ごく普通に見えるのに…子どもに「ダメ〜!!!」と叫んでしまう恐怖のトイレの個室 話題の写真には3つも危険が

宮前 晶子 宮前 晶子

「子育てしてる人にはわかると思いますが、これは恐怖の写真です。子育てバリアフリーな世の中になっていけばいいなぁ。」

個室トイレ内に設置されたベビーチェアの写真とともに、こんなひとりごとをつぶやいたのは2人の男の子を育てるお父さん、イクメン撲滅隊さん(@ikumen_byebye)。

「ん?何が恐怖?」と疑問に思った人もいるでしょうが、子育て中の人や子連れでの外出経験者にはピン! この状況について投稿者と、商業施設の対策を取材しました。

ベビーチェアに座る子どもが手を伸ばして、途中で個室のドアを開けられてしまった人々の声が続出し、さらには「横に非常ベルが設置してあり、案の定、娘が押し、大騒ぎになった事があります。いろんな大人に「お子様よく見ておいてくださいね」と言われました」と、トイレ中で不可抗力にも関わらず責められた人もいました。

また、清掃社員の方から「男性トイレも女性トイレも毎日のように個室内から「鍵を開けるな‼️」と怒鳴り声がしてきます。現場の人間にはどうにもできないので上に鍵の高さ調整や2段設置を申しますが門前払いされます…この手のクレームはお客様から直接お客様センターなどにご連絡頂けると現場も幸いです」と、改善点を述べてもないがしろにされてしまう現実が浮き彫りに。

「設置する側として、これはいつも気にしてます。多目的トイレもそうですが、場所変更を指示した件は何件かあります。本当に鍵だけにキーポイントですよね」と認識してくれている設置管理側の人の声に加え、指摘されるまで気づいていなかったので考えを改めるという類のコメントもありました。

投稿主であるイクメン撲滅隊さん、子連れで利用する人も多いとされる商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと」を運営する三井不動産株式会社にも個室トイレへの配慮などを聞きました。

このトイレには3つの恐怖が潜んでいる

投稿主であるイクメン撲滅隊さんは、どのような点に恐怖を感じるのかなどを取材しました。

――公共の場所における個室トイレに設置されているベビーチェアの危険性を指摘したツイート、大反響です。

「以前からベビーチェアやオムツ交換台の設置位置については、疑問に感じることがありました。ツイートしたのは先日、たまたま1人で入ったトイレで、“コレ、子どもを乗せたらヤバいな”と思ったベビーチェアを目の当たりにしたから。子ども同伴ではとても撮影できませんが、その日は子づれではなかったので。この設置でお困りの子育て中の方が全国におられるだろうな〜と思いながら、ツイートしました」

――リプライでも、「何度“開けないでー”“触っちゃダメ”と小声で叫んだか」「ドアが開いていくもなす術もなく、ドアが全開して心も全壊」などの経験談が寄せられました。

「いただいたコメントは目を通しています。スリル満載の写真を貼っていただいたり、危険だったことをコメントいただいたり、みんないろいろ経験してるなぁと。

経験上、3つの危険をはらんでいると思っています。
(1)子どもが手を伸ばして鍵を開けてしまう危険
(2)外部から開けられた場合、この設置位置では子どもがケガをする危険
(3)トイレの鍵という物自体が不潔であり、それを子どもが手で触り舐めてしまう危険」

――イクメン撲滅隊さんは、以前から危険を感じていたんですね。

「はい。でもこの投稿が、正直ここまで反響があるとは思いませんでした。共感される方が多い印象で、子育てに関するハード面はまだまだ整っているとは言えないと改めて感じました」

――「取り付ける人の 想像力の欠如」と厳しいコメントもありましたが、設計関係の仕事に就く人や清掃員の方からのコメントも。

「施工管理の方や設計の方の意見を読んで、苦渋の決断で設置されているという背景も知ることができました。現場の方や施工の方に拡散していただいて、こういった少しの不便さが解消していけばいいなと、うれしい気持ちにもなりました。

また当事者にならないとわからない視点というものが世の中にまだまだたくさんあるんだろうということを改めて学ぶことができました。少しずつでもこういったSNSを通じて世の中が優しくなっていけば嬉しいなと思います」

――子育てについてはまだまだ見直す点があると感じていますか?

「少子化まったなしの日本ですが、実際子育てをしている立場からも『子育てする価値』は計り知れないと思っています。男性育休が推進されていますが、育休を取ることが目的ではなく、何をするかが大事だと思っています。子育てを女性に依存した社会構造、0ー15歳までは年少扶養控除が廃止されている事実、所得制限によって子育てを頑張っているのに罰が与えられるとも言える子育て罰。こういった問題がハード面、ソフト面ともに改善されていかなければ、少子化は止まらないと思っています。

“誰もが望めば子育てを楽しめる優しい日本”になっていくことを望んで発信していきます」

親子が安心して過ごせるよう、常にアップデート

“もっとパパ・ママに優しいららぽーとへ。”をスローガンに、10年以上前から「ママwithららぽーと」という取り組みを進めている三井不動産株式会社に、個室トイレのベビーチェアの鍵問題について問い合わせました。

「当社では、社内のママ社員の声を反映し、施設内の一定数の個室トイレにベビーチェア(注:ららぽーとではベビーキープの呼称)を設置することを設計基準として定めています。扉すぐにベビーキープが設置される場合、お子さまの手が届かない高い位置に鍵を設置する、また増設する(二段階施錠設置)なども設計基準としてルール化しております」(三井不動産株式会社 広報担当者)と、配慮した設計になっているとのこと。

さらには、現在全国に展開しているららぽーと18施設や、今後の開発に活かすため、利用者の声や社会の変化などを反映しながら随時見直し・質の向上を図っているそう。

ベビーキープや二段階施錠の設置以外にも、ベビーカーごと入れる引き戸タイプの個室トイレ(通常のトイレの個室の2倍の面積を確保)の設置や、スムーズに利用いただけるよう各トイレ個室扉にベビーカー可能/ベビーシート/ベビーキープ/子ども用便器などの設備サインを提示するなどの施策にも取り組んでいます。さらには、ベビーカーごと入れる個室を女性トイレだけでなく男性トイレにも設ける施設もあるのです。

◇ ◇

親子での楽しい外出中のトイレ問題は切実です。「お客様のお声・ご指摘に耳を傾け、居心地の良い、配慮の行き届いた施設づくりを目指しております」と三井不動産の広報担当者が語るように、親子が快適に心地よく過ごせるトイレスペースが増え続けることを願います。

■イクメン撲滅隊さんTwitter@ikumen_byebye

■三井ショッピングパーク ららぽーと:https://mitsui-shopping-park.com/lalaport/
■ママwithららぽーと:https://mitsui-shopping-park.com/lalaport/mamawith/

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