「毎晩せめられて…」認知症の夫を介護する83歳女性の訴えに驚き 理由は性交渉の拒絶だった

ドクター備忘録

谷光 利昭 谷光 利昭

ご主人が診察室から出た途端に奥様が私に訴えました。「先生、もう主人は85歳ですよ!!毎晩せめられて大変なんです」。83歳のお婆さんが、小さな身体と丸くなった背中を震わせ、涙ながらに言うのです。

ご主人はいつも、奥様と2人で仲良く来院され、仲睦まじいお姿を拝見するたびに理想の夫婦像だと感じていました。ご主人には軽い認知症があり、日常生活で大きな問題はありませんが、時々保険証や銀行の通帳などを捨てたりと困ったことがありました。しかしながら、温厚で、奥様も認知症を受け入れ、インスリンの面倒を見たり、血圧測定をしたりと献身的に介護されていました。

ある時から2人で診察室に入るのですが、ご主人のみ先に待合室で待つように奥様が言われていました。思いつめた様子で私を見るのですが、何かを言い出せないことが数回続きました。しばらくしてから、ご主人は夜になると豹変することがあり、命の危険を感じることもあると話をされるように。認知症の一症状ですが、命の危険があるようであれば様々な対処をしなければなりません。

しばらく経って原因が分かりました。性交渉の拒絶にあったのです。お互いにいい年だから仲良く布団で寝るだけでいいのに、ご主人は勃起すると治まらないようで毎回受け入れるのが非常に辛いとのことでした。認知症の方の異常性欲はよくあることですが、実際に伺うのは初めてで正直驚きました。

奥様は誰にも相談できず、清水の舞台から飛び降りる心境で打ち明けられたのでしょう。積年の思いを話されたあとに落ち着かれました。現在、漢方と眠剤を追加処方することで経過を診ています。まだ、投薬治療をして間がありませんが、効果は少しずつ表れてきています。末永く仲良く過ごして頂きたいと心から願っています。

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