に分けられるようですが、閉塞型が大部分を占めています。なかでも肥満だったり、下顎が小さかったり、扁桃腺やのどチンコが異常に大きかったりすると睡眠中に何度も息が止まってしまう。そのサインの1つがいびきなんです。
−−なるほど。
陳:あと、飲酒や睡眠剤などの内服ものどの周りの筋肉を弛緩させ、いびきや無呼吸を増やすでしょうね。
−−いびきで病院、行きずらいです。
陳:「たかがいびき、されどいびき」なんです。昼間の眠気は交通事故にもつながりますし、睡眠中呼吸が止まる回数が多いと脳への酸素の供給が減り、一時的に低酸素になります。日中の眠気などによるストレスで高血圧、虚血性心疾患、脳卒中などの発生リスクを高めたりします。
−−侮れませんね。
陳:睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりする回数(無呼吸低呼吸指数)が20以上の人は20未満の人と比べ明らかに寿命が短いという報告もあります。命にかかわる病気といえなくもないです。
−−そんな脅かさんといて下さいよ。SASかどうか、どないしたらわかるんですか?
陳:耳鼻咽喉科に行って日中の眠気の評価や、口腔内、のどの奥や顎の形に異常がないかのチェックや、無呼吸低呼吸指数を調べます。一般にはこれが1時間に5回だと睡眠時無呼吸症候群と診断されているようです。この回数が20回以上に増えた場合は健康保険でCPAPという鼻にマスクをつけた持続陽圧呼吸療法の適応になります。
−−ってことは、無呼吸低呼吸指数っていうのが20回未満だったら保険治療が受けられないってことですか?19回の人、かわいそう。
陳:実は僕も、いびきがうるさいと言われ、心配になって耳鼻科で調べてもらったことがあり、15回だったんです。CPAPを使いたいなら自費で、と言われ、諦めました。
−−四捨五入したら20なのに。
陳:でも、そんな時こそ歯科の出番なんです。矯正歯科では下顎の劣成長がある子供に、下顎の前方位を取らせて成長を促す装置を作ることがあるんです。それを応用して下顎を前方に位置させる装置を入れて眠ることで、気道を広げることができるんですよ。
−−装置を作るとなると、結局、それも高くつくんじゃないですか?
陳:いいえ、SASの診断を下した耳鼻咽喉科の先生からの紹介状を持って歯科に行けば、健康保険で装置を作ってもらえます。一度、訪ねてみてください。