徳島県鳴門市にある「猫雑貨のお店 白猫堂ノスタルジック」。どこか懐かしく、こじんまりとした店内には、猫好きがワクワクしてしまいそうな猫雑貨が所狭しと並んでいる。店主の大浦敦史さん(47)が、先代の愛猫「ミー太」(オス、6歳で没)にちなんだ店名をつけ、脱サラしてネットショップとして立ち上げたのが始まりだ。その後、ミー太の死や2代目看板猫の「そら」(メス、12歳)との出会い、実店舗(自宅兼)開業を経て、いまや同店は「徳島の猫好きの聖地」とも呼ばれるように。「ここまでやってこられたのは猫たちのおかげ」と優しくほほえむ大浦さん。ミー太やそらのことについて、話を聞いた。
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今から18年ほど前、私は関西で福祉関係の仕事をしていたのですが、ある日、職場に生後半年くらいの子猫が迷い込んできたんですよ。ガリガリに痩せて、いかにも野良の子という感じでした。上司が「保健所に連れていく」というので、それなら私が飼いますと申し出ました。それが白猫のミー太でした。
猫は好きでしたが、自分で飼うのは初めて。ミー太は白い毛並みとブルーの瞳が美しい子でした。人見知りで臆病な性格でしたが、僕には心を開いてくれました。毎日一緒に寝たりして過ごすうち、疲れて帰ってきても、ミー太が出迎えてくれるのが嬉しくて。すっかり猫派になってしまったんです。
私は雑貨好きで、休日になるといろんな雑貨店を見て回るのがなによりの楽しみでした。ミー太と暮らすうち、雑貨の中には猫雑貨もたくさんあるんだなということに気づくと同時に「いつかミー太と一緒に自分の雑貨店を開きたい」と思うようになっていました。2009年10月、仕事を辞めて徳島の実家に戻ったのを機に、長年の夢だった雑貨のネットショップを立ち上げました。店名はミー太にちなんで「白猫堂」と名付けました。
ところが、翌年3月、店を始めて間もないというのに、ミー太が急死してしまったんです。まだ6歳でした。前々日、急に呼吸が苦しそうになって、お腹がバクバク波打っていたので、慌てて病院へ連れていったのですが…そのまま天国へ旅立ってしまいました。以前「心臓が少し弱いかも」と言われたことがあり気には留めていたのですが、特に異変はみられず、ずっと元気だったんです。心臓が悪かったのか、あるいは何か他の原因があったのか、はっきりした理由はわからずじまいでした。
突然、ミー太がいなくなったショックははかりしれませんでした。何も手につかず、心にポッカリ大きな穴があきました。2カ月ほどが経ったころ、ある友人女性が、いつまでも元気のない私を心配して「私が子猫を見つけてきてあげる」と。それで紹介してもらったのが、そらちゃんでした。
譲り受けたとき、そらちゃんはまだ生後1、2カ月くらい。あるおじいさんの家で生まれた子で、里親を探していたんです。見にいくと、か弱そうで元気がなく、私が守ってあげたいと思ったのと、顔や瞳が保護したころのミー太に似ているような気がしたんですよね。
うちにやってくると、夜鳴きで一晩中眠れなかったり、離乳食を作ったり。ミー太のことで悲しんでいる暇がないほど、忙しくなりました。でも同時にそれは、猫と一緒に暮らせる幸せを再びかみしめる時でもあり、すぐに私はメロメロになってしまいました。
そらちゃんのおかげで私は元気を取り戻し、その後、実家で雑貨を扱う実店舗を開業することに。最初は猫雑貨はあまりなく、雑貨が好きな方全般に気に入られるような品揃えだったんですよ。でも、なかなかお客さんは来ず、どうしたら売れるのか、悩むこともたびたびでした。
あるとき、お客さんから「猫が大好きなんだし、猫雑貨だけのお店にしてみたら」とアドバイスを頂き、思い切って自分が気に入った猫雑貨に特化した品揃えにしたところ、猫好きの方や作家さんが集まるようになり、店がうまくまわり始めるようになりました。
品揃えのこだわりは「猫好きさんに喜んでもらえる商品であること」。猫雑貨の店にしてから、このことが自分の一つの軸になりました。それまでは八方美人というか、雑貨が好きな人すべてに気に入られようとしていたんですけど、本当に猫が好きな方々に愛されればいいんだと気づき、猫好きさんに喜んでもらうことこそ、猫雑貨を通じて自分がすべき役割だと思えるようになりました。
振り返れば、猫たちに支えられて今日までやってこれたと感じます。私を猫好きにしてくれたミー太にちなんだ店名をつけたからには簡単につぶすわけにはいかないですし、そらちゃんを不自由なく養っていかなければいけません。これまで挫けそうになることも幾度かありましたが、そのたびにミー太やそらちゃんを思い浮かべては、もうひと踏ん張りしようと。
そらちゃんは完全室内飼い。自宅と店を行ったり来たりして、したいことをし、気の向くままに過ごしています。そらちゃんから私が学んだのは、自分のしたいことを極め、好きな人にとことん好かれるような「猫的生き方」。それが理想ですね(笑)
そらちゃんは看板猫ですが、私はストレスになるようなことや嫌がりそうなことはしませんし、マイペースな暮らしぶりを尊重するようにしています。私が接客してても、家の中からそらちゃんが「ミャー」と鳴けば「ちょっと待っててください」と様子を見に行きます。お客さんも「どうぞ、どうぞ」と(笑)。店先にわざわざ連れ出すこともしません。そのため「何度来てもそらちゃんと会えない」というお客さんもおられます。猫ファーストというか、うちでは世界の中心は、そらちゃんなんです。
【店名】「猫雑貨のお店 白猫堂ノスタルジック」
【住所】徳島県鳴門市撫養町木津541-2
【ホームページ】https://sironekodo.amebaownd.com